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「おい、何が始まろうとしてんだ!?」
状況が上手く掴み取れていないシカマルが、カンクロウに強く聞く。
「今の一撃で、押さえていた鳳凰が目を覚ましたんだ…アイツは、我愛羅の守鶴以上の力が眠っている……もう…終わりじゃん……」
「まだ最後まで分からねぇよ」
そう強く言ったのは、ナルトだ。
小さく震えて話すカンクロウは、彼の言葉を聞き小さく目を見開く。
「お前は知らないだけなんだ! あれが暴れると里は簡単に滅ぶんだぞ!!」
「それでも、俺はトキネさんを信じるってばよ」
サクラの治療を受け終えたナルトは、立ち上がってそう自信ありそうなことを言うのだった。
互いを信じる絆 6 〜鳳凰登場とこれから先〜
鳳凰は、セイメイを見つめてから嘴を開く。
そこから、かなりの圧力をかけた炎の球を作り出した。
「鳳凰! やめろ!!」
我愛羅の声に、鳳凰は動作をやめて彼の方を向く。
精神を乗っ取っているとはいえ、鳳凰とトキネの関係は我愛羅と守鶴の時とは全く違う。お互い、信頼関係を築いている……なのに、何故鳳凰は暴れているのか。
我愛羅は不思議で仕方がなかった。
「お前は、こんなことをするヤツではないはずだ。トキネを……返してくれないか……」
暫く考えたであろう鳳凰は、我愛羅の横に降り立つ。
『鳳凰にやらせてあげてください』
すると、すぐ近くからトキネの声が聞こえてきた。
少しだけ驚いた我愛羅だが、いつも聞き慣れている優しい声に小さく瞳を閉ざす。
「トキネか?」
『鳳凰は、無理矢理引っ張り出されて怒っているんですよ。一回攻撃したら私の中に戻ると言ってますから……ね?』
トキネの声に合わせて、鳳凰は力一杯頷く。
「………一回だぞ」
その我愛羅の言葉を聞き、明るく頷いた鳳凰はセイメイ目掛けて炎の竜を生み出して攻撃する。
最後まで攻撃を押さえられないセイメイは、そのまま後ろにある崖に炎と共に激突する。
その様子を見送った鳳凰は、満足したらしくトキネの体の中に吸い込まれるようにして消えた。
「チャクラを……使い切ってしまいました。あと、わずかしかないです……」
「そうか……」
力なく笑うトキネに、巨大な竜巻が襲いかかった。
「孔雀旋風!!」
スキを突かれた二人は、風の攻撃を正面にくらってしまった。
「ここまでだな……砂の里のバケモノ共」
瓦礫の中から現れたセイメイに、ゆっくりと顔を上げた我愛羅はニヤリと笑う。
「強がりか……おまえにはすでに戦うべきチャクラなど、残されてはいないはずであろう」
「確かに残されたチャクラはわずかだ……しかし、俺が檻の中で何もせず手を拱いていたと思うのか?」
「何?」
そして我愛羅は、勢いよく手を合わせた。
「流砂瀑流!」
しかし、周りを見渡すが何も変化はない。
様子を見ているだけのナルト達は勿論、セイメイ自身も何が起こったのか一瞬分からなかったようだ。
「お前の操れる砂など、もうないはず……」
「俺は砂漠の我愛羅。岩を砕いて砂にすることなど、雑作もないこと」
すると、谷の岩が砕け散り砂となっていき始めた。威力は大きくなり、砂はセイメイを飲み込んでゆく。
カンクロウたちは、足場になる場所を探しにこの場を去った。
結果……谷は一面、砂の山と化した。
「孔雀旋風陣!」
終わったかと思われた時、一部の場所から砂が舞い上がり、そこからセイメイが現れた。
「まだそんな力を残しておったか……ならば、その力の全てを吸い尽くしてくれる!」
すると鎧は光だし、獣の口の形をした所からチャクラを吸いだし始めた。
小さく顔を歪めるが、真っ直ぐ我愛羅はセイメイの方を見つめ続ける。
「我愛羅たちのチャクラが吸われていく!」
ネジの一言に、皆が一斉に我愛羅たちを見た。
「我愛羅先生! トキネ先生!」
「くそ……」
砂の山となった谷に向かって、ナルトは走り出そうとする。だが、彼の仲間がそれを制した。
「待てナルト!」
「何だよシカマル! 止めんじゃねぇ!」
「お前が行っても邪魔になるだけだ。それに、うちの我愛羅は強い。トキネと手を組んだ今は最強だ」
テマリの話を聞き、ナルトは走り出すのをやめて様子を見守った。
「我愛羅……トキネさん……」
チャクラが吸われていく中、我愛羅は左手を出して砂を集めた。
「最硬絶対攻撃、守鶴の矛!」
我愛羅の作り出した矛が、セイメイの体に向かって飛んで行く。
(私も……彼の手助けを……)
その矛には、トキネの炎が纏い……セイメイの体を貫いた。
「な、何故だ……! 何故お前らは……ッッ」
「所詮人を捨て忍具として蘇ったお前には、一生分かるまい」
「他人を信じる……気持ちは、ね」
「分からん……何故だ……? 何故だーーーー!!」
宙に浮いていたセイメイは、そのまま砂に降り立った。
そして、砂の中に飲まれてゆく。
「砂瀑大葬!」
我愛羅が放つ最後の攻撃で、地面は揺れた。
大きな揺れの後、セイメイが飲まれた砂の場所から黄緑色の光が漏れ出して空に消えた。
これで、全て終わったのだ。
「終わりました、ね」
「そうだな」
「やったー!」
少し離れた所から、ナルトの声が響いてきた。
「我愛羅先生たちが勝ったんですね!」
「ああ、我愛羅!」
我愛羅とトキネは、嬉しそうに笑みを浮かべた後……その後大きな痛みに堪えられずにその場で倒れてしまった。
「トキネ先生!?」
「我愛羅!!」
皆は走り出して二人を囲む。サクラは、二人の容態を見て安心したような声を出した。
「大丈夫。二人とも、一気にチャクラを使ったせいで極度に疲労しているだけだわ」
周りにいた人たち全員が、胸を撫で下ろした。
「我愛羅は、自分の意思で守鶴を押さえきったんだ」
「ああ」
「しかし、鳳凰は何故一撃しただけで消えたんだ?」
「ま、本人に聞けば早い話じゃん?」
「確かにそうだが……」
カンクロウは、そう話しながらあの時の事を思い出す。
砂の里で、我愛羅とトキネ……三人っきりになった時の会話だ。
あの時の我愛羅の言葉が、カンクロウの胸に響いていた。
─努力し、他者から認められる存在になりたい……うずまきナルトを見てそう思った。
他者との繋がり……俺にとってそれは今まで、憎しみと殺意でしかなかった。
しかし、アイツがあそこまでして言う"繋がり"とは何なのか……今頃になって俺にも少し分かったことがある。
苦しみや悲しみ、喜びも……他の誰かと分かち合うことが出来るのだと……─
「お前にも誰かと分かち合えることができたんだな……」
「ん? 何か言ったか?」
カンクロウの小さな一言に、ナルトは振り向きながら聞いた。
「何でもねえよ!」
訳が分からず、ナルトは頭上に疑問符を浮かばせて首を傾げた。
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