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「───と言う訳だ。皆の者、派手に暴れて来るが良い!!」


この城の殿であろう男の話が終わると同時に、辺りから雇われたであろう男たちが声をあげた。

いよいよ明日と迫ってきた戦に、ミズキはハラハラとしながら辺りを見渡す。

前回いた城以上にたくさんいる雇われ兵の数に驚いているのもそうだが、ミズキには一つの大きな弱点があった。

それは───時間が来た時に話すことにしよう。




3.恋敵




「……で、どうするの?」


帰りの廊下、ミズキが蛮骨に問いかけた。


「敵陣さんの雇われ兵のほうが、俺たち以上に数がいるらしい……ま、何とかなるだろうがな」


前向きで、アバウトなとこもあるが、ミズキは何故蛇骨が蛮骨と一緒にいるのか分かった気がした。

大ざっぱに見えて、それでいて数少ない集団の頭としての状況判断と行動をこなす。それに加えてこの性格だ、彼が懐くのも無理もない。


「ミズキじゃね〜か!」

「ッ……!


名前を呼ばれてビクッと反応するミズキ。震える手を止めるように、ゆっくりと振り返る。


「シワス……か」


そこには、同じ村にいたミズキの2・3歳上のシワスという青年がいた。彼はミズキによって兄のような存在で、昔は親しくしていた事を憶えている。

だが、今は……


「なんだ? 知り合いか?」

「まぁ、そうです……」

「そうか、なら丁度良い! 実はな、この戦で一時的にコイツと行動することななったんだ……」

「え……はい!!?」


ミズキの声が、城に木霊した。







****







「そうか、ミズキの知り合いか〜」


夕飯の時間。ミズキの隣に座る蛇骨に、目の前に座るシワスのことを紹介した。


「先日の戦の時も一緒でさ……振り切ったと思ったんだけど……」

「俺から逃げられると思うなよ。お前が俺のものになるまで……諦めないからな」


シワスの言葉に、蛇骨は眉をあげる。その言葉を聞いて分かった事と言えば、彼は蛇骨同様に彼女に対する感情を抱いているということ。


「誰があんたなんかを認めるのさ、それに! 私には、す……好きな人がいるんだ……」


顔を赤くするミズキに、蛇骨がパァァァと明るくなる。言わずもがな、彼女の好きな人が誰であるか分かっている他の七人隊メンバーはとても微笑ましそうに二人を見ているようだ。だが、対するシワスはコクコクと頷く。


「分かってるさ……もちろん、相手は俺だよな?」

「ハァ!? 違うわよ! 馬鹿!!」

「照れるなよ〜」

「誰が照れてるんだよ!!」


さて、二人の交わす会話を聞く限り分かった事が一つあるそれは、ミズキはシワスが相当苦手だということ。


「彼は一言で言うと……かなりの自惚れ屋ですね」


観察していた煉骨がポツリと言う。


「どうするよ、蛇骨……ライバルが現れたな」


クックッと笑いながら、蛮骨は蛇骨に言う。


「どんな奴が現れたって、ミズキは渡さねぇし、ミズキも行く気はないだろう」


あれだけ否定してりゃあ……と言いながら、蛇骨はミズキたちの方を向く。


「蛇骨〜……あんたからも何か言ってあげてよ……」


数分後、言い争うのが疲れたミズキは、蛇骨の手を握る。

小さく震える自身よりも小さな手に、そっと蛇骨は空いている手で彼女の手を包んだ。


「そうだな〜……」

「何でそんなヤツのとこに行くんだよ! もっと俺を信用してくれたって───」

「信用しない、アンタは危険人物、私の寿命が縮むッ!!」


断片的に、それも直球にスパンッと言い放つミズキ。


「ヒデェよぉ〜ミズキ〜〜」


涙を流し、シクシクと言葉を発するシワス。悲しんでいるように見えないミズキにとって、彼の撮る行動一つ一つが癇に障るのだろう。

これを期に、彼女が彼に声をかけることなく一日が過ぎていった。





 


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