出会いは必然。

真昼の砂の国。

風影邸に、一人の女性がやってきた。

「遅かったな。殺し屋」

「私は運び屋だ。勘違いするな、ボケ」

「なッ…風影様に向かって無礼な…!」

やってきた女性に、風影の側近にあたる男が叫ぶ。

「構わん、噂に聞いていた通りのヤツだな」

女性は、黒いロングコートを羽織り、腰には長い刀が下がっていた。

「私からの依頼は前日に連絡したはずだ…」

「バケモノを異界へ運べって依頼だろ?(気が進まねぇけど…)任せときな、この成功率ほぼ100%の運び屋・この名前にな」

そう言い残し、女性・名前は風影の間を後にする。

彼女は、全国を点々としている有名な運び屋である。

それ以外の情報は謎に包まれている彼女は、砂の里を観光するかのように歩き始めた。




出会いは必然。




お昼を済ませていなかった名前は、近くの店に立ち寄った。

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

「素麺。」

「かしこまりました。」

季節は初夏。だんだんと暑くなってきたこの時期に、黒いコートを羽織っている名前はかなり浮いていた。

「お待たせ致しました。」

「お、待ってました!」

お盆の上に綺麗に並べられた素麺を眺め、名前は手をあわせた。

「いただきまーす。」

名前が素麺に手を付け始めた時、急に賑やかだった店内が静まり返った。

「?」

不審に思った名前は、身を乗り出して辺りを見渡した。

すると、一人の大きな瓢箪を持つ男の子の姿が目に入った。

「(アイツは…今回のターゲット…だったやつかなぁ…)」

人殺しは性に合わない名前は、重い溜め息をついてから素麺を口に運ぶ。

なら何故依頼を受けたのか…簡単に言えば、依頼料が高かっただけなのだ‥‥

すると、隣の席に先程の男の子が座る。

「どうした。浮かない顔してさ…」

素麺を食べ終わり、名前は箸を置きながら男の子に聞く。

案の定、男の子はビクッと反応して睨み付けてきた。

「おいおい、まだ何もしていないだろが。」

「…なら何故、話しかける…」

「私が話しかけたかったからだ。うん」

名前の意図が読めないでいる男の子は、鼻で溜め息をつく。

「君、砂漠の我愛羅…だよな。」

水を飲みながらの名前の問いに、男の子・我愛羅は目を見開いて名前を見た。

「実はさ〜、アンタのオヤジさんからの依頼でな…我愛羅を殺してほしいって言われて来てさ……」

面倒くさそうに話す名前の前を、サラサラと砂がまとわりはじめる。

「人の話は最後まで聞け。そんなことも出来ないで殺気だすなよ、この馬鹿」

初対面のヤツから馬鹿呼ばわりされた我愛羅は、驚いて目を点にした。

「場所が悪いな……移っても構わないか?」

「ああ……」

お勘定を払った名前は、我愛羅と共に店を出た。







*******







「ここで大丈夫だな。」

辿り着いた場所は、砂の里を守る高い壁の上。

「お前…本気で俺を殺しに来たのか?」

少し警戒しながらの我愛羅の問いに、名前は面倒くさそうに答えた。

「殺す気が失せた。こんなガキに何で風影は恐れるんだ?いや、理由は聞いてるけどな。

今は自分から変わろうと思えば変われる時期だな、変わる気はないのか?」

「変わりたくても…変われない」

哀しく響く我愛羅の言葉が、名前の心に響いてくる。

「環境か……だがな、世界は広いぞ!もしかしたら、我愛羅と同じ境遇に遭っているヤツがいるかもしれないぞ?」

「そんな都合良く……」

「いるぞ!うん!」

力強く語る名前に、ペースを取られた我愛羅は頭をかいた。

名前みたいな人間と話すのが初めてだからだろう。

「私には、我愛羅より少し年上の弟がいるんだけどさ…我愛羅と同じこと言ってんだ。」

「同じ…だと?」

「他人から見放される…訳が分からず毛嫌いされる…誰も認めてくれない…」

名前の言葉一つ一つが、我愛羅の心に波紋を作る。

「そんな弟の支えになってるのが私だ。我愛羅も、支えになってくれる人見つけな!」

その時だ、名前の後ろから三人の忍が現れた。

「あれ?報告はまだしてない筈だが?」

「お前は任務をする気がないと風影様は話された。」

「邪魔者は消えてもらう」

一人の忍がクナイを投げる。名前は瞬時に反応して刀で弾き飛ばすが……

「起爆札だと!?」

クナイに付いていた紙を見て叫んだ名前の声と同時に、爆発が起きて名前は少し遠くに飛ばされた。

「畜生!刀が使い物にならなくなっちまっただろうが!!」

握りの部分しかなくなった刀を投げた名前は、コートを脱ぐ。

「ちょっと持っててくれな。」

コートを我愛羅に預けた名前は、腰に付けているポーチを開いて手を入れる。

「弟が話してくれたんだがな……」

ポーチから少量の粘土のようなものを取り出す名前は、両手の平で粘土を練りながら我愛羅に話す。

「あの馬鹿、芸術関係に目覚めてな…よくこう言うんだ。」

練り込んだ粘土は、三つの蜘蛛の形をした人形になり、それらは忍たちの顔に貼り付くように飛んだ。

「な、何だ!?この変なのは!!」

「"変なの"は余計だ。ま、体で教えてやるよ」

名前は羊の印を結んでこう叫んだ。



「芸術は…爆発だ!!」



その言葉と同時に、蜘蛛の形をさた人形は爆発した。

その結果、三人の忍はその場に倒れて二度と立ち上がることはなかった。

「さて、帰るか…コート預かってくれてサンキューな」

「おい、名前は?」

「あ!話してなかったな!悪い悪い;;」

コートを羽織った名前は、また粘土を練って印を結ぶ。

すると、目の前に巨大な鳥が現れた。

「私は岩隠れの運び屋・名前だ。私たちが会ったのは何かの偶然だな」

「偶然じゃない。」

我愛羅の言葉に驚いた名前は、バッと振り向いた。

「誰かから聞いた…人が出会うのは偶然じゃなくて必然だ…て」

「必然…か」

クスッと笑う名前は、鳥に命令して空を飛ぶ。

「それもそうだ!私たちが会えたのは必然。また会えるのを楽しみにしてるぞ!我愛羅!」

大きく手を振りながら、名前は鳥と共に空を飛び去って行った。

「変わった奴だったな‥‥」

久しぶりに笑う我愛羅は、そのまま里の方に戻って行った。







*******







「姉さん遅いぞ!」

「悪い。」

「いつもその言葉で片付けてないか?うん!?」

場所は離れて、ここは岩隠れの外れ。

大きな岩の上で座る金髪の青年に、名前は怒鳴られていた。

「仕事は?」

「途中で抛棄(ほうき)した。面倒くさくなってな〜〜」

「あははは!姉さんらしいな!」

明るく笑う青年は、岩から降りて名前の隣に並ぶ。

「んで、今日はどこを攻めるんだ?」

「あそこの屋敷だ。俺ら芸術姉弟がいれば敵なしだな!うん」

「それもそうだ。早く済ませようか、デイダラ」

「ああ!」

その後、弟・デイダラと共に半強制的に暁に入った名前が、風影になった我愛羅と再会して戦うことになるのだが……

それはまた、別の話‥‥‥





〜END〜
製作日:2007/6/28


+言い訳座談会+

夜桜:自分でも何が書きたかったんだか分からなくなったのさ〜♪

名前:何投げやりみたいに話していやがる!これは我愛羅夢なんだろ?

夜桜:そうなんだよ〜!そんでもってネタが浮かんで書いたら、こんな感じに…アハ☆

名前:(絞め殺してやりたいと思ったのは私だけか…)

我愛羅:それにしては出番が少ないな。

夜桜:スイマセン;

デイダラ:んで、何でオイラもいるんだ?

夜桜:今週号のジャンプ(30号)のデイさん過去回想シーンを見ましてですね…採用してみました。

デイダラ:パクリだな。うん。

夜桜:伯して違うし!

名前:こんな馬鹿な管理人は放っておいて…この作品は、相互をしてくれた『か〜るさん』って人に差し上げる記念小説なんだと。

我愛羅:か〜るという人以外、持ち帰ることは許さん。

夜桜:あのですね、か〜る様はデイダラも好きのようでですね…

デイダラ:だから?何が言いたいんだ?

夜桜:だから!機嫌直してください!そんでもって起爆粘土スタンバイしないでくれって言いたいのよ!!

名前:管理人…死ぬな。

我愛羅:そうだな。


相互してくださったか〜る様ありがとうございます!
こんな作品でよければお持ち帰りしてやってください!
お互いに更新頑張りましょう☆



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