プロローグ

 

誰かの声が……聞こえる。



─どうか、恐れないで─



恐れる? 一体何を……

私は、遠くもなく近くもない場所から聞こえる少女の声に、心の中で問うた。



─これから起こること、アナタにとってとても辛いコトになる─



何の話を、しているの……?



─でも、諦めないで。そして、逃げないで……

どんなに暗い闇でも、その先には必ず光があるから……だから─




FF連載 sideB
〜プロローグ〜




「おはよう。アズール」


誰かの声が聞こえ、ゆっくりと目を覚ます女性。窓から射す太陽の光に目を細める。

横に寄り添っていた銀髪で片目が隠れている青年に呼ばれ、彼女は体を起こしながら横を向く。


「おはよう。カダージュ」


女性・アズールは、青年・カダージュに笑みを浮かべて言う。

これが、二人だけで交わされる朝の挨拶だ。


「あれ、ヤズーとロッズは……?」

「表で待ってるよ」

「そうか……分かった……」


気だるそうにアズールは立ち上がるが……ピタリと動きを止める。


「? どうしたの?」


首をかしげているカダージュ。


「あのさ、今すぐ行くから出てってくれないかな……」

「どうして?」

「……着替えられない……」


顔を赤くして棚に手をかけながら、アズールはカダージュに言った。


「気にすることないよ、僕とアズールの仲だろ?」

「もう……一体どういう仲よ。只の兄妹なだけでしょ?」


そう、最初はそうであったけれど。

二人の仲は、それ以上の関係にまで発展していた。

でも、そのことをまだアズールは口が裂けても言えない。

否、言うのが恥ずかしいのだ。



「おい」



声がした方を二人は向くと、そこにはカダージュと同じ銀髪で長髪の男が入ってきた。


「時間押してるんだぞ、分かっているのか? カダージュ……アズール……」

「ごめんヤズー! すぐ着替えて行くから……」

「そうか、行くぞカダージュ」

「……分かった……」


ふてくされたような表情になる彼は、しぶしぶとヤズーと一緒に表に出て行った。

ホッと胸を撫で下ろしたアズールは、洋服棚から服を取り、着替える。



─どうか、恐れないで─



夢で聞いた声…あの言葉は、どういう意味なのだろう……

今のアズールには、知る由もなかった。


「……よし、行くか」


きっちり引き締まった服を着て、アズールは部屋を出た。







****







「さあ、行こうか」


表に泊まる三台のバイク。それぞれ所有しているバイクにまたがっていた。


「アズール、来なよ」

「はいはい」


カダージュに手招きされ、アズールはカダージュが乗るバイクの後ろに座った。


「これから何処にいくの?」

「ミッドガル、兄さんと姉さんに会いに……ね……」

「姉さん?」


首をかしげるアズール。


「なんだ? アズールは姉さん知らないのか?」


後ろを振り向きながら、アズールは短く切られた銀髪の男を見て頷いた。


「当たり前だろ、ロッズ。姉さんのこと知ってるのは、僕たちだけなんだから」

「そうだったな……ごめん……」


カダージュ、ヤズー、ロッズ。同じ服を着る兄弟。勿論アズールも彼らの兄妹だ。


「大丈夫だよ!」

「じゃ、行くよ」


カダージュの言葉を合図に、二人はバイクを走らせた。



四人は、目的地であるミッドガルへと向かった……



これから出逢う、一人の女性と関わっていくことを……知らないまま。


 


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