「死神の末裔」最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、前作「死神の記憶」から17年後の、新世代でのアイノコたちのお話を書いてみました。一応キャラクターもほとんどが古参、話もまあ続いている、という形をとりましたが、前作とはうってかわって、ただの人間である私たち、アイノコというものが実在しない現実社会に生きる私たちにも、さまざまなところで共感しやすい作品になったんじゃないかなと思います。

ずっと前作から読んでくれている友人に、「里紗ちゃんにはなんだか親近感がわく!」と言ってもらえて嬉しかったです。
彼女は前作のキャラクターたちと違って、選択の余地があり、自由で、金銭的余裕や家庭環境の充実など、好条件のなかで育ちました。前作で描かれた亡霊戦争で決意を固め、アイノコの社会的地位の向上や戸籍取得への改革に努めたサキとシオンの、望んだとおりの幸せが彼女には与えられたわけです。が、そうだからと言って一概に彼女がとてもとても幸せとは言えなかった。

私はとくに人種問題だとか差別とか、そういう現実社会に存在するものを意識して比喩的に描いたわけじゃないんですが、まあ必然的に考えて、いくら書類上アイノコが戸籍を取得して存在を認められたところで、世間の目、とくに高校生なんて冷たいに決まっているのです。そんな人間たちばかりの学校という機関に押し込められて、これは里紗にとって幸せと言えるでしょうか。普通に考えて環境は劣悪極まりないですね。

でも答えはないです。ごめんなさい。「本人がいいならいいんじゃない?」です。クレアみたいに、人間ばかりのなかでもタフにフレンドリーにやっていける人はもうそれでいいし、それを見てあこがれて、「あ、じゃあ高校頑張ろう」って思うなら里紗もそれでいいんです。


人間界、冥府、人間、亡霊、そしてアイノコ。
付き合い方が自由になったこの新世代で、その自由こそがまた新たな争いを生み始めているので、何が悪いとか何が良いとか、わけがわからなくなっているんです。
アイノコの中でも、


人間と共存していきたい“革命派”


アイノコだけで今までみたいにひっそりやってりゃいいじゃん、な“アイノコ至上主義派”


と分かれ、人間の中でも、


アイノコという罪から生まれた存在を認めることはできない“純血至上主義派”(過激派=アイノコ狩り)


亡霊戦争でのアイノコの働きを称え、崇める“崇拝派”


なども生まれてきて、世の中は混沌としてきました。
今後、この仮想世界には、“源里紗”という最高の頭脳と身体能力、そして強さを持った、人間たちには到底かなわないような強力な革命家が台頭していくことでしょう。
彼女以外にもさまざまな派閥から実力者が現れて、また新たな争いの火蓋が切って落とされるのかもしれませんね。
それをまた死神シリーズ第3作で書けたらいいと思います。宣伝になってしまった(笑)



小難しい話をしましたが、一応この話も前作同様恋愛要素なんかもちゃんと入れているので、難しい話はおいといて、そのへんを直感で楽しんでもらえたほうがいいかな、と思います(笑)

前作で消息を絶ったままエンディングを迎えてしまった少年・ハルが、名前を変えて、中身もすっかり変わった様子で登場しますが、後半に行くとこの人相変わらず理解できないな、と思いました。
彼を書くのはいつも戸惑います。ハルが難しい。シュンはそこまででもないです、シュンは依存やしがらみからだいぶ開放された姿なのでそんなに難しくもないんです。が、変わることのできないアイノコであるからには、生きてきたなかでずっと彼の中で構築されてきたベッタベタの依存体質と取り憑かれたように存在意義を求めるハルの癖は、正直シュンの中にもバリバリに生きちゃってるので…17年前に死んだアル中の師匠の墓前でよくまああんなボロボロ泣けるもんです。私は人間なので理解できません笑

そんな変わった彼の力もあってか、今作も短いながら前作に負けない個性を持てたと思います、手前味噌ですが。

というわけで、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
第3シリーズ「死神の亡国(仮題)」もお楽しみに。

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