番外編
*秋奈視点*
皆様お久しぶりです、赤屍秋奈です。
母校であるはばたき学園を卒業して一年と少しが経ちました。
そして、彼氏である姫条君と付き合い始めて一年とちょっとが経とうとしてる。
今、私は通っている大学の帰り道を歩いています。
今日は姫条君のバイトの日。今でも時々ガソリンスタンドで働いているの。
私も、時々姫条君のお手伝いと言う形でガソリンスタンドで働いています。
もともと、私は喫茶店でバイトしているんだけどなー。
掛け持ちは大丈夫だよ、とマスターは話してくれたから良いのだけれど……。
さて、そろそろガソリンスタンドが見えてくるはず……
「んだよアンタ、私より長くやっているのに簡単なミス連発して……恥ずかしい奴だな!」
「自分かて、先輩を前にして偉そうやなー!!」
あっれー……?
どうやらお取り込み中のようです。でも、一応声はかけてみることにした。
「姫条君……」
「ん? おー、秋奈ちゃんやないかい! どないしたん?」
「そろそろバイト終わる頃かと思って……一緒に帰ろうと」
「もうそんな時間やったかー。ちょっと待っててな」
作業着を着る彼は、帽子の淵に手を添えてニカッと笑った。
その笑顔、私好きだな……
「アンタ、アイツの知り合い?」
「知り合いと言うより……彼女、ですね」
少し照れながら私は返事をする。
よく見ると、姫条君と口論していた人は女の人だった。
男っぽい印象を受けてしまうくらい、とてもカッコイイ女の人。
「へえ、あんな男でも彼女作ることは出来るものなんだね」
そう言うと、女の人は私をジーと見ながら何かを考え込んでしまった。
「あの……」
「ま、この二人ならいいかな」
はい? 考えが見えない……私はただ、固まっていることしかできなかった。
「お待たせー!」
そして、そう遠くない場所から姫条君の声が聞こえてきた。
早く着替え終えてくれたみたいだ。
「ん? どないしたん?」
「え、えっと……」
「ねえアンタら、今度の日曜って暇?」
私の言葉をさえぎるように、女の人は話題を切り出した。
私はと言うと、姫条君と顔を合わせてしまう。
「ま、まあ……今度の日曜やったらな」
「大丈夫ですよ。何かあるんですか?」
「遊園地の招待券、知り合いからもらってさ……四名様って書いてあるから一緒にどうかなって」
その時笑った彼女の横顔は、カッコイイではなくとても女らし表情だった。
とても綺麗で、とても繊細な……女性の横顔。
「四名様っちゅうことは、後の一人は自分の気になる子なんやろ?」
「んなッ!!」
さ、流石姫条君……恋愛に関しての第六感がよく働く。
「それじゃあ、今度の日曜日にバス停前で落ち合いましょう」
「ああ、宜しく……おっと、忘れるところだった」
女の人は振り向きながら手を振った。
「私、羽ヶ崎学園に通う藤堂竜子。宜しく」
「はい、宜しくお願いします! 藤堂さん!」
私達もお返しと言わんばかりに手を振って、バイト先であるスタリオン石油を後にした。
「すごく面白い子だね! 藤堂さん!」
「アホなこと言うな、あんな女……何処がおもろいんや」
姫条君は分かっていないなー。
「遊園地、どんな子連れてくるんだろうね〜藤堂さん」
「男なんは確かやで」
「あー、もしそうならダブルデートになるね〜」
「せやな!」
そんな話をしながら、私達は帰り道を歩いていった。