Side フロスト
※流血表現アリ! 苦手な方はお気を付け下さい



城下の視察、内政、近隣との交流も兼ねた連絡のやりとり。

そんなことを繰り返しやっていると、いつの間にか外にはパラパラと雪が降り始めている。

季節は完全に冬へ突入したようで、城内で防寒着を羽織るメイドたちが居たり人の出入りが多い部屋では暖房が設置されるようになった。


「名前、寒くはないか?」

「大丈夫ですよ。元々高温体質なので、寒さはへっちゃらです」


仕事も終わりの目途が見えてきて、書類を手渡す名前を見つめながら問うた。

今日も彼女は女王に相応しいオレンジの服装に身を包んでいる。


「あの、フロストさん……」

「なんだ?」

「仕事が終わって、夕飯を食べ終えたら……良いですか?」


少しばかり控え目に話す彼女の言葉に、全てを察した。

やっと、俺に話してくれる時が来たのか……


「寝室で待とう。今夜は長くなりそうだ」

「はい……」

「明日はお互いに休みを取っている。遠慮するな、思う存分話してくれ」


コクリと頷く彼女の頭を撫で、視線を合わすと暖かな笑みを浮かべてくる。

さて、今日は早く仕事を切り上げなければな……

彼女の抱える"闇"を聞くのだ、生半可な覚悟で耳を傾けてはいけない。だから、心残りにならないように仕事をできる限り片付けていくのだった。







夕食も終え、入浴も一足早く済ませると自室へまっすぐ向かった。

少しだけ忙しなく、落ち着きを持てない自分がなんだかおかしい。高貴な雪の王子が聞いて呆れてしまいそうだ。

そんなことを思っていると、背後からコンコンと控えめなノック音が響いてくる。こんな音を出すのは、一人しかいない。


「入れ」

「し、失礼します……」


そう言いながら部屋に入ってきた彼女は、暖かいオレンジの寝巻に身を包んでいた。

肩からブランケットを羽織っており、早足で俺の元へと歩み寄ってくる。

一人掛けの椅子に座る俺を見てオロオロと困っているようで、笑みを浮かべながら彼女の手を引いた。そして俺の膝へと乗せ、頭を優しく撫でてやる。


「大丈夫か?」


それは、何に対する言葉なのか……多くの要因を連想させる身近な言葉であるが、彼女は言葉を発することなく小さく頷く。


「貴方だから、聞いてほしい……です」

「途中で話を止めて構わん。辛い表情ほど、見たくないものはない」

「……はい」


そう答える彼女は、ゆっくりと……過去のことを語り始めた。ポツリ、ポツリと……
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