機会を逃す……
「名前に会った、だと!?」

「ああ、そうだ」


ダグラスの乗ってる船の上で開かれている宴会に、半強制的に呼ばれた俺はヴァスティと再会した。

奴とは国の交流を目的とした集まりがあって、ダグラスと共に参加した際に出逢い……意気投合した数少ない人間だ。

そんな奴の口から放たれた名前に、俺は耳を疑ったんだ。


「ユメクイとは別の、黒い生き物に囲まれた時に助けに入ってくれたんだ。いやー、アイツには感謝だな!」


ニカッと笑うウエディたちを始めとしたヴォタリアからやってきた奴らは、全員名前と対面したと聞く。

何故だ……どうして俺よりも先にお前達が会っているんだ!!


「まさか、オリオンが探している人だなんて思わなかったよ。ごめんね、知らなくて……」

「いや、今回は偶然だろう。変な生き物が出てきたことも、彼女が助けてくれたのも、良いタイミングで着てくれたもんだな」


事の一部始終を聞いたダグラスも、驚きを隠せないでいるようで目を見開かせている。


「あの黒い生き物、倒してた」

「そうだったね、なんか知っているみたいだし……もしかしたら、また来るんじゃない?」


食事をする手を止めることなくモグモグと食べながら話すグラッドと、のほほんと話をするアケディア。奴らの推測を、間に受けても良いんだろうか……?


「もう一つ、情報を提供してあげるよ」


ニコリと笑うラスが、料理の乗った皿を俺へ差し出してくる。


「その子、水色の髪で額に十字の傷をつけてた人と一緒だったよ。あと、黒い生き物はハートレスって言われてるみたい」

「!?」


ハートレスとやらはどうでも良い、だが十字傷の男の情報は俺にとって一番聞きたくないものだった。

あの男と、名前は行動を共にしているのか……何故? どうして一緒に居る? 俺以外の男と共に居るなど……許せない……


「今度また会えたら、引き止めて君に会わせる算段を組むよ。だから、機嫌直してくれる?」


様子を見ながら問うてくるラスに、俺は「仕方がない」と返事を返した。

まさか、会える機会を逃すことになるとはな……我ながら失態を犯したものだ。次こそ、絶対に捕まえてやる。


「名前……次、この地に着た暁には俺の国へ引きずり込み……俺の腕の中に捕えてやる」


まだ会えない女への想いを馳せながら、空に浮かぶ月を見上げるのだった。
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