*高智なおさんへ:お誕生日プレゼント




「テツヤって、僕が生まれたから、生まれたんだよね」

   純粋に真っ直ぐ響く声は、本気の証拠。

   時計の秒針が12を指差し、日付が1月31日になった瞬間を見計らって、かかってきた電話。画面に“赤司征十郎”の名が表示されれば、ボクの心臓は恐ろしく早鐘を打つ。ひとつ年を重ねた直後、幸先悪い。

   赤司君はボクと同じ人間なのに、ただの人間じゃないみたい。その声は神々しく、空から降ってくるようで。

『テツヤは僕のモノだ』

   勝手な勘違いを、揺るぎない道理として、生きていた。神様と等しく残酷で、人間を不幸に陥れることも厭わず、ボクが彼のモノだと誤認する世界を作り続けた。

   息を吸って他人を見下し、息を吐いて他人を傷付ける。ボクの人生に関わる人々を、いとも簡単に排除していく。間接的に“黒子テツヤ”の心を殺すことが、彼の役目らしい。ボクを孤立させては狂喜し、神様のように大量虐殺。

   このままじゃいけないことを、ボクは痛い程分かっているんだ。もし、ボクの誕生理由が、彼の言う通りならば、

「そうですね。ボクは、キミを殺す為に、生まれました」

定められた役目を、“黒子テツヤ”が果たすのみだ。

   覚悟しろと言えば、待ってるよと返される。

   きっと、ふたりの間に、直接的な幸せなど、ありはしない。


宿命の刃 / 歪んでいた、心の切っ先





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