▽ 会議の前準備

 風間千将さんが、この蝶屋敷に滞在して数日が経過しました。
 アオイに屋敷の案内をさせ、場所を把握して頂いてから機能回復訓練に参加することとなり本人は嬉しそうに声をあげていたのが少しおかしかったです。
 特に反射神経は私も驚かされまして、あのカナヲにあっさりと薬湯をかけるとは思いませんでした。カナヲ本人も、何が起きたか分からず固まっていましたね。その日から、二人は時間を合わせて鍛錬をするようになったようで、彼女にとって良い刺激になってるみたい。
 そこから、炭治郎君の反射神経訓練は千将さんにも相手をお願いするようになりました。

「わっぷ!」

 パシャンと、薬湯を顔面で受けた炭治郎君の声が道場に響く。

「昨日より速くなってんじゃねーか! 関心関心!」
「うう……、でもまだ千将さんの湯呑みを押さえ切れてないからなぁ……」
「お前は病み上がりなんだし、身体がまだ慣れてねーだけだろ。あとは呼吸法か? それもまだ使いきれてないみてーだし、特訓あるのみだな! いつでも付き合うぜ!」
「は、はい! ありがとうございます!」

 やはり、同性を相手にしてるからか炭治郎君はとてもリラックスして訓練に取り組んでいるようです。良い傾向ですね!

「んで、まだ善逸と伊之助は来ないのか?」
「……はい。すみません、明日必ず連れてきますから……!」
「いんや、無理して連れてきても逆効果だ。あの二人がやる気を出すまで、気長に待ってみようぜ」
「本当にすみません……」

 申し訳なさそうに頭を下げる炭治郎君に、千将さんは元気付けるように背中を叩いていた。こう打ち解けてる姿を見ると、千将さんが鬼の方だと思えませんね。今でも信じられません。

「あ、胡蝶さん。お疲れ様、今日の業務は終わりか?」
「そうですね。夕食後は自由時間になりますが、無理ない範囲で休養を取ってくださいね? 炭治郎君」
「は、はい!」

 このやり取りを最後に、今日の機能回復訓練は終わりを告げるのだった。



 夕食もひと段落着き、今日は通信を利用した家族会議を行う日だと千将さんから聞いていた。遠方に住んでる方と、どうやって会話するのでしょうか? 非常に興味があります。

「この前話したら参加したいって言ってたからな。同席するだろ? 近況報告とか雑談とか、普段と変わりない話ばかりになるけど……」
「はい、問題ありません。とても楽しみです」

 彼らの技術を上手く応用することが出来れば、この先の任務で大きな力になるはず。任務において、一番重要な事は情報伝達なのだから。
 場所を千将さんが利用している個室へと移動する。チラッと彼の手元を覗くと、綺麗な正方形の紙が握られていた。そこに大きな円が描かれていて、不思議な絵のようなものも一緒に描かれている。

「こっちが千怜のやつで、そっちが両親のやつな。映像としても飛ばせるように術式を描いたんだが、俺こういうの苦手だから大丈夫かなぁ……」
「映像を、飛ばす……?」
「言葉で説明するよりも、実際に見た方が早い! 試しに千怜のトコに繋げてみるか」

 そう話すと、彼は一枚の紙を前に置くと手をかざした。何をしているか分からないから、とりあえず様子を見てみましょう。
 様子を見守る事しばらくして、紙の中央から一筋の光が放たれた。扇を開くかのように光が広がっていき……そこから丸い何かが浮かび上がってくる。

『あれ? 千将早いねー、まだ家族会議まで時間あるじゃない』

 円の中から現れたのは、食事中であろう千怜さんの姿だった。

『よもやよもや! 光の中に千将としのぶがいるではないか!!』
『は、初めまして……!』

 彼女の横から顔を出したのは、同じく食事中であろう煉獄さんとその弟さんだ。丁度、夕餉を召し上がっている所のようですね。

「なーんだ。夕飯の真っ只中じゃねーか、変なタイミングで繋げて悪かったな」
『気にしないで、そろそろ来る頃かなって思っていたし』

 家族会議の話は、事前に煉獄さんたちにはお話していたようで特に驚いている様子でもないみたい。特に弟の千寿郎君は興味津々に私たちを見ている様子。

『夕飯始まったばかりだから、食べながらの参加で良いかな?』
「別に大丈夫だろ、向こうも夕飯にしてる頃だからさ」
『確かに!』

 そう笑いながら話す二人は、慣れた手付きで紙を取り出していた。千将さんのものは、先程見せていただいたものだ。

「母上たちへの通信って、陣の描き方これで合ってるか?」
『なんでそんなに自信なさそうに言ってるのさ、問題ないからそのまま繋いでみなさいって』
「へーい……」

 その流れで繋いだ先、映像として映し出されたものは卓に料理を並べるご夫婦だった。

『千将、千怜。定刻通りだな。息災か?』
『はい父上、優しい方々ばかりなので不自由なく過ごせてるよ』
『あら、別々に繋いできたという事は……一緒ではないのね?』
「うん、簡単に敬意を説明するよ」

 料理を並べて食べ始める両親に、千将さんは話を始めていく。蝶屋敷へ向かった矢先にお館様に呼ばれた事、柱の方々と対面して軽い手合わせをした事、そこで別々に分かれて活動を始めた事まで。


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