人知れず困っていた所に、必ず降り注ぐ天の助け

   自分は常にポーカーフェイス、ミスディレクションを有効にする為、感情を表に出さないよう、日常的に気を配っていた。元々影の薄いボクの存在すら、普通の人には認識出来ない。ましてや、ボクの感情を上手く読み取れる人はそうそういないだろう。

   誰も知らないままでいい。他人様に極力迷惑はかけたくないから。何をしても平凡で役に立たない自分は、これ以上足手纏いになりたくないと考えていた。ただでさえ、拾ってもらったバスケ選手としての生命。バスケ部の一軍に上がってからも度々面倒ごとを起こし、周りのペースを崩してしまっていた自分の存在が申し訳なくて。

   どん底にいたボクを救ってくれたあの人には、見捨てられたくない。どんな小さなものも大きなものも、自分自身の問題はどうにかひとりで解決してやる。生まれ持った諦めの悪さと惜しみない努力で。

   しかし、その気合は空回りするばかり。バスケの大会、大きな会場でひとり迷子になった時には灰崎くんが憔悴しながらも探しに来てくれて。平均点しかとれない勉強、特に苦手な教科のテストのポイントは緑間くんがわかりやすく教えてくれて。どう頑張ってもパス以外中々上達しないバスケに悩めば青峰くんが練習相手になってくれて。普段少食なのに時々お腹が減って力が出ない時は紫原くんがお菓子をくれて。みんなみんな優しい。心から感謝を述べると、必ずある人物に“頼まれたから”と口を揃える。その人はボクにとって、手が届かない遠い人で、

「赤司くん……ありがとう」

さりげなく、やさしい、いとしいあの人


恋情回路 / 遠回りでも、キミの元へ、駆けつける





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