大切な日

季節は、涼しい秋から本格的に寒くなる冬に入ろうとしていた。

今は11月、この月に限って 彼女・苗字名前はいそいそと何かを作っていた。




大切な日




今日は11月23日、世間では『勤労感謝の日』と言われ ほとんどの人が休日の日を過ごしていた。

「ここは、こうして・・・」

「そうそう、上手じゃない。」

ここは、馬車が運転するトラックの中。仕事の帰り道、荷台には卑弥呼と名前が何かを作っていた。

正確には、名前が作っているものを事細かに卑弥呼が教えているのだが・・・

「これって作った事がなくて、本当に助かります〜」

「仕上げに、ここを結べば完成よ。良かったじゃない、今日中に作れて」

「はい!これも卑弥呼ちゃんのおかげです!」

ギュッと最後の糸を結び、ハサミで結び目が見えない程度に糸を切った。

「卑弥呼ちゃんも作るんですか?マフラー・・・」

「えっ・・・うん。まぁね・・・」

そう、先程まで名前が作っていたのは黒と白のラインが交差しているマフラーだったのだ。

卑弥呼は、顔を少し赤くしながら名前に返事をする。

「・・・あ、馬車さん。ここで降ろしてください」

出来たばかりのマフラーを、紙袋の中に入れると 馬車に頼んで無限城の近くに降ろしてもらった名前。

「それでは、また仕事で!」

「じゃあね。」

助手席に座り変えて、卑弥呼は手を振りながら名前がいなくなるまで見送った。






―カランカランッ

待ち合わせの店に入ると、いつものメンバーが出迎えてくれた。

「よう!名前じゃねぇか!」

「名前ちゃん!久しぶり〜」

いつものGBの2人に、バイトの夏実、そして店主の波児に、・・・・・

「(まだ着てないのか・・・)」

軽く溜息をすると、カウンターに座った名前。

「そうそう、蛮達に良いもの持って来たよ。」

ガサゴソと、紙袋の中を漁る名前。袋から出てきたのは、冷え冷えのチョコレートだった。

「こんな寒い日に限ってよくそんなの持ち歩けるな!」

最初に声を上げたのは蛮だった。

「いらないならあげないよ、波児さん 電子レンジ借りていいですか?」

「全然構わないよ。」

「「???」」

波児の了解をとると、夏実に頼んでレンジで数分チョコを温めた。

「今日は勤労感謝の日、それで日頃(いろんな意味で)お世話になったから 私から銀ちゃん達にプレゼント。

フォンダンショコラっていうやつで、初めて作ったから味の保証はできないけど・・・」

蛮と銀次の前に、2つのホカホカしているチョコとクリームが乗った皿を並べた。

「おい、本当に貰っていいのか?」

「うん!」

「何もお礼できないけど・・・本当に?」

「気持ちがあれば十分だよ。」

「それじゃあ・・・」

「遠慮なく・・・」

「「いっただきま―――・・・」」


―カランカランッ


丁度いいタイミングで、店の中に入ってきた客は――――

「おや、珍しいモノを食べているようですねv」

「赤屍さん!待っていましたよ!」

そう、赤屍である。口にフォンダンショコラを入れようとする体勢で2人は固まっていた。

「あ・・・赤屍さん・・・どうして、ココに・・??」

ビチッと、固まりながらだがどぎまぎしながら赤屍に問う銀次。

「名前さんに呼ばれまして・・ね。今日は大事な物を渡したいとの事でしたので・・・」

「あ、これです・・・」

赤屍の前に、赤い紙袋を渡す名前。

「これは・・・?」

「今日、赤屍さんの誕生日でしょ?

だから、先月からコツコツ作ったんですけど・・・これも初めて作ったんで何ともいえないんですが・・・;」

袋から、黒と白のラインが交差しているマフラーを取り出す赤屍は ニッコリと微笑んで名前に言った。

「これを、私に・・・?」

「狽!何か不満でも・・・」

「いいえvとても嬉しいですよVvありがとうございます」

名前の額に軽くキスをする赤屍。

「え///あ、はい・・・//」

顔を真っ赤にした名前は、そのまま下を向いてしまった。


―カランカランッ


本日三度目のお客が来た事を知らせる鐘が鳴った。

「あ、卑弥呼ちゃん!さっきぶり!」

「本当にさっきぶりね名前、ねー 蛮いる?」

卑弥呼の手には、白い袋が握られていた。

「どうした?卑弥呼・・・」

「ちょっとこっちに来なさい!」

蛮の腕を引っ張りながら、卑弥呼は奥のボックスに向かった。

「夕方は時間ありますか?」

我に帰った名前は、今後の予定を赤屍に聞く。

「何も予定は入っていませんが・・・」

「今夜は私がご馳走します!赤屍さんの誕生日ですから!」

「そうですかvとても楽しみですねv」

「波児さん、ラップしてあるフォンダンショコラは夏実ちゃんと波児さんの分ですからね!」

そう言い残すと、名前は赤屍と共に店を出たのだった。




その後、卑弥呼は無事に蛮に手作りマフラーを渡す事ができたようだ。


名前の方は、なんだかんだで赤屍を家に泊めたのだった。


その日の夜、何が起こったかは 貴女の想像にお任せしよう。今日は 大切な人の、大切な日なのだから。


*END*

製作日:2005/11/16
バネさんの誕生日に間に合った!こんな祝い方で良しとしてください;
バネさん!happy birthday!!



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