呼び出しに応じたなまえちゃんを目の当たりにして胸がざわざわと騒いだ。

「あいつボロボロんなって帰ってくんじゃね?」
「口で言ってわかんねーんだからしかたないっつの」

皆が口々に言う中、私はへらりと笑いながら隣のタツキちゃんに声をかけた。タツキちゃんは強張った顔をしていた。

「タツキちゃん、あたしちょっと行ってくる」
「…待って織姫」
「え?」

「あたしも行く」

静かに頷いて二人で教室を出た。

「桜子の事泣かせたりしてるなまえは許せないけど…あんな人数相手に立ち向かうなまえ放っとくなんてやっぱできないよ」
「うん。桜子ちゃんに酷い事したのにも何かわけがあったのかもしれないしね…!」
「それは分かんないけ、…待って織姫」

もう後一歩踏み出せば体育館裏。校舎の壁に手を着いて、タツキは少しだけ顔を覗かせた。


「……!」

いつも黙ってやられっ放しだったなまえが、涼しい顔で攻撃を避けて鋭い一撃を与えている。混乱しながらもしかし、そこから目を離す事が出来なかった。

「あれ、は……!」

なまえの横で傍観するように口元を歪め、ポケットに両手を突っ込んでいる男。この前、街で一護と戦ってた…。

「グリムジョー…?なんで」
「織姫、あいつ知ってるの?」

織姫はこくりと頷きながら、信じられない思いでその光景を見ていた。
地に伏していない数人がナイフを取り出すのが見えた時、タツキや私がそこに飛び込むよりも早く、なまえを護るようにして影が動いた。


陰っていた日が体育館裏を照らした時、グリムジョーの優しげな笑みが目に飛び込んだ。
なまえの嬉しそうな横顔も。


「…どういう、こと」

グリムジョーは私達の敵で、黒崎君と戦って、だけど今はなまえのことを護ってて…?
考えを巡らせていると、唐突にグリムジョーはこちらに鋭い目線を投げた。私とタツキちゃんは弾かれたように顔を戻す。

「…取りあえず、今は行こう。織姫」
「…うん」

駆け足でその場を離れながら、タツキちゃんは私に小さな声で言った。

「今、みたいななまえの顔…ちょっと久しぶりだった」
「うん…そうだね」
「変わってた…?」

「ううん、全然…変わってなかったよ」


私は勝手だ。あの笑顔を消しちゃったのは紛れもなく自分たちなのに、またみたいだなんて。勝手だ。







「いきなり、どしたの?グリムジョー」
「いや、な」
「何かいた?」
「鼠が2匹。ま、睨んだら逃げてったけどな」
「ふうん、でも睨むったって姿見えてないんだから意味無いじゃん」

それより、と視線を地に伏せた彼らに向ける。

「どうしよう…明日んなって私のあだ名が鬼人とかになってたら」
「正当防衛だろ、帰るぞ」
「うん」

置いてあった鞄を肩にかけて、グリムジョーの背中を追う。さりげなく歩調を合わせてくれるささやかな優しさに今は凄く支えられている気がした。

「晩ご飯、何がいー?」
「食わねえ」
「何がいー?」
「……卵のやつ」
「オムライスね。ふふ、丹精込めて作るね」
「そうしろ」
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