お見合い

 
「赤屍さん、お願いがあるのですが……」


赤屍の家へ立ち寄った名前は、紅茶を飲みながら話しかけた。


「何ですか? 名前さん?」

「あの…聞いていただけますか?」

「良いですよ。何でしょう?」

「実は……」




お見合い




「はぁー」


赤屍と約束を交わして一週間が経った。

大きなため息を一つつきながら、名前は花柄のワンピースに白のジャケットを着てとあるキングホテルへと立ち寄っていた。

半ば強引に見合いの話が持ち越されたので、名前は有無を言わさずにこのホテルへとやってきたのだ。


「OKとは言ったものの…辛いなー、赤屍さんという彼氏がいるのにお見合いなんてさ」


表情を曇らせながらも、名前はホテルの中へと入っていった。


「名前ちゃーんこっちこっち」


向こう側から亜砂という、名前の近所であるおばさんが呼んでいた。 


「はーい今行きます」


―赤屍さん早く来てくださいね―


胸の中でそう呟きながら、名前は亜砂の元へと向かった。







*******







それから数分たったある時のこと。


「じゃあここからはお2人でどうぞ」


亜砂は、軽くお辞儀をしながら去ってしまったのだ。

残された名前と見合い相手は、そのままホテルの前に出る形となった。


―うわぁー本当に言うんだ。こういう事って―


軽くため息をしながらそう思う名前。


「あの…名前さん。少し歩きませんか?」


顔を赤くしながら、見合い相手の男は名前に言う。


―ぅわ…そこまでお決まりのセリフを言うか? 普通…―


このままだとマズイと思った時、目の前に漆黒の服を着た男が現れた。


「名前さん。お待たせしました」

「赤屍さん!」


赤屍の姿が見えてホッとしたのか、名前はぱぁぁと顔を明るくした。


「本当に待ちましたよ」

「誰だ? お前は!?」

「名前さんとお付き合いしている者ですが…何か?」


名前を自分の方へ引き寄せながら赤屍は言った。


「なんだと!?」

「それに、彼女から依頼されましてね…」


それは、先週交わされた会話の事を指しているのだろう。










『あの…聞いていただけますか?』


『良いですよ。何でしょう?』


『実は……近所の亜砂さんって言う人の知り合いに、お見合いを頼まれてしまって…』


『お見合い、ですか?』


『はい。その人が凄い強引に話を進めてしまって』


『見合いの日は…いつなのでしょうか?』


『来週の土曜日に、新宿のキングホテルで1時からなんですが』


『なるほど、分かりました。運び屋赤屍蔵人として名前さんを私の所へ運びましょう』


『はい! よろしくお願いします。赤屍さん』










赤屍は、他の人には見えないようにメスを取り出していた。

それを見た名前は、ギョッと驚く。


「だ…だめですよ! 赤屍さんそんなの出しちゃ」

「クス 分かりましたよ名前さん。さぁ帰りましょうか?」

「はいっ! ごめんなさいね、次の方には逃げられないようにね」

「お、おい!」


2人は、男を置き去りにその場を立ち去った。







*******







場所は変わって、ここは赤屍の家の中。


「赤屍さん。本当にありがとうございました」


頭をペコペコと下げながら、名前はお礼を言う。


「いえいえ名前さんの為なら…ね」

「そうだっ依頼料払わなきゃっ…えっと……どうしましょう?」

「そうですね……」


何かを思いついたのか、少し怪しげに微笑むとぐっと名前を引き寄せて抱きしめながらキスを交わした。


「なっ何するんですかっ!!」


キスから開放された名前は、顔を真っ赤にして目をパチクリさせながら赤屍に向かって叫ぶ。


「もう絶対に他の人とお見合いなんてしないでください。名前さん」

「も、もちろんです」


この一件を通して、改めて名前の大事さを感じる赤屍なのだった。




〜END〜
製作日:2006/7/6
引越日:2013/12/20

 

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