みんなで馬車に乗り込んで、いざフレアルージュへ行くことになった!
ワクワクしながら、僕は窓へと視線を向けている。ガタガタと揺れ出す馬車の中では……
「な、なんでこうなるんですか!!」
「この方が合理的だろう?」
「おかしい……絶対おかしい! そう思ってるのは私だけじゃないはずです!!」
耳まで真っ赤になって両手で顔を覆っている名前姉は、フロ兄の膝の上でそう言葉を荒げていた。
六人乗りの馬車だから、誰かが誰かの膝の上に乗らなければいけないというのは自然に出てきた一つの案だ。
オラフとかいう白い雪だるまは、アナって奴の膝の上に乗ることで問題はないとして……
「あら良いじゃない、身を委ねられる大きな腕の中に包まれる経験もしなさいよ」
「他人事だと思って……!!」
「名前はフロストにぎゅーってされるの嫌なの? そうなの??」
「誰もそんなこと言ってない……って、オラフ!! 余計なこと言わせないで!!」
墓穴を掘ってしまいそうな発言の数々に、名前姉は耳だけじゃなくて首まで真っ赤になってる。当のフロ兄は、凄く満足そうだ。顔から湯気が出てもおかしくない名前姉の頭を優しく撫でているみたい。
「アレで付き合ってないとか、世の中おかしいよな」
「グレ兄もそう思う? 実は、僕もそう思ってた」
誰がどう見てもお似合いで、お互いに惹かれあっているのは一目瞭然だ。
あのフロ兄が、完全に口説き落とそうとしてるっていうのに……それに気付かない名前姉は凄い……いろんな意味で。
「名前は鈍感なわけじゃないからな、一応言っておくけど」
コソコソと話す僕らの輪に入ってきたのは、クリストフとかいう男だ。
超が付くほどの庶民暮らしをしている彼は、どうやらアナの恋人らしい。
「大好きだからこそ、一線を引いちゃってるところがあるんだ。過去のトラウマがあるからな」
「トラウマ?」
「こればかりは、名前がどうにかして乗り越えなきゃいけない。俺たちが力になれることなんて、たかが知れてるんだ。だからこそ、傍にいることで解決できるならば傍に居てやりたいと思うのが友達ってもんだな」
つまり、名前姉には誰にも話せない大事なモノを抱えてるってことだ。それも、かなり心に大きな溝を作ってしまうくらいのものを。
その溝を、フロ兄が埋めること出来れば……それでそれで、そのまま付き合って結婚とかしてくれれば僕は嬉しい!!
(もしかしたら、名前姉が本当の僕のお姉さんになってくれるかも!!)
ずっと前から、お姉さんに憧れてたんだ。名前姉みたいな、優しくていろんなお話してくれて一緒に出掛けることもできて……こういうお姉さんが、ずっと欲しかったんだ……!!
「ゃ……ッ! フロストさん! 何処を触って……!!」
「お前を堪能しているだけだが? 不思議がることでもあるまい」
「皆がいる前でなんてことを……!」
「ほう? なら、二人きりならばどこを触っても良いと、そう捉えるが良いな?」
「良くないです!!」
恋人同士がしてもおかしくない会話をする二人を見て、「やっぱり世の中おかしい」とボソリと呟くグレ兄。
名前姉、フロ兄、僕は二人のこと応援してるからね!!
ガタガタと揺れる馬車の窓から、城下町と城が見えてきた。どうやらフレアルージュに到着したみたい。
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