エピローグ

 アポロの目が覚めてから、数週間後のこと。街の人々を救った英雄であるアポ口を主役とした、凱旋パレードが行われることになった。
 城下を渡り歩く道を用意され、双方から歓喜の声が飛び交う。

「アポロ様ー!!」
「アポロ様ー!」
「姫様ー!!」

 その中には、トロイメアの姫の名も挙がっておりアポロの隣で歩く当の本人は目を白黒させていた。
 起きると同時に、メイドの手によってあれよあれよと着飾られた彼女の服は、深紅に染まる見事なドレスであった。綺麗な宝石で彩られた彼女の姿は、一国の姫として引けを取らない美しい仕上がりになっている。

「ど、どうして私も一緒に……!?」
「民からの要望だ。応えてやらねばならんだろう」
「それは、そうですけど……」

 恥ずかしそうに頬を染める姫は、大きく手を振る民衆に応えるように手を振りながらアポロと話をしていく。

「それに、丁度いいではないか。婚礼の前祝ともなる」
「こ、こんれ……!?」
「動揺することもあるまい、姫は俺の妃になる。それは決定事項だろう」
「そう、ですけど……!」

 いざ言葉にされると恥ずかしいもので、耳まで真っ赤になる姫をアポロは彼女の腰に手を回して引き寄せる。突然の衝撃に驚きながら、彼女は顔を上げた。

「いちいち動じるな。おどおどするな、フレアルージュの王妃となる者が……」

 頬に手を添え、姫の顔を動かすまいと視線を無理やり自身へと向けさせる。

「トロイメアの姫君。お前が、俺の唯一の家族となれ」
「アポロ……」
「愛している……」

 瞳を細め、うっとりと囁かれたその言葉に……姫は笑みを浮かべて応えるようにアポロの唇へとキスを落とす。その姿に、民衆からは更なる歓喜が溢れていきとても賑わっていくのだった。
 そんな愛する弟たちの姿を、離れた場所から三日月と共に見守る審神者の姿があった。

「ね? 私の弟は凄い子なのよ、こんのすけ」
「はい! 審神者様の血縁者と聞き、どのような方かと思いましたが……とても素晴らしい方ですね」

 パタパタと尻尾をするこんのすけを見つめてから、視線をパレードへと向けた。恥ずかしそうに耳まで真っ赤になる姫を、アポロが横抱きにしながら歩いていく姿が見える。彼が、どれだけ姫の事を愛して止まないか……それは誰が見ても理解できる光景だ。

「私がこうやって、あの子の前に姿を現せることは滅多にないことになるけれど……その分、三日月たちがアポロの力になってあげてね」
「無論だ。俺にとって義理の弟になるからな、気にかけるのは当たり前であろう」
「そっか……」
「アポロがフレアルージュ王になる姿を見る、という楽しみも出来たことだからな。俺なりに、力になっていこうと思う。良いだろうか?」
「ええ、勿論よ」


 ――この凱旋パレードが行われてから、十余年の月日が流れた頃……アポロは父王と兄王子を退き、フレアルージュ王として君臨することとなる。
 彼の隣には、夢王国・トロイメアの姫が寄り添うように立っており……その少し離れた場所には、見慣れない服を着こなす大小さまざまな刀を自在に操る集団がいた。ただ、その集団に関する情報は謎に包まれており真相はアポロ王と王妃しか知らない。
 その集団に属する者の一人が、見た目の美しさにそぐわないゆったりとした口調でこう囁いていくのだった。


「よきかな、よきかな」


 ――と。

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