カゴの外は…

私にとって、家はカゴで 私は鳥・・・

私は、こんなカゴから外に出ることができるのだろうか・・・・


*カゴの外は・・・*


ヒナタは、生まれてからずっと外にでたことがない。・・・いや、外に出た記憶がない。

父や母から『外に出てはいけない』と言われているからだ。

「じゃ、行ってくる。」

「今日も外に出ては駄目よ。」

ほら、いつもの時間にいつものように同じ言葉を繰り返す。

ヒナタは、無言で頷くと両親は仕事の為鍵をかけて出ていった。







外にでたのは、いつが最後か覚えていない。

気がつくと、ヒナタは広い広い部屋に隠れるようにいた。

だから、外の世界はどんなところなのか全く知らない。覚えていない。

でも、そんなヒナタでも一つの楽しみがあった。

「(あ、今日も来てる・・・)」

いつ現れたのかは忘れた。

でも、決まって夕方から夜の時間帯に彼が家の前に立って私を見てくれる。


黒い服と帽子に身をまとっている彼。


彼がどんな人で、どんな名前の人なのか・・・知らない。だけど、毎日合ってくれる。

家から一歩もでることが許されないヒナタの、小さな小さな楽しみだった。








だけど、そんな楽しみが ある時 急に失った。

「今日からヒナタは、ここの部屋を使いなさい。」

急な事だった。

いつも使っていた外の景色が一番見える部屋から、太陽の光が入らない薄暗い部屋に移ることなったのだ。

ヒナタは、弱々しく顔を左右に振って抵抗した。二度と彼に合えなくなる事が嫌だったからだ。

だが―――

「子供は親の言うことを聞きなさいっ!!」

そう言われ、頬を強く叩かれた。その後、親は部屋を出た。

ヒナタは、取り残された暗い部屋で一人、静かに泣いた。そして、小さく叫んだ。

「・・・・・誰か・・・助けて」

途方にない祈りが、暗い部屋に響いた。








「(おかしいですね、今日はいないのでしょうか・・・?)」

いつもの家の前で、赤屍はそう思いながらいつもの部屋の窓を見た。

赤屍が、ここの家の前を通るようになったのは、奇跡に近い偶然だった。

いつもの依頼の帰りにあまり通らない道を通ったことが、事の始まりだ。

フッと、とある家の窓を見ると窓に手を付けて外を眺める少女がいたのだ。

日の光に当たった彼女は、赤屍が見とれてしまうくらいとても美しい人だった。

ぱちっと、目が合うと 彼女は優しそうな微笑みを見せた。



それからというもの、赤屍は仕事が入っていない日でも毎回彼女に合いに家の前に立っていた。

そこに行けば、彼女に合える―――そう思って・・・


「(今日はいないようですね・・・)」

残念そうに、家を後にしようとしたその時―――赤屍の携帯が鳴った。

「・・・・はい」

『もしもし、ヘヴンだけど・・・今いいかしら』

電話の相手は、仲介屋さんのようだ。

『急で悪いんだけど、依頼 受けてくれる?』

「・・・構いませんよ。」

その後、依頼を聞いて赤屍の表情が変わった。

「・・・・・はい、分かりました。それでは」

ピッと携帯を切った赤屍。

「クスッ この依頼、私にとって価値のある仕事のようだ・・・」

そう言ってもう一度、振り返り家を見ると 赤屍はゆっくりその場を去っていった。









薄暗い部屋に泣いていたヒナタは、奥から聞こえる微かな会話に耳を傾けた。

「どうしましょう、もし警察に私たちのことがバレたら・・・」

「まさか、証拠は何一つ残さなかった。

大丈夫さ、まさか俺たちがちまたの殺人鬼だと知っても誰も何も言わないだろう。」

ヒナタは自分の耳を疑った。

最近、近所で有名な無差別に人を殺す連続殺人鬼が自分の両親だなんて・・・

ということは、今朝早く家を出た理由は 誰かを殺す為に――――

そう考えると、ヒナタはカタカタと震え始めた。

「誰だ お前・・・・ぐぁっ!!」

「あなたっ!!」

それからしばらくすると、何かが斬られる音が聞こえた。

「だ・・・誰よ・・・・あなたは・・・」

「ただの運び屋ですよ。あなたたちを、あの世へ運ぶよう とある方に依頼されましてね・・・

そうそう この家のどこかに、小さな少女がいるはずです。どこにいるのですか・・・?」

「に・・二階の奥の部屋に・・・・」

「そうですか、ありがとうございます。」

その声と同時に、また何かが斬られる音が聞こえた。


―コツ コツ コツ


誰かが近づいてくる。ヒナタは、身を守るように体を縮めた。


―ガチャリ


「こんな所にいたのですか、可哀想に・・・」

ヒナタは驚いた。なぜなら、目の前にいる人物は毎日合いに来てくれた彼だったからだ。

「これであなたは自由の身ですよ。こんなカゴのようなところから外へ出られるのですから・・・」

ゆっくりゆっくりヒナタに歩み寄り、そっと抱き寄せた。

「あ・・りが・・・とう。」

カタカタと震えながらだが、赤屍の背中に自分の腕をまわした。

「まだ名前を伺っていませんでしたね。私は赤屍蔵人と申します。」

「・・・・・・ヒナタ」

「ヒナタさん、ですか。あなたに似合う美しい名前だ。」

赤屍は、ヒナタにそっと触れるくらいの甘い口付けをした。


ようやく分かった。

どうして、赤屍は毎日のようにヒナタに合いに行ったのか・・・

窓際から見える美しい彼女に惹かれていったからだ。

そして、ヒナタも毎日のように合いに来てくれた赤屍に少しずつ惹かれていったのだ。

「もし、この先 行くところがなければ、私のところに来なさい。あなたを大切にし そして決して手放したりしません。」

名もないカゴから大空に飛び立った鳥は、恋という名のカゴに入っていった。


END

相互祝いということで、作らせて貰いました。
いや、私が作りたかっただけなんですけどね・・・
こんなものでよければ受け取ってください。(m_ _m)

夜桜

製作日:2005/9/17



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