管理人・夜桜の素性

 
それは、藤の一言から始まった。


「今、夜桜って人来てるらしいね」

「え? 夜桜さんって、誰?」

「まあ、一応このサイトの小説書いている人らしい……」

「らしいって……」


名前は冷汗をかきながら藤に突っ込みを入れる。

休み時間、美作と鏑木を招いて五人で話し合いらしきことをしている。

話の中心になっているのは、このサイトの管理人であり小説執筆者・夜桜。

大学在中の慌ただしい日々を送る人、という情報以外何も知らないようだ。


「で、何でその人の話が何で出てくるの?」

「なんか、保健室行ったら本人いたんだよ」

「マジ!? じゃあ俺ら会いに行こうぜ!」

「ちょっと、なんでそういう展開になるのよ!」


美作に突っ込みをいれる鏑木の言葉に頷く一同。


「作品書いてる人なんだろ? だったら、コビとか売って出番増やしてもらおうかなって……」

(それはどうだろう……)

「あー、まだ保健室にいるんじゃないか? なんなら、次の授業サボって会いに行くか?」

「え!?」


驚くアシタバだが、バッと時間割を確認した。


「あ、次の授業美術なんだ」


ピョコッと顔を出しながら名前が話す。


まあ、いつものように保健室直行しようとしている彼の考えが丸見えなのは仕方ないことだろう。


「私も、会ってみたいかも」

「よし! 決まりだな!」

(もしかして、人数に入ってたりしないよね……)


アシタバは内心ハラハラさっせながら、皆の会話を聞いていた。
 


***



やってきました保健室!

恐る恐るドアをあけると、保健室のイスには見覚えのある人物が座っていた。


「何度見ても顔色悪いし、人相最悪ですよ〜。でも、意外とイケメンで驚きましたよ、ハデス先生」

「君にそこまで言われるとは思わなかったよ。じゃ、話の内容はさっきの通りで……」

「オッケー、今後の展開を楽しみにしてなさい!」


保険医・ハデスの正面にあるソファに座る一人の女性が、胸を張るように高らかと話をしている。

ウワサの管理人のようだ。


「じゃあ、やっぱ名前ちゃんの相手はハデス先生で確定やな」

「なにぃ!!?」


何かを書き込みながらの言葉に、驚きの声を上げたのは美作だった。

ガラッと勢いよく開いたドア。ハデスは少し驚いているようだ。


「やあ、皆さんお揃いですね」

「ちーっす! 初めましての方が多いようだね、藤君はさっきぶり」

「おう」


ビシッと手を上げて挨拶をかわす二人。


「えっと、あなたは……?」

「ん? 管理人の夜桜言います。よろしゅう♪」

「お、大阪弁?」

「あー、これはクセなんよ。私は純粋な関東人やからね」


いやいや、関西弁かましながらそんなこと言われても……

アシタバはそう思いながら、皆の様子をうかがう。


「で、話の展開は決まったのかよ」

「おうよ! 藤君は友情出演で、ハデス先生と同じくらい登場してもおうかなって思ってて、鏑木さんとはライバルがいけるかもね」


ペラペラと話が進む中、鏑木はバッと名前の方を向く。


「ま、負けないからね!」

「え? え??」


話が見えていない様子の名前。目をパチクリさせて、頭上に疑問符をたくさん浮かべていた。


「じ、実は……管理人さんのことをもっと知りたいと思って来たんです」


コホン、と咳き込みをしてアシタバがそう口を開いた。

彼女はパタン、と手帳を閉じると……


「ええでー、何でも聞いてくれ」

「じゃ、じゃあ!」


少し顔を赤くしながら、鏑木が手を上げる。


「はい、なんでしょう? シンヤさん」

「サイト立ち上げと小説書くきっかけは、何ですか?」

「そうだなー、そもそもホケガミの夢小説は前から書きたいと思ってたんだよね。一応、5年以上二次創作活動しているし、やっていたい衝動ですぐポンッと文章を書くのが得意になってるし……オリジナル含めると長くなってしまうのは仕方ないです。今までの活動の中、分かってきた自分の特徴の一つなんで。短編が書けない理由もコレだったりするけど、それは置いといて……『RAINBOW-七つの色-』という元祖サイトに盛り込むのもいいけど、大変なんで別館扱いしてみました。まあね、コレ目的で来ている人も多いだろうからね」

「五年以上ですか!? となると、長い付き合いになっているキャラクターもいますよね」


夜桜はコクリと頷く。


「Get Backersの赤屍さんが一番良い例です。彼は私のことを知り尽くしている心優しい殺人鬼の一人だからね、次はアクセルかな。物分かりのいい人で助かってます。次は雲雀&骸。この二人は武器片手に私を脅すから嫌になるよ〜〜、あとは……」



―ガラッ



話が少しヒートアップしてきたころ、保健室の中庭に面している窓が開いた。


「んげっ」


なんとも嫌そうな表情を浮かべる夜桜。

理由は、目の前に現れた『ホケガミ』外のキャラクター登場がきっかけだった。


「こんなところにいたのか、探したぞ」


目の前に現れた人……尻尾の生えた異星人。肌が紫で、切れ長の瞳が彼女を捉えていた。


「うっわー、何でクウラ様が登場するかな〜〜」

「何日も更新を停止してるから、アカバネって奴の代わりに来ただけだ」

「なんで赤屍さんやないの!?」

「急用だそうだ」


「うっそ〜ん!」と叫ぶ夜桜。その姿を、未だ冷たい眼差しで見つめるクウラ。

異様な光景に、アシタバたちは言葉を失っているようだ。


「さあどうする? 書くのか、書かないのか」

「書きますよ……! でも、あれからどう展開させようか文章ができてないのが現状…」

「そうか、貴様は余程この俺を怒らせたいらしい」

「だからなんでソッチに話が持っていかれるのか意味分からないんやけどッ!!」


ギャーギャーギャー。


口論を繰り返す二人。ハデスはというと、特に気にしていない様子でいつものようにお茶の用意をしだした。


「た、大変そうね……」

「どんだけ書いてるんだよ」

「後で調べてみたらいいんじゃないかな、リンクは貼ってあるらしいし」


コソコソと話をする名前たち。聞こえないように話しているようだが、クウラには全部聞こえている様子。なんという地獄耳(お前が言うな)


「じゃ、コイツ連れてくからな」

「んぎゃッ!」


首根っこ掴まれた夜桜は、変な声を上げてし田端と暴れだす。


「お茶用意しましたが、いりますか?」

「いらん。もう帰るからな」


それだけ言い残し、二人は窓から出て行ってしまった。


「結局、あまり聞けなかったような気がする……」


ハデスに用意してもらったお茶を飲みながら、名前はポツリと呟く。


「まあ、彼女も忙しい人だからね。たまに遊びに来てくれるそうだよ、会ったら挨拶してあげようね」

「はい!」

「俺の出番……」

「まだそんなことにこだわってるのかよ、美作」


ズズ、といつもと変わらずにお茶を飲み干す藤。


「か、管理人さん……大丈夫かな」

「平気じゃ、ないな……」


パッと会っただけだが、あの人は恐ろしい何かを秘めている。そうアシタバは思う。

それは藤も名前も同じだった。


「生きてくれないと困りますよ」

「? 何でですか?」

「連載が終わる……」


ポツリと呟く名前の言葉に、ハデス以外の人たちはガチッと動きを止める。


「が、頑張ってくれ……!!」

「応援だけなら誰でもできるっつーの」



果たして、管理人の運命やいかに……!?

その後を知る者は、誰もいない。



END


あとがきという名の言いわけ。

遊びが大多数占めているような気がしてならない管理人の夜桜です。
はい、私はこんな感じで連載作品にぴょっこりと現れたりします。他のキャラクターも同様ですね。
詳しく管理人のことを知りたい方は、プロフを参照してくださればよろしいかと……
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!


本館と別館って形でサイトが分かれていた時に書いた作品です。
現在はサフランというサイトで一括しているので、別館はないですよ。別館で展示している作品も、全部ココで閲覧できるようになってますしね〜

引越日:2013/12/20

 

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