短編 | ナノ
漢字一字連想編【陽】: カク

冬は困る。
体温が上がりにくい体質のせいか、とても身体が冷えるから。
しもやけが出来ると彫刻刀が握りにくくなるから、そこは気をつけなきゃいけない。
カリファに選んでもらったハンドクリームを塗って保湿ケア。
………保湿はどうにか出来るけど、体温ってどうやって上げたらいいんだろ?

うーんと考え込んでいると、名前を呼ばれた。
顔を上げると、カクがあたしに手を差し出している。

「早く行かんと、パウリーたちが行ってしまうぞ」

カクの言葉のすぐ後に、パウリーの『何してんだ!』って声が聞こえてきた。
お腹が減ってるパウリーは苛々度が増すのだ。
お昼休みもそんなに長いわけじゃないし、急がなきゃ。

「ほら」

差し出した手をいつものように握ると、カクの手はとても温かかった。
でも、あたしの手は物凄く冷たい。
そんな手を握ってカクは平気なんだろうか。
いつものことなんだけど、ふと気になって聞いてみた。

「何でカクはいつもあたしと手を繋ぐの?夏は良いけど、冬は冷たいだろ」

あたしの質問にカクは少しだけ不思議そうに首を傾げ、それから笑った。
あたしの冷たい手を包み込むように握り締めてから。


「春も夏も秋も冬も、一年中ずっと手を繋いでたいからじゃ」



手も心も温かいひと




「もうあたしの手も暖かくなってきた」
「わし、体温高いからのう」

11/04/02

by群青三メートル手前

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