私は無意識のうちに怖れていたのかもしれない。XANXUSの口から謝罪の言葉を聞いてしまったら、私はどうすればいいのか分からなかった。  でもXANXUSは、そんな私の心情さえも気付いていたみたい。


「俺達は殺し屋だ。人を殺し、得た金で飯を食う。今までずっとそうしてきた」
XANXUSの低い声からは感情が読み取れず、私はそのまま言葉の続きを待った。

「それは、これからも変わらねえ」
「……うん」


私が何の不自由も無く暮らしていたあの日々の裏側で、XANXUS達はいつ命を落としても仕方のない世界に生きていた。同じように進む時の中で、環境だけが違った。
XANXUS達の生き方を否定する事なんて私にはできない。


「奪うだけの人生で間違いねえ。……それで構わなかった」
「XANXUS」
「……もう今は、違ェ」
立ち上がったXANXUSが私の前に立つ。

「お前を守る」

私は咄嗟に首を振った。その言葉を、彼は必ず実行するだろう。
「皆の、邪魔になる」
私がいることで皆が自由に動けなくなるのはいやだ。そんなことちっとも望んでいない。


「勘違いするな」
「…?」
「義務感や罪悪感で言ってるわけじゃねえ」
XANXUSはちらちら舞い落ちる桜を目で追うようにして口を閉ざした。言葉を、選んでいるようだった。


「破壊しか知らねぇ俺達は、こんな風に何かを、……人を、護りてェと思った事なんざ一度も無かった」

その声は真剣そのものだ。
XANXUSが、こんな風に言葉を選んで話すのを聞いたのは初めてで、こんな風に、何かを伝えよう≠ニするのを見るのは初めてで、私はただ聞いている他なかった。

「もし、この先テメェが心から外の世界を望む日が来たなら、その時はボンゴレの全ての力を使って俺達はテメェを手放すと誓う。記録の一片もこの世に残さねえ」

「だが、それまでは……お前が望むまでは」

「……ここに居ろ」
その言葉を噛みしめてしまえば、
分かってしまう。


「俺の傍に居ろ」

こんなにも不安げに紡がれた彼の言葉が、紛れもなく彼の心なのだと。

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