01
カダージュたちとの攻防戦を繰り広げたあの日から、二年前に時は遡る。
神羅カンパニー本社ビル。ソルジャーフロアと呼ばれる場所で、サトミは写真と一冊の本を持ってイスに座っていた。
写真を片手に、本を開いて何かを朗読する。するとそこへ、赤い髪の見慣れた男がやってきた。
「サトミー! こんなところにいたのかよ、と」
「あ、レノ」
パタン、と写真を挟んで本を閉じたサトミは、立ち上がりながらレノの方へと向かう。
「何か用か?」
「新しい任務だぞ、と。一緒にバノーラ村に調査することになった」
「バノーラ村?」
「知らないのか? ま、あそこはバカリンゴで有名だからな…知って損はないぞ、と」
「いや、知ってるし。それに……そこは、親父の故郷だからな」
本を大事そうに抱えながら話す彼女に、レノは「ふーん」と言いながら頭をかいている。
「親父さんの?」
「あれ? 話さなかったか? 私の親父……バノーラ村出身なんだ」
「初耳だぞ、と」
「そうだったか……ま、詳しいことは追々話すさ」
レノの背中をバシバシ叩きながら、サトミはエレベーターへと向かった。
FF連載 SideA*番外編*
両親からの『贈り物』
「遅かったな」
「悪いツォンさん。んで、バノーラ村の調査、ですよね?」
「ああ、新種のモンスターが出没しているらしい。データを取りながらの調査になる」
ミーティングルームに着き、ツォンの話を簡単に聞くサトミ。
大体の流れ、調査方法……メモも取りながらだが、全てを聞いた二人はすぐ出発した。
メモを取った理由というのは、まあレノのことだ。任務そっちのけで脱線する事が多い。そんな彼の補助に当たっているサトミは、何か書くものがないと忘れるんじゃ? という結論に達し、こうしてメモを取るようになったんだとか。
そんな二人が向かった場所は、神羅ビル最上階。
そこに前もってに設置されているヘリに乗り込み、レノは無線をセットする。
「操縦任せた」
「はいよ、と」
お互い笑い合うと、レノは操縦のハンドルを手にしてヘリを動かしだす。
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「そういや、サトミっていつ髪染めたんだ?」
「は? なんだよ……いきなりどうした?」
「いや、サトミの髪って茶色っぽかったかな〜、なんて思ったからだぞ、と」
首を傾げながら、サトミは自分の髪を見る。
「これ、地毛だから」
「地毛!? 青髪かと思ってたぞ、と」
「ま、いつも青の磨道具使ってるし……髪が青くなってたからな」
頭をかきながら自分の髪を見るサトミ。
「髪の色は、父譲りなんだ。おふくろは真っ黒な髪だったからな」
「へ〜、黒でもサトミなら似合いそうだな」
「そうか? 褒め言葉として受け取っておくか」
クス…と笑うサトミは、懐に入れた本を取り出した。
「よく持ち歩いているよな〜、それ」
「両親からの、最初で最後の『贈り物』だからな……」
哀しそうに話すサトミに、レノは眉を寄せた。
「あ〜…悪い」
「は? 何謝ってんだよ。気にしてねーし……あ、レノ知らないようだから言っておくけどな……」
ペラ…と本のページをめくるサトミ。
「ん?」
「私の両親、ソルジャーの1st.だったから」
「はああぁぁぁ!!!??」
「!? ちょ、驚くのいいけどちゃんと操縦しろーーー!!!」
グラグラと揺れるヘリの中で、サトミとレノの叫び声が響いていく…
操縦中はちゃんと前を向いて操作して欲しいものだ。そうサトミは心の中で呟いた。