薄桜鬼 | ナノ






急に黙ってしまったからどうしたんだろうと隣を見ると、平助の瞼は閉じられていた。
口元から漏れる微かな寝息。
どうやらこの短い時間で眠ってしまったらしい。


「平助?」


そっと呼びかけてみるけど返事はない。
疲れていたのかな。
昨晩夜の巡察は八番組だった。
それなのにきちんと眠りもせず、私の所に来て話していたから疲れが一気に押し寄せたのだろう。
すうすうと小さな寝息を立てる平助は妙に子供っぽく見える。
それでいて少し色気を感じるのは何でかな。


「…!」


と、急に彼の頭が揺れて私の方に倒れ込んできた。
肩に重みを感じる。
平助の髪がすぐ間近に。
驚いたけど、仰け反らないよう踏ん張った。
私が退けば、平助の頭は固い板張りに落ちてしまうから。


平助の熱が私の肩越しに伝わって、何だか落ち着かないのに心地いい。
頬を撫でるそよ風と相まって、急激に速くなる心臓の音すら良い物に思える。


「咲…」


ふいに平助が声を発した。
相変わらず目は閉じられたままだから、寝言のようだ。
どんな夢を見ているのだろう。
私が出ているのかな。
そう考えると、ますます身体中が熱くなる気がした。


肩に感じる重みすら愛しいと思いながら、私は恥ずかしさを隠すため、そっと唇を噛んだ。
願わくは、彼の夢の中の私も笑っていますように。
そんなことを、祈りながら。



Title/確かに恋だった




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