ここは、現実ではありえない異空間。ある人は"神の聖地"とも呼べる場所。 その空間には、二人の人影がゆっくりと現れる。何故か一人は正座をし、もう一人は怒りマークを浮かばせながら手に巨大ハリセンを常備していた。 《……で? なにがどうしてこうなったのさ? 詳しく言いなさいよ》 《はい……》 ダーと涙を流している神の一人・レイと、パンパンとハリセンを叩く音を出しているもう一人の神・ルカ。 上下関係がないはずのこの神たちがこうしているのには訳がある。大体の話を聞き、ブチッと眉間にある血管をブチ切らしたのはルカだ。 《なーにが、"ドッキリ☆サプライズ"だッ! 別のセカイに彼女を飛ばしやがって……!!》 《いや、しかし! 元は同じ媒体だ、支障はないはず……》 《その"同じ媒体"って時点で支障ありすぎるって言ってんのよ! もうお前は、死に晒せ!!》 《え、ちょ……またかよ!! って、ぎゃああああああああ!!!》 静かで、穏やかなはずのこの聖地に一つの大きな雷が落ちるのだが……周りにいる者たちは差して気にしてないようだ。ある者は日常茶飯事、ある者はよくある光景だと思っているに違いない。 そもそも、あの二人が何故そこまでして騒いでいるのか……その理由は、彼らが見守っている"とあるセカイ"が関係しているようだが…… 『私にとっての日常』 × 『小さくも温かな恋物語』 ―バタバタバタ……バターン!! 「!?」 「や、やあ藤君……また体調が悪いのかい?」 いつもの日常にある、いつもの保健室。今はお昼休みの時間帯だ。いつものように保健室の仕事をしているハデスと名前、そして弁当を広げて昼食を取っているアシタバと美作がいる。 もう少しすれば鏑木や本好が合流する予定になっているが、今はそれどころではないようだ。 「校門前で、人を拾った……」 「はぁ!?」 予想外の言葉に、思わず声を上げたのは美作だ。彼の言う通り、背には見覚えのない女性が気を失っている。見た目から確認できることは、20代の大人であるという事。 そして、何故か服が綺麗になっていることくらいだろう…… 「ど、どうしたんだろうね……この人」 「さあ? 変に人だかりができてたから気になって行ったら人が倒れてるし、女子達から"保健室に連れて行ってあげて!"なんて泣きつかれるわで大変だったんだぜ……」 「チクショー! 藤の分際で、なんて羨ましい……!!」 美作君、注目するところはそこじゃないよね? 冷や汗を流しながらアシタバがそう思う横で、首を傾げながらその女性を見る名前。 (なんだろう、この感じ……変なの……) 頭上に疑問符を浮かべながら何度も首を傾げている名前が気になるハデスだが、とりあえず藤が連れてきた女性を近くのベッドへと移動させて横にする。定期的な寝息を立てている所を見ると、特に怪我や別状はないようだ。 「この様子なら、もう少しすれば目を覚ますと思うよ。安心して」 「そう、ですか……」 「それにしても、ここら辺では見かけない人のようだね」 彼女の服を一通り見ての感想だった。 普通の大人たちが着るコートでも、流行りの服でもなく、シンプルな色に統一された服。この常伏で見かけない人なのは間違いないだろう…… 「さあ、そろそろチャイムが鳴る時間帯だ。皆は早く教室に戻った方が良いよ」 「あ……!」 「ったく、シンヤと本好は来なかったな。いつもは来るのに……」 「大方、友達に誘われて一緒に飯食べてるだけだろう? 特に約束してるわけじゃねーし……」 焦るアシタバに、不満そうにブツブツと言う美作、そしてめんどくさそうに話をする藤は、そのままハデス達に背を向けて保健室を後にした。本来なら、名前も彼らと共にこの保健室から出なければいけないが…… |