01
「「「「「いっただきまーす!」」」」」
「おう! どんどん食べろよ〜!」
輪を作り、真ん中にナベやらを置いた状態で 皆は夕食を食べ始めた。
「美味しいぞ! 姉さん」
「そうかそうか! ありがとな」
ニッと笑って答えると、アズールの声が聞こえてきた。
「コレ、焦げてる……」
「ハズレだ! お姉ちゃんハズレだよ!」
「あ……ちゃんと混ぜなかっただろ、カダージュ?」
「何で僕に言うんだよ。混ぜてたのヤズーだって」
(俺のせいか)
敵同士なのだが、こうして輪を作って仲良く食べていられるのは……サトミだからこそできることなのかもしれない。
「……母さんの味がする―――」
「は?」
しばらく食べていると、ロッズがそう呟いた。その呟きに反応したのはサトミである。
「そうか? いつもと作り方変わらねぇんだけどな……」
頭をかいて、もう一度カレーを口に運ぶサトミ。
やっぱり理解できていないようだ。
FF連載 sideA
〜母親の味〜
夕食もひと段落着いて、眠っているマリンを抱きかかえながらサトミはカダージュ達に問う。
「思念体って……辛くないか?」
「どうしてそう思うの?」
カダージュに問い返され、サトミは首をかしげてから言った。
「誰かの思念によって生まれた存在なら、消えちまう可能性がある。今のままではいられなくなるってことだ。その結果、不完全な存在でいて……不安なことはないのかって聞いてんだよ」
おかわりをしたカレーを食べながらそう聞くと、水を飲んでいたカダージュが答えた。
「不完全だから探しているんだよ、母さんを……」
「母さん……首となったジェノバか……」
「母さんをそんなふうに呼ぶな」
冷ややかなヤズーの言葉に、サトミは「ゴメンゴメン」と言って謝る。
銃を構えられているのも、理由の一つのようだ。
「そして、星に復讐するのさ」
「星に……復讐?」
「うん、今のこの星をリユニオンする為に……私達は生まれた」
静かに、カダージュの横に座るアズールが言う。
「リユニオン、ねえ……」
皿に乗っていたカレーをたいらげて、カップに入っているコーヒーを飲んでサトミは続けた。
「でも、案外しなくても良いかもしれねぇかな」
「どうして―――」
―ピリリリ……ピリリリ……
静かな空間に、電話が鳴る音が響く。
「あー、もしもし?」
電話の持ち主はサトミらしく、切ることなく電話に出た。
『サトミか!? お前無事のようだな……』
電話をかけてきたのは、レノ。久しぶりの恋人の声が聞けて、自然と笑みがこぼれる。
「全然大丈夫だぜ。今は、カダージュたちと一緒に飯食ってるところだ」
暫くして、レノの呆れた声が聞こえてきた。
『は? お前バカか?』
―ブチッ
サトミの何かが切れた。
「ハァッ!? バカレノにバカって言われてムカついてきたぞ!! ミッドガルに着いたら一発殴ってやる!!」
『普通敵と飯は食わねぇよ!! それに、そう何度も馬鹿って言うんじゃねーよ!』
「でもバカは余計だ!! だって、馬鹿以外に何か言い様があるってーのか!? あ゙ぁ゙?」
ガーと言ってくるサトミを見て、カダージュたちはビクッと反応しているようだ。
ちなみにマリンはというと、疲れが溜まってたらしく……ぐっすりと眠っていた。
『〜〜〜〜……とりあえず、無事だと分かって安心したぞ、と』
「おう、ありがとうな。私は平気だって、社長やルードに話しといて」
『ああ、じゃあな』
「うん、また明日な」
ピッという音をたてて、サトミは携帯の電源を切った。
「……? どうした? 話が途中だろ?」
「いや、助けを呼ぶのかと思ってな……」
ヤズーは、手に持っているであろう武器を下ろした。
「そんな自殺行為はしねぇっつの。呼びたかったら、とっくのとうに呼んでいるハズだろ? 私は、お前たちと話がしたいから残ってるんだ」
「話……ですか……」
身震いするマリンに気付き、サトミはコートをマリンにかけた。そして、話を続ける。
「さっきの話の続きなんだけどよ……別にリユニオンしなくても良いと思うぞ?」
「どうして……!」
「人間って生き物は、この星を破壊しちまってる。本当はいちゃいけない存在なのかもな……。でも、自分からこの星を元通りに戻そうとしている奴が中にいる。そんな気持ちを持っている奴がたくさんいれば、リユニオンする必要はない……と、私は思う」
沈黙の中、サトミはグビッとコーヒーを飲み干した。
「姉さん」
「ん?」
「破壊と想像……人間はどうして同じことを繰り返すんだろうね」
カダージュの言葉に、サトミは難しそうに首を傾げた。