01
 


この先の未来も見えない……


暗い闇に 覆われていた時―――


アナタは私の前に現れた。


まるで私に明るい外の世界を見せてくれるように、優しく手を差し伸べてくれたんだ。




1000の言葉 T章




*レナ視点*


「ただいま」


夕方、私が玄関を開けてそう声をかけても、家の中から返事が返ってくることはない。

いるハズの両親は、私を捨てたから……理由は分かっている。全部、私のせいなんだって……

どうして? と思う人がいるかもしれないけれど、どう考えても私がいけないんだ。

両親の仲が昔からあまり良くなくて、ある日突然に両親が離婚して、大人同士の話し合いの結果……私は父親に引き取られることになった。その後、父親は再婚したけど私がいるという理由で上手くいかなくて……

最終的に、私が家を出ていくことで事なきを得たようなものだ。その後、両親がどう生活をしているのかなんて、私が知る由もない。


(なんで私がこんな目に遭わないといけないんだろう……)


何度、親を憎んだか分からない。でも、そう思っていても根っ子のところでは許してしまうんだ。たった一つの両親だから。

一息ついて、ゆっくりと瞳を閉ざしてから荷物を自室に置きに向かう。

両親から見捨てられて一人っきりになった私は、通っていた学校を退学。学費が払えなくなったことが理由の一つだ。

まあ、義務教育を終えて高校に通っていた身だからね。周りの友達は心配そうに声をかけてくれたけど、あまり関わりを持たなかった子たちばかりだったな、と私は思う。

そして、その日からバイトの生活を始めた。高校中退の私を、何処の店でも採用してくれないのは目に見えていたし、分かっていたよ。

そんな困っている私に声をかけてくれた友達がいた。名前は友近、幼少の頃からずっと一緒にいる親友だ。彼女の店で、今私はバイトをしている。(ちなみに友近の家は酒屋だ)

雇ってくれることが分かって、とても喜んだことを憶えてる。

そんな親友は、私の今までの現状をよく理解してくれている唯一の子だ。



―ピロロンッ



自分の部屋に入って荷物を置いた頃、携帯がなったから開けてみた。

もちろんメールを送ってくれるのは、親友でもある友近だけ。他の子ともメールのやり取りや電話をよくしていたけれど、時が流れていくうちに回数も減っていった。


『レナへ。無事に家に帰れた? 最近物騒な事が起こってるからさ〜、心配で心配で……あ、そうそう。今日はあの漫画の単行本の発売日だよ! って、もうレナのことだから買ってるか……今回も表紙がカッコイイよね〜! 漫画読み終えたら色々感想言い合おうね!』

(フフ、相変わらずだな〜)


メールを読み終えて、クスッと笑ってから私はカバンの奥にしまってある一冊の漫画を取り出した。

その本というのは――『家庭教師ヒットマン REBORN!』

私が持っている唯一の漫画。絵も気に入ってるし、ストーリーも面白いの! 特に10年後の世界のお話が好き。展開が速くて、ハラハラドキドキしっぱなしだから!

漫画を開いて暫く読んでいると、また携帯が鳴った。


「……?」


メール画面を開くと、また友近からだった。

二通もメールを送ってくるのは珍しいな……


『書き忘れてたけど、明日はコスイベだから! 前々から約束してたんだから、断らないでよね!』

「しまった、すっかり忘れてたよ……」


彼女のメールに書かれているコスイベというのは……まあいわゆる、コスプレのイベントのことだ。

半年くらい前から、私は友近に連れられてこのイベントに参加している。

衣装もアクセサリーも、全部友近が用意していて……本当に申し訳ないと思っているんだ。

この前は、NARUTOっていう漫画に登場するサクラというキャラクターの服を着て参加したっけ。キャラクターのビジュアルは大体知ってたから良かったけど、時々全く知らないキャラの衣装を手渡されることもあるからなぁ……

今回は、どんなキャラクターのどんな衣装を着させてくれるのだろう……そう思いながら、私は瞳を閉じて眠りについた。

今日も今日で、忙しかったからな……食事も用意する気力ないし、お風呂は起きた時に浴びれば問題ないだろう。


 
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