貴方と一緒に……

 
「だから、誰なんだよっ! 教えろ〜!!!」

「今じゃなくても良いじゃない」

「「「「「「「今!!!」」」」」」」


ここは、七人隊が泊まってる宿。何やらハプニングが起こってるようだ。





貴方と一緒に……





事の起こりは、今から数刻前へと遡る。


「おかえりなさい。あれ? それって竹だよね?」


彼女の名前は名前。最近、七人隊の仲間になったばかりの新入りだ。

彼女が仲間に入った理由は至って簡単、蛮骨が一目見て気に入ったからだ。

今日は、7月7日 七夕の日。ということで七人隊一行は、休みを取っていた。


「今日は七夕だから、竹を取りに行ってきたんだ。短冊に願い事は書いたか?」

「もちろんっ!」

「おぉ〜! でっかい竹だなぁー」

「今日は七夕だっけ??」


名前と煉骨が話しているところへ、蛮骨と蛇骨が通りかかった。


「そうだっ! 蛮兄、蛇こ兄、一緒に短冊ぶら下げよう!」

「たんざく? なんだ、そりゃ……」


眉を寄せ、蛮骨は首をかしげて問うた。


「縦長の紙のことを短冊と言って、その紙に自分の願い事を書いてこの竹に吊るそうと話してるんですよ」

「ねぇ〜ねぇ〜書こうよ! 短冊!!」

「この際だから、俺たちも書くか。大兄貴」

「「エェ〜〜〜!」」


2人は『字、書けねぇよ〜!』と言いながら、不満の言葉を発した。


「あ、そうか……大兄貴達は字が……」

「その辺は大丈夫よ。ねっ、煉兄」


パチンとウインクする名前に、煉骨はハァ…と息を吐いた。


「お……俺がやるのか……」

「「煉骨(の兄貴)、頼む〜!!!」」

「じゃ、決まりだね。私は、睡兄とか呼びにいくね〜!」


それからしばらく経ち、竹には8枚の短冊がぶら下った。


「皆、分かりやすいなぁ〜」


と、煉骨。


「いつも叫んでるような事を、書いてるやつもいるし……」


と、蛮骨。


(名前はどんな事を書いたのかなぁ〜〜)


と、蛇骨がそれぞれ思いを発したり心の内にとどめながら短冊を見た。

蛇骨は、キョロキョロと名前が書いた短冊を探した。


「おっ! あったあった。一体どんな願い事を書いた………………」


名前の短冊を見た蛇骨は、言葉を失った。


「おい蛇骨、どうしたんだ?」


口をあんぐり開けている蛇骨を見た蛮骨は、蛇骨が手にしている短冊を見て叫んだ。


「なななな、なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!」


その短冊には、こう書かれていた。


『好きな人と一緒に、綺麗な夜を過ごせますように……名前』


「「名前ーーーー!!!」」


ドタバタと廊下を走りながら、大広間へと向かう2人。


「おい五月蝿いぞ、何があったんだよ!」

「名前の短冊見てみろよっ!!」

走りながら言う蛇骨の言葉に、部屋にいた他の皆も短冊を見て叫んだ。


「「「「「なにィィィィ!!!」」」」」







*******







一方名前はと言うと、大広間で読書をしていた。


―ドタドタドタドタ……バタンッ!


大広間の障子を勢いよくあける蛮骨と蛇骨。

その後、次々と他のメンバーも入ってきた。


「……ど、どうしたの? 皆が揃って私の前に来るなんて、珍しい事もあるものだね」

「おい、短冊に書いてあることは本当なのか!!?」

「……あ、見たの?」


バツの悪そうな表情になりながらも、少しだけ頬を赤くする名前。

そんな彼女の表情に、周りは更に五月蠅く声を上げた。


「当たり前だろっ!! で、誰なんだよ」

「今じゃなくても良いじゃないの?」

「「「「「「「今!!!」」」」」」」



―そして、冒頭に戻るのだった。



「夜になればわかるじゃない!!」

「今だ! 今!! ここで言えっ!」

「(それは、ちょっと…)ダメだよ」


流石に何度も質問攻めされる名前は、相当困り果てているようだった。


「大兄貴、夜まで待ちましょう。名前も困っている事ですし……」

「……そうだな」


時は、あっという間に過ぎていった。


「いよいよだな……」


夜、七人全員は名前がいる部屋の前に立っていた。


―バタンッ!


障子を開けてみるが、名前の姿は何処にもなかった。その代わりに、一枚の手紙が置いてあった。

その手紙には、こう記されていた。






『星が見えるあの場所で待つ』





「あの場所???」

「どういう意味なんだ?」


六人は、その書いてある手紙の意味が分からなかった。


(もしかして、あそこの事か?)


……蛇骨を除いて……







*******







その頃、名前は 宿から少し離れた小高い丘の上にいた。


「やっぱりここに居たか」


草道をよけながら、蛇骨が名前の前に現れた。


「良かった、分からなかったらどうしようかと思ったよ」

「分からない訳ないだろうがっ! ここは、2人だけで見つけた星が一番見える所なんだからよ」


そう言いながら、蛇骨は名前に駆け寄った。

ここに泊まると決まったその日、二人だけこっそりと抜け出して見つけた穴場なのだから。


「お前がここに居るって事は、お前の好きな人って…」


名前は、コクリとうなずいた。


「そうだよ、だから……ここに一緒にいよう」

「……分かった」


―誰にも邪魔されなく、2人だけで居たかったのだろう―

そう思った蛇骨は、名前を抱き寄せて 夜空を一緒に見るのだった。





END
(制作日:不明)
修正日:2009/5/8
引越日:2013/12/20

 

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