01
ヒーリンを出てから、アズールとカダージュは忘らるる都へと向かった。そこで、ヤズーやロッズと待ち合わせをしているからだ。
かなり時間を掛けて、ようやく忘らるる都に着いた二人。
彼らの目線の先には、既に到着していたロッズがいた。
「あれ、マリンちゃん……?」
「……あの時の、お姉さん?」
ロッズに捕まれて、少しビクビしている少女・マリンがそう問う。
何故、この子がこんな場所に……?
「ロッズ〜〜?」
「連れてきただけだ。別に……脅しはしていない……ハズだ」
「ハズって何よ」
呆れて溜め息をつくと、隣でカダージュはロッズが持ってきた箱の前へと移動した。
「そうか、兄さんが隠していたのか……」
箱の中には、たくさんのマテリアが置かれていた。
その箱の中から、一つのマテリアを持ち上げるカダージュ。
「ライフストリームから生まれた力、このマテリアで 僕たちも新たな力を……」
そして、カダージュは薄く笑いながら腕にマテリアを埋め込んだ。埋め込まれた腕が、綺麗なブルーの光を放っていた。
「それ、母さんが残してくれたんだろう?」
「ああ、きっと……」
マリンを押さえつけていた腕を放し、ロッズもマテリアが入っている箱へと歩み寄った。
マリンはというと、怯えながらアズールの服を掴んだ。
「母さんも、兄さんたちが隠してるのか?」
「いいや、あの社長だ」
掲げていた腕を下におろしながら、カダージュは強く言い放つ。
「神羅カンパニーは昔から母さんを隠すのが好きなんだ」
「……で、神羅に関係のある場所を片っ端から探せばいいんだな」
「うん。もうすぐ仲間が大勢増える」
マテリアを見てはキスを落とすロッズは、また別のマテリアを手にして上へと持ちあげているようだ。
「楽しみだなぁ〜」
「その前に……兄さんに文句を言わなくちゃ。全部自分には関係ないって顔して……」
怒りを込めるように、左手を前へと上げる。すると、埋め込まれたマテリアが強い光を放っていた。
「寂しいよ、本当に」
その言葉を言うか否か、カダージュは後ろを振り返りながら光の気泡を放った。
「ぅわあ!!」
その気泡はロッズのすぐ横を通っていき、マリンたちのすぐ横を通ると近くの木に当たる。
ガラガラと音を立てて、木は大きな音を立て倒れてしまう。倒れた木を見て、更に怯えるマリンをアズールはギュッと抱きしめた。
「ねえ?」
残酷な笑みを浮かべながら、手を下したカダージュは空を見上げる。
空には雲ひとつない、綺麗な星と月が浮かんでいる。
FF連載 sideB
〜心に感じるモノ<前>〜
―ドォォォン……ドォォォン………
森の中から、銃声が響く。その音を聞き、アズールは更にビクッと反応した。
「な、何……?」
「ヤズーが誰かと戦っているみたいだ。様子を見に行くよ」
「じゃあ私も……!」
「大丈夫」
ニコッと微笑んで、カダージュはアズールの頭を撫でた。
「僕はヘマなんかしないから。それに、あそこの方角には、人質がいるから……助けに来た奴とヤズーが闘っているかもしれない」
「……はい、大人しくしてます」
「そうそう、アズールは素直で好きだよ」
顔をうつむかせるアズール。顔が赤いのを隠すために下を向いているようだ。
(慣れないなー、いつも言われている言葉だって言うのに)
そんなアズールを挟んで、カダージュはジッとロッズを見つめる。
「じゃ、行ってくるね」
「うん」
愛用の武器・双刀を持って、カダージュは森の中へと入って行った……
「怖かった?」
「うん……すっごく怖かった……」
未だに震えているマリン。これ以上、どう声をかければいいのだろうか。アズールは困りながらもマリンを抱きしめる。
そう話していると、森からカダージュたちの姿が見えてきた。
ヤズーと一緒にいる人影は……