※2016年3月末、Pixivにてアンケートを取る際に公開した雑談のようなもの。
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「えー、皆さまお久しぶりです。管理人の夜桜です。はてさて、何でこのような場を設けたのか疑問に思う人が大多数かと思いますがそんなことより……」
彼女は、ジロッと私の方へ睨みつけるように視線を向けてきた。
「なーんでロープで縛られて逃げられないようにしたのか率直な理由を聞かせてもらおうか!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
ビクッと反応すると、私は何度も頭を下げて叫ぶように謝罪の言葉を口走っていた。
こんにちは、フレムです。夜桜さんの助手という名目でトロイメアのお姫様と一緒にこの場に立っています。そして、彼女をロープで縛りあげたのは私ではありません……!!
「獰猛な獣が騒ぎだす前に取り押さえただけだ、なあ?」
「そうだな。騒がれる前に先手を打って何がいけない」
ロープで縛った犯人は……腕を組み、堂々とした物言いをする私と姫さんの旦那様・アポロさんとフロストさんである。
「誰が猛獣だゴルァ!!」
「おい」
ガルルルと唸りだしそうな彼女の言葉を制したのは、今回の議題で呼んだ王子様のうちの一人だ。
「そろそろ本題に入ってくれないか、俺も暇ではないのだ」
椅子に腰かけ優雅に足を組んでいるのは、罪過の国の王子・ヴァスティさん。
「陸地はどうも慣れん……さっさと海底へ帰りたいんだがな」
「俺は公務が残っている、さっさと要件を言え」
ヴァスティさんに続くように言葉を口にしたのは、月影の国の王子・ギルバートさん。
出会った当初はゲイリーさんだと話してくれたけれど、夜桜さんが「ギルさんここ公務じゃないから本名暴露しとこうねー」と見事にその場の雰囲気をぶち壊したことをきっかけに本名が明かされたのは言うまでもなく。
この場の雰囲気にすぐ慣れたおかげなのかはわからないけど、今は気を遣うことなく思ってることをバンバン話してくれている状態だ。
そして、海底の国の王子・オリオンさんは住んでいる環境の違いもあって少々顔色が悪い様子。早くこの場を離れて海に帰りたいようだ。
「いや、思ってること色々あるのは分かるけど……ひとまず、召集かけた張本人から話を聞こうぜ」
溜め息交じりに話をするのは、この人も含まれていた。チョコレートの国の王子・リカさんだ。
「率直に聞くが、この面子を集めた理由はなんだよ」
「んー、公式さんのTwitterでプリアワ番外編なるものが開催されててね、そこでとあるテーマに沿って君たちが集まってくれてたから思わず呼んでみたわけだ」
「思わず、だと? 貴様の気まぐれで呼ばれたとでも言うのか!?」
ああああ……!! オリオンさん、すごく怒っている……!!
ちなみに、夜桜さんの話す"とあるテーマ"というのが……
「俺様な王子、ですか……」
「そそ、俺様オーラ抜群じゃね!? 個人的に好きキャラが凝縮されててとても嬉しくってね!!」
姫さん、なんとも言えない微妙な表情を浮かべているようだ。
「それと召集をかけたことに一体何の意味が……」
「まあ、次回作はここに集まった王子のうち誰を書こうかなって思って呼んだのよ」
「次回作……?」
首をかしげると、夜桜さんは「そそ!」と言いながら大きく頷いた。
「アポロさんと兄上のお話は書いたし、シリーズだからネタが浮かんだらポロポロ書こうかなって思ってるんよ。王子もたくさんいるし、個性的だし、また混合っていう形で連載を書きたいなーって思ってるわけ」
「その候補として挙がっているのが、俺たちってことか」
納得した様子のリカさんが頷いている横では、不機嫌な表情を浮かべていた他の王子たちが一瞬にして顔色を変えた。
「つまり、俺の物語を紡ぎだしてくれるということか。面白い」
「おい、貴様と決まったわけじゃないだろう」
「良い争いを起こす必要が何処にある? 俺以外の選択肢など存在しないだろう」
「ぅわ、早速自己主張激しくなってきたねお前ら」
ハァと盛大な溜め息をつく夜桜さんは、私たちに向きなおって話を続けた。
「私の執筆スタイルは、相手役(王子の誰か)を決めてからどんなヒロインにしようかなって考えるところから始まるんだけど……ヒロインの雰囲気や性格や設定、それに加えて大まかなプロットが出来上がってるから困ってるの」
「プロット……?」
「物語の骨組だと思ってくれて構わないよ。起承転結の断片的な部分が出てきていて、ヒロインの相手役を誰にしようかなってなっててね」
「ふむ、普通とは逆の現象が起きていると。そういうわけだな?」
首をかしげるフロストさんに、「そう! そうなんだよ兄上!!」と夜桜さんは声を上げた。
「私の書く連載は、何処かで他の連載とリンクしてたり登場させてみたりしてるんだけどね……あ、今回の兄上とフレムちゃんのお話が分かりやすい例だね。アポロさんたち登場したし」
「ああ、フロストと親しい友人という設定にしていたのだったな。ま、似たような性格だからか意気投合してるのは事実だ」
「うむ。こうも話をしてて飽きない奴がいることに驚いたが、アポロとは今後も仲良くやっていきたくも思う」
「そうだな」
似た者同士だからだろう、頷き会ったかと思えばお互いに視線を合わせ……ガシッと握手を交わしている。
フロストさんは氷、アポロさんは炎と異なる対照的な能力を持っている人達ではあるけれど、こう仲良くする姿を見るとなんだか微笑ましくも思うわけだ。
「ここにヒロインちゃんの設定とか、混合する作品の概要とか、友情出演させる人とか、色々書いたから目を通してねー!」
ここ、と言いながら私に資料を事前に手渡した夜桜さんは、ケラケラ笑いながら話を続けているようだ。
私はと言えば、資料を一人ずつ手渡していく。その資料には、このようなことが記載されていた。
混合作品は王国心、中でも機関と呼ばれる組織を主軸に置いたシリーズの一つを主に取り上げているようだ。(紙の端に『KHDays』と走り書きがされている)
ヒロインはナンバーがない機関員の一人で、弓を使った武器を得意としているらしい。喜怒哀楽がなく、人形のような印象を与えるが仲の良い三人組と行動を共にすることで感情を学んでいくようだ。
「基本的に夢100に興味を持ってくれている人をターゲットにしているから、王国心のことを全く知らなくても問題ないような文章構成にしていくよ。テーマは、まあお相手王子のキャラによって変わっていくかな」
リカさんにする場合は、テーマが『素直なココロ』
ギルバートさんにする場合は、テーマが『闇に潜む光』
ヴァスティさんにする場合は、テーマが『欲と心の関係』
オリオンさんにする場合は、テーマが『感情が引き起こす奇跡』
……といった具合で、個々にテーマを決めてそれに沿って話を決めているようだ。
それぞれ友情出演予定の王子様の名前が箇条書きに並んでいるけれど、それまで読みあげたらきりがない。
「ヒロインちゃんは、大体フレムちゃんと同じ年頃の女の人って考えてるよ。時間軸的にみると、ちょっとリンクさせるの大変だけど、本編後の外伝で絡ませていきたいね! それでね……」
「成程な、こいつらのうち誰にするのか決めかねていると、そういうことか」
「ピンポーン! 流石兄上! 付き合いが長いだけあるね〜!」
「…………」
勢いとノリと性格が大体把握してきたからだろう、フロストさんは何度目か分からない疲れたような溜息を漏らした。
「アンケート機能なるものがあるって知ってさ、この場面に遭遇した読み手の方々に決めてもらおうかなって!!」
「第三者に決めさせるって……」
「あれ? リカさん微妙な反応しないでよ、二次創作の楽しみの一つだよ?」
「お前が一番楽しんでいるように見えるがな」
「あったり前じゃないッスかー! こういうものは、私が楽しんで書かなきゃやってらんないよ?」
縄で縛られていることも忘れているようで、夜桜さんは微妙な反応をしていた四人の王子様にそれぞれマシンガンの如く作品に対する思いや主張をしていってるみたいだ。
「完全に忘れ去られてるな」
「自分の世界に入ると周りが見えなくなってしまうのも考え物ですね」
「何処かの誰かさんのようだな、なあ?」
「…………」
ニヤニヤしながら私の方を見ないでくださいフロストさん……!!
カァァと顔を赤くしながらそっぽを向く私を、面白く笑うフロストさんは手を伸ばしてポンポンと頭を撫でてくれた。たったそれだけで機嫌が良くなってしまう私は、ちょろい女なのかもしれない……。
それからしばらく、彼女の話が終わるまで私たちは皆の様子を見守るのだった。
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