01
サトミは、白い空間の中を落ちていた。
いや、どっちが上でどっちが下か分からない空間の中を……落ちているかどうかなんて分かるわけがない。
すると、誰かがサトミの額に手を置いた。
─誰……?─
『私だよ。姉さん』
聞き覚えのある声に、サトミはゆっくりと目を開ける。
─アズールちゃん……カダージュもいる─
『ありがとう。姉さん』
カダージュが嬉しそうにそう言った。
『私の最後の願い……叶えてくれてありがとう』
─いんや、別に大したことなかったぜ─
『ごめん』
そして、すぐ傍から違う声が聞こえてきた。
─その声……ロッズか?─
『ごめん……姉さん、本当にゴメン……』
『泣くなよ、ロッズ』
涙を流して謝るロッズの後ろからは、呆れているヤズーが立っていた。
─そうか……皆、同じ場所に来れたんだな─
『これも、姉さんのお陰だよ』
─最後のあの攻撃、かなり利いたんだぞ? 後ろからってのもあったけどな─
『悪かった……』
申し訳なさそうに頬をかくヤズー。
─お前たちがこうして私の前にいるってことは、私……死んでいるのか?─
『まさか!』
ロッズが力強く言う。
『姉さんがこっちに来るの、早いと思うぞ』
『うん。姉さんには、待っている人達がいるでしょ?』
『会いに行ってきな! 最期まで、ありがとう───』
ヤズー、アズール、カダージュの言葉に押され、サトミはまた目を閉じた。
FF連載 SideA*最終回*
〜帰りを待つ者たち〜
サトミが目を覚ますと、最初に目にした天井を見て気付いた。ここは、あの教会なのだと。
噴水のように噴き出していた水の周辺は、いつの間にか少し小さい泉ができあがっていた。
「ここは……」
その泉の中に横たわっていたサトミは、太陽の光に目を細めてゆっくりと起き上がった。
「サトミーーーーー!!」
「え? あ、ちょっと待……」
─ザッパーン!!
いきなりダイブしてきたレノの下敷きになり、サトミはまた泉の中に沈んでしまった。
「ぷはー!! いきなり飛び込んでくんな! 殺す気か!?」
「死んでないよな! 生きているよな!?」
サトミの話も聞かずに、レノはガクガクと彼女の肩を揺らして問う。
少々イラッときたサトミは、ガシッとレノの顔を掴んで目線を合せる。
「大丈夫、死んでいない、私はまだレノの隣にいる」
レノは、理解したように頷いて……サトミを抱き締めた。
「おかえり……サトミ」
「! ……ただいまッ!」
サトミは嬉しそうに答えると、振れるだけの口付けをお互い交わす。
「無事で良かった……」
「本当にね……!」
「サトミせんぱ〜〜〜い!!」
叫んでくる方を向くと、今度はイリーナが嬉しそうに走ってきた。
「え? イリーナ? ……って、ぅわ!!」
─ザッパーン!!
レノに続き、今度はイリーナが泉の中に飛び込んできた。