あなたがいたから今の自分がいる

ここは新宿にある中央病院。

「ここ・・・なのかな・・・」

その病院の前にいる女性がいた。地図を片手に、どぎまぎしなが病院の中へ入って行った。

「すみません・・・赤屍先生がいる病室はどこですか?」

「あそこの階段を登って、右に曲がって真っ直ぐ行った左手です。」

「ありがとうございます。」

軽く頭を下げると、女性は受付を後にした。

「あの人 何?」

「赤屍先生に何の用かしら」

女性の後ろ姿を見ながら言う看護婦一同。早くも嵐の予感です;;




*あなたがいたから今の自分がいる*




「ここどこ〜・・・」

場所は変わって、ここは三階の305病室前。そこには、あたふたしながら歩く姉弟がいた。

「また迷子になったじゃん。ここの病院広すぎだよ・・・」

頭を掻く姉は、中学2年 横でベソをかいている弟は小学6年のようだ。

「こんなところでどうしたの?迷子?」

辺りをキョロキョロしていると、看護婦が姉に話し掛けてきた。

「すみません、実は・・・・」

「あ!見つけた〜〜〜!!」

姉が話そうとしているところに、あたふたしながら走ってくる一人の女性がきた。

「お母さん〜〜!」

弟はそう言いながら、女性に抱きつく。

「違うよ琢磨、その人はお母さんじゃなくてミラーさんだよ。」

「よく分かったね〜神無月、お母さんの相方として嬉しいわよv」

なでなでと、神無月の頭を撫でるミラー。

「お騒がせしてすみませんでした。」

「いえいえ、それと 廊下は走らないで下さいね。」

そう言い残して、看護婦は次の病室に向かった。

「早くお父さんに会いたい・・・」

「分かってる、場所も分かったし もうすぐ昼休みに入るからね〜」

「今を逃す手はないんだよね。」

「そう言うことvさて、お父さんは近くにいるよ〜」

琢磨と手を繋いだミラーは、神無月と一緒にとある病室に向かったのでした。
























丁度そんな頃───

「(昼休み前までに間にあった・・・)」

─コンコンッ

「失礼します。」

「おや、名前ではないですか。どうしましたか?」

赤屍がいる病室に入ってきたのは、かつての彼のパートナーであり、彼の妻である名前であった。

「見れば分かるでしょう?お弁当を届けに来たんですよ!」

赤屍の前に、きちんとハンカチでくるまれた弁当箱を渡す名前。

「ありがとうございますv」

「・・・わざと忘れた、なんて言いませんよね・・・?」

「・・・まさかvそんなことはいくら私でも言いませんし、しませんよv」

「(何で語尾にハートマークをつけるんですか;;)」

ハァとため息をつく名前。

「Dr.赤屍、午後の患者さんのリストを持ってきましたよ。」

ノックもなしに、部屋に入って来たのは ザーマスメガネを掛けた女性だった。

「それじゃあ私はここで・・・」

「待っててくれませんか、すぐ済みますので。」

赤屍に呼び止められ、立ち尽くしてしまった名前。

「あら赤屍先生、お知り合いだったんですか?」

にっこりと微笑む看護婦の女性、だが目が笑っていなかった。

「えぇv私の妻ですよ。」

─ガチャッ

「失礼します。」

「お母さん〜〜!!」

ノックをしながら入ってきた神無月の横を走りながら、名前に抱きつく琢磨。

「あれ?名前もいたんだね!」

「あらあら、急に賑やかになったね。」

二人の後ろから、覗くようにして入ってきたミラー。

「この子達は・・・赤屍先生の・・・」

「子供ですよv」

それだけ聞くと、看護婦は素早く病室を出て行った。

「どうですか?もう昼休みですし、屋上で一緒にお昼でも・・・」

「でも・・・私は自分の持ってきてないし・・・」

「心配無用!!」

バッと、名前の前に手を出す神無月。

「私と神無月ちゃんが、皆の分のお昼作ってきたんだよ!!」

ジャーン! と言いながら、ミラーと神無月は重箱を見せる。

「一緒に行きましょうか、屋上へ・・・」





















「赤屍先生が子持ちだっただなんて・・・!!」

「驚き反面、悔しいわ!」

「でも奥さん、綺麗だったわよ〜」

「しょうがないわね、あれだけ綺麗じゃぁ・・・」

受付前で、ガックリと肩を落とす看護婦一同。どうやらもめ事にはならないようである。


















「あ〜!また私が食べようとした肉団子食べた〜!」

「早い者勝ちだも〜ん!」

ここは病院の屋上。天気が晴天であったため、親子で一緒にお昼を食べていた。

「急に賑やかになったわね、琢磨が産まれてきてから。」

「そうでしたね、いつも神無月は寂しがっていましたから・・・」

追いかけっこをしている神無月と琢磨。巻き込まれてミラーも一緒になって遊んでいるようだ。

「また、こうやって幸せな日が過ぎていくのね・・・」

「そうですね、前までの私達には想像もつかなかったことですから。」

そう、初めて会ったあの日を思うと 想像もしなかった展開に周りはどよめいていたことをよく覚えている。

「ごく一部、分かっていた人もいましたがね・・・」

しずくの脳裏には、今まで世話になった時間屋の姿が映った。

「そうでしたね、今頃どうしているのでしょうか・・・」

「あの人のことですから、いろんなセカイを見て回っているのでしょう・・・」

「あの時のように・・・ですか?」

「はい、そのほうが彼女に似合っていると思いまして」

水筒のコップに飲み物を入れ、飲みながら空を眺める名前。

「私の傍を離れないで下さいね、あの時のように・・・あなたを失った生活は 今の私には全く考えられない・・・」

名前の手を握りながら、赤屍は強く語る。

「私は逃げも隠れもしませんよ、こんなに蔵人のことを愛してしまったのだから・・・」

握り返すように、名前も赤屍の手を包み込むようにして握る。

「あ〜!お父さんもお母さんもご飯減ってなーい!!」

我に帰ると、琢磨が指を指しながら重箱を見た。

「私はお母さんの愛妻弁当を食べたのですから、いいのですよv」

「お〜v熱いよお二人さん」

「あまりはやし立てないで///」

「いいじゃないですかv」




暖かく、そしてほのぼのとした時を 家族揃って過ごしていった。
























*オマケ*

「お父さん!!お母さんにあまりくっつかないで!」

名前と赤屍の間に、琢磨が割入ってきた。

「それは、あまり受け入れられない注文ですねぇ・・・」

バチバチと睨み合う赤屍と琢磨。

「こういうところは、父親似なんだから・・・」

軽く溜息をする名前。

「私はもっと幻術のことについて知りたいな。」

「神無月はお母さん似だね、名前も勉強家だったから〜」

子供も、それぞれ親の性格を完璧に受け継いでいるようだった。

「ここで勝負です!お父さん!!」

「名前を自分の子供に渡す訳がないでしょう。

それに、ここは病院。争い事は家で毎日のようにやっているではないですか・・・」

「壁とかにできたひび割れや穴を修理している私や神無月の身も、少しは考えてくださいね・・・」

まだまだ母親争奪戦は続くようである。







〜END〜
製作日:2006/1/1
個人的に、幸せになってほしいカップルです。この2人は
連載の方はまだまだ続きます。最終的に、こういった結末になりますが、それはまた次回の話ということで・・・

この小説は、『携帯サイト・闇の園』さまに差し上げる相互記念小説です。
返品不可ですので、素直に持ち帰ってくださいネv



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