あけたよ!
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「わぁー・・・凄い。パーティってこんな豪華なのね」

そう呟く彼女は、今まで派手な催し物には無縁で生きてきたとは感じさせない程ドレスと映えている

新しい年を迎える為のカウントダウンパーティ、の主催であるグランバニア王(自分)は妻同様普段着でいられない


(はあ・・・ビアンカ凄いなあ。リラックスしてるし、ドレス似合うし)


リュカ、と名前を呼ばれ顔を上げると額に鈍い衝撃


でこに爪弾き、通称でこぴん

「〜〜っ。痛ぁ、びあんか?」

「リュカさん。君が思っている以上にその正装は似合っているんだからね。そんな背中曲げてたら裸の王様より恥ずかしいわ」

リュカは誰が見ても解りやすいのよ、と笑われる

頭に(地味に)残る余韻で顔を歪めながら驚いたのは新年の前夜での微妙な例えでなく彼女がいつも自分の考えを読み取る理由

どうやら彼女が思慮深いのでなく自分が人目から見ても単純な様だ



「おとうさ〜ん、おかあさ〜ん!みてみてみて、こんなにおっきーお肉貰った〜!!!」

「ちょっとテン!お肉振り回すなんてオー君みたいな真似やめてったら〜」

「いやソラ殿。オーク殿はきちんと椅子に腰掛け食事を摂っておりますぞ」

「ちぇー。折角サンチョがごはんの準備で忙しいってのにソラもピエールも同じこと言うんだもん。」

ソラが姉、ピエールが教育係

それはもう微笑ましくて和む

「ねー、お母さんもお父さんもごはん食べにいこうよお」

「いや、お父さんたちは仕事があるか「良いわね、いきましょう!」

年明けまでは時間があるから、と腕を引っ張られる

この手を昔からふりほどけそうにないのは心底惚れてしまったから





家族と肩を並べることは


こんなにも、あたたかいんだと

傍らの君も思っていてくれるだろうか


壮絶過ぎた一年でも、だからこそこの一瞬が愛しい




***


「びあんか・・・酔ってるね」

「よっへるひとはぁ『らいびょーぶ』てゆーへろ、わらしはよっへないはらいわらいわよぉ」


本当に酒に強い人間は自称しない

緑髪の親友で経験済みのケースだ

「ビアンカ様!お下がりください。足元もふらつかれて・・・お休みになった方がよろしいですよ」

どれだけサンチョが説得しても足を踏ん張ってこの場を立ち去ろうとない僕のお嫁さんは、酔っても尚責任感を捨て去らない

やんわりと雰囲気を楽しんでいた二時間前の彼女は何処へ迷ったのか


「リュカぼっちゃん!年明けまでもう十秒しか・・・!」

「えっ!?皆さんグラスをお手に取って下さい!!」


9

8

7

「あっ、お母さん!」




3

2

「 」




Happy New Year!!!!



頬におちた小さな音と柔らかい感触で君に劣らない程燃える

頬を君の両手で包まれ左うっすら残った唇の色にはまだ気づかない




歓声に混じって冷やかしの口笛



「りゅ、か。だいすき・・・」


その場から崩れ落ち煌めいた天糸の髪

・・・まではロマンチックだが聞こえ始めたのは微かな寝息


その寝息に混じった言葉が一生懸命練習した東洋の新年で用いる挨拶とは露知れず、どんな初の夢を見ているものかと皆考えを巡らせた



     
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