お試しA 「私、学校に行きたいな」 部屋の窓から見える景色を見つめて、一人の女性がそう口を開いた。 薄い茶髪の女性の声に答えたのは、少し離れた場所に立っている黒髪の男。 「無理な事だと分かっているはずですが?」 「それでも、行きたいな。ね、ミント」 「え、私に話を振らないでよ」 女性にそう声をかけたのは、深紅に染まるセミロングをなびかせている女性。 ミントと呼ばれた人物は、話しかけてきた彼女とあまり年が変わらないようだ。 「まあ、私も学校という場所に行きたいと思ってるけど……」 「教育面では支障ないでしょう? 私が教えているのですから」 「そりゃあ、アーウィンさんは家庭教師に向いているって言われているだけあって、すごく分かりやすいけど……」 「それでも、ミントねえちゃんは行きたいんだろ?」 アーウィンと呼ばれた男の後ろから顔を出したのは、グレーの髪と瞳を持つ少年だ。 この部屋にいるメンバーの中で、一番年が低いように見える。 「フレディ、いつからここに?」 「ついさっきだよ。学校、て単語が聞こえてきたからあまり口出さないようにしてたんだけどね」 ニッと屈託に笑う少年。彼は、彼女たちが住んでいるこの"村"の次期大老師になる人物だ。 とても位が上の場所に立つ彼が、彼女たちに近づくのには理由があった。 「実はさー、俺も"学校"ってトコに行かなきゃいけなくなったんだよな〜」 「フレディも?」 「そ、しかも場所は日本。地元は色々問題おきるじゃん? 俺ら」 大人びて見える少年・フレディは、見た目から分かる通り12歳のごく普通の少年だ。 義務教育の期間に入っているということもあり、周りの大人や兄弟から"セカイを知る一環として"という理由で学校に行けと言われている様子。 「俺は学校に行くけど、一人だと流石に不安じゃない?」 「お前が言うな」 アーウィンのストレートなツッコミに、女性とミントはクスクスと笑う。 「じゃあ、保護者が必要だね」 「そ! それに保護者は俺が決めて良いって言って来たからさ……」 フレディの瞳がキラリと輝く。 「まさか……」 「そ! そのまさか、だよ」 フレディの意図が分からず、首をかしげる女性。ミントは、彼が何を言いたいのか分かったようだ。 「私達が、フレディの保護者として?」 「当たり! 流石ミントねえちゃん!」 「だが……央魔を二人、しかも外に出すことを上層部が承諾するわけが……!」 「平気だよ。冥使も連れて行くって話したら、渋々だけど二つ返事してくれたし」 (俺も行く事になるのか……) 言葉を遮るように、大きな声でフレディが言う。ハァ、と溜め息をついて額に手を添えるアーウィン。 央魔(おうま)・冥使(めいし)…… この言葉が何を指しているのか、この"村"に住む者以外は知らない…… 「それに、向かう場所は日本だしね。俺らの事を知る人達はいないよ」 「ですが、安心はできませんね……」 「それでも、外に出られるんだよね? 私達も行けるみたいだし、楽しみだね! レナ」 「うん!」 不安そうな顔色を浮かべる二人とは対照的に、レナと呼ばれた女性とミントは嬉しそうに手を取り合ってニコニコと笑っていた。 そして、四人は日本で待っている悲劇に立ちあうことになる。 ヒロインの名前は、ミント・セルファード。 レナと同じ央魔であり、"村"で大事にかくまわれていた存在。 レナやアーウィン達と一緒に、勉強をするという名目で外へと初めて足を運ぶ事に。 元々氷帝学園を舞台にした混合嫌われの予定で書いていたのですが、ネタが浮かばなくて断念。 でも、昔書いていた文章は残っているので何処かで続きを書きたいと思ってます。 |