02

 
「だめ…恐い…恐い、恐い、恐いよぅ……また、殴られる、何もしてないのに…」


頭を抱えて、カタカタと震える名前。実は両親から、世間で言う家庭内暴力にあっていたのだ。

そのせいで、名前の体にはいくつもの痛々しい傷が残っている。


「大丈夫ですよ、落ち着いて、私がいますから…」


赤屍は、名前の体についている傷は気付いていたが、一番最初に気付いた傷があった。



ココロの傷である。



「午後は一緒に買い物に行きましょうか。冷蔵庫の中が、もう少しでなくなると言ってましたよね? それと、貴女に似合う服も買いましょう。いつも同じ服を着ているわけにはいきませんからね」


頭をポンポンと撫でられ、名前はコクコクと頷いた。


―彼は優しい人だな。初めて会ったときから…


そんな事を思いながら、名前は赤屍とお昼ご飯を食べることになった。




*******




「これにしようかな」

「これが似合うのでは?」

「そうかな……」


午後の夕方、買い物を済ませて 近くの洋服店に立ち寄っている赤屍と名前。

どの洋服にしようか、迷っているようだ。


「名前ですから、どの服を着ても似合うと思いますよ?」

「そうですか? そう言ってくれると、嬉しいな…」


大体、洋服を選び終えて会計場所まで行こうとした時だ。









「名前!!」

「良かった! 無事だったんだな!!」







声をしたほうを向くと、そこには名前の両親がいた。


「お父さん、お母さん……」

「ずっと探したんだぞ! さ、帰るぞ」


父に、腕をつかまれた時、名前の脳裏には過去に父に殴られた光景が浮かび上がってきた。


「ゃ…」


名前は、父の腕を振り払って赤屍の後ろに隠れた。


「あ、もしかして名前を助けてくれた人か? 娘が世話になったな」

「さ、帰るわよ。どうしたの?」


名前は、赤屍の後ろに隠れてカタカタと震えていた。


「…名前、戻られますか?」


振り返って名前の顔を見ながら、赤屍は問う。


「いや…いや…もう、戻らない。赤屍さんと…一緒に、いる……」


名前の言葉に、両親はギョッと驚いたようだ。


「これ以上他人に迷惑をかけるんじゃない」

「嫌!! イヤ!! いや!!」


顔を振って、名前は赤屍の服の袖を掴んだ。


「…どうやら、かなり深いようですね」

「何がですか?」


赤屍の言葉に、母は問う。


「彼女が受けた、ココロの傷ですよ。これまで受けていた傷は、この少女にとってはかなり深いということだ」

「君、家庭内の事情に首を挟まないでくれ」

「家庭内の事情、ですか。彼女を…名前を見れば分かりますよ。こんなに怯えきっている…」

「君は、名前の何が分かるって言うんだ!!」

「分かりますよ。短時間ではありましたが、一緒に生活をして…彼女の気持ちが伝わってきました。貴方には分かるのでしょうか? これだけ怯えている、名前の気持ちというモノが…」


両親は、そのまま黙ってしまった。


「…彼女は、預からせてもらいます。時期が来れば、自分の力であなた方に会いに行かれるでしょう…」

「あ…」


名前が何かを言おうとした時、赤屍は人差し指を自分の唇にあてた。


「さ、行きましょうか。夕飯の準備もしなければいけませんからね…」

「夕飯は…カレーがいい」

「そうですか? それでは、一緒に作りましょうか」

「うん!」


そんな会話をしながら、名前は自分の両親の前から姿を消した。


「あなた…」

「借金を返してから、もう一度、名前を迎えに行こう。いいな?」

「…そうね、あの人なら、名前を大切にしてくれるみたいだしね…」

「親である、私達が出来なかったことを 彼が出来るとは…私達は、名前の親失格だな」

「まだ気持ちを沈ませないで、未来を明るく生きる為に 私達は私達がやならなくちゃいけないことをやって行きましょう」

「…そうだな」


二人の姿を見送った名前の両親は、この場から姿を消した。




*******




「いいんですか? このまま居候になって…」

「構いませんよ、私が手を出したのですからね。もう少し時間がいるでしょう?貴女は…」

「…ありがとうございます…」





その後、約十数年後のこと。名前は無事に両親と再開を果たした。


そして、名前は妻として赤屍の傍にいることなった。






*アトガキ*


ココロに受けた傷は深いもの。だけど、泣かないで、怯えないで。


貴女に手を差し伸べてくれる人が、必ずどこかにいるから。


だから、今の人生を終わらせないで。そんなもったいないことをしないで。


貴女を支えてくれる人が、すぐ傍にいるということを……



忘れないで。





〜END〜


製作日:2006/4/12
引越日:2013/12/18
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