僕と君とぶどう糖

少し昔の話をしたくなった。
俺は小学校の鉄棒の授業が大嫌いだった。
もともと運動はまぁまぁできた方なのだが何故か鉄棒だけは怖くてできなかった。

逆上がりができない女子生徒は結構いたが、男子となるとごく僅かの生徒しかいなかった。
俺はそんな自分が恥ずかしくて恥ずかしくて、放課後、近所の公園で練習をしていた。

ある日のこと、俺はいつも通り逆上がりの練習をしていた。
鉄棒をつかむ。地面を蹴る。
しかし、視界が一周する前に元の視界に返る。
しかもかなり運が悪かったらしい。俺は鉄棒から手を離していて、地面と思い切りごっつんこしてしまった。

「いてぇ。」

幸い怪我はしてないものの、すごい恥ずかしい気分になった。
帰ろう。
そう思い、立ち上がったら目の前に人間が立っていた。

しまった、見られていた。

「どうしたの?大丈夫?」

花柄のワンピースを着て、エコバッグを片手にぶら下げた少女が俺の前にいる。なぜエコバッグなんだ。


「べつに…大丈夫だから。」
「ほんとに?あ、ぶどう糖食べる?」


わけがわからない、ぶどう糖ってなんだ。
俺が黙ってる間に少女はエコバッグの中を漁り、

「氷砂糖みたいなの、おいしいよ?」
そういって俺の手に乗る角砂糖。ぶどう糖ってぶどうの形じゃないのか。
「食べないの?」

「………食べる。ありがとう。」

口に入れると少し甘さが足りないがほんとに氷砂糖のようなものだった。

「あのさ、」

視線を戻すと、少女は居なかった。

大学生になった今思うと少女はボーイミーツガールを期待したのだろうか?
いや、でも小学生の少女がボーイミーツガールをしるわけがない。
となると、あれは幻だったのか?


俺がふと気づくと、目の前には公園。

久々に逆上がりしてみようかな。

鉄棒をつかむ、地面を蹴る。
しかし、視線が一周することはなかった。

「やっぱり、な」
自嘲気味に笑い、俺はエコバッグを手にとり、帰ろうとした。


すると目の前には


「ぶどう糖、食べる?」



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