朝は蘇り、昼を生き延び、夜に死ぬ。


   何度も何度も、今日とて、あの夢に魘された。登場人物はひとりだけ。それも同じ人間が懲りずにしぶとく出演してくるものだから、顔を見るのもウンザリする。

   名前は、知らない。いつかどこかで見たような、気はする。赤色をたずさえたあの人の、色違いの瞳が美し過ぎて不気味で嫌い。まるで、この世界を、ボクの全てを、見透かしているとでも言いたげな、自尊心の塊。

「あのね、よく聞いて……ちゃんと信じて。テツヤはね、僕のことが、とってもとっても大好きなんだよ」

   繰り返し繰り返し、真っ赤な嘘をつく。条件反射、大嫌いだとお返事して、入信を断る。ボクは絶対に胡散臭いお前の言いなりにはならない。

   そうすると、神様を気取ったアイツは、自分に背いた天罰と称して、ボクを鋏で刺し殺す。

「僕は、納得するまで、諦めないよ。お前は、僕のモノなんだ」

   捨てゼリフさえも、毎回同じ。さすがに、飽きてきた。今度は脚本を書き直して欲しい。あわよくば、ここのシーンでボクが刺されませんように。こんな胸糞悪い思い、夢でもゴメンだ。

   こちらのミスと決めつけて主演兼監督は、唐突にカット。最悪な夢は、これにて終了。



   あーー、死ぬほど、痛い。夢なのに、激しい灼熱感を感じて、目が覚める。睡眠時間分、全身麻酔をかけておいて欲しい。そうでないと、安眠不可能だ。

   ボヤけた視界に映る、代わり映えのない真っ白な天井。まだボクはここにいるのか。いつになったら、次のシーンへ進めるのだろう。消毒液の匂いが充満したここで、足踏み状態。

   それにしても、痛いなぁ。何気なく、お腹をさすった。

   途端、リアルな感触、ベットリ、白い手に、赤い、赤い、あの。



「先生、××号室の黒子テツヤさんの所へあの侵入者がまた来たようです。傷口がザックリ開いていました。縫い直しをお願いします」
「懲りないねぇ」


不毛リテイク / 理想の愛まで、何度でも





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