いつから名前と一緒にいるかとか考えたことはない。けれどこれから先いつまで一緒にいられるかはよく考える。名前はよく男と付き合う。だがそれも2週間と持たずして別れることが大半だ。1ヶ月持った奴なんて俺は見たことがない。別れた奴から聞いた話だが、思っていた人と違った…らしい。その度に俺はお前は名前の何を見てそんなことを言っているんだと内心毒づく。

「またフラれたー!」

名前はフラれる度に隣の俺の家に来る。そしてひとしきり愚痴を吐き出した後にふらりと帰っていく。俺はただ黙っているだけだが、名前はそれでいいらしい。ごちゃごちゃ言われるのが嫌いな名前だから当たり前と言えばそうだ。
しかし今日は違ったらしい。

「日吉、慰めてくれてもいいんじゃない?」
「断る。どうして俺が慰めないといけないんだ」

こっちの気も知らないで。と内心付け加える。俺としては別れて万々歳だがそんなことを口にした日にはこいつと一生口が聞けなくなるだろう。名前と関わりが、今まで築いてきた関係が崩れるのを恐れている俺は案外臆病なのかもしれない。それでも心の片隅では名前と幼馴染みという関係をやめて恋人になりたいと願う自分がいる。矛盾しているのは重々承知だ。

「ぶぅ…他の時は慰めてくれるのにー」

俺のベッドで俯せになったまま文句を言うこいつは何もわかっていない。いくら幼馴染みといえど俺は男で、しかも好きな女が薄着で自室のベッドに寝ているという状況に何も思わない訳ではない。いつも理性を総動員しているが、そろそろ自覚してもらわないと困る。そう思い俺は俯せの名前を仰向けにし上から覆い被さる様にベッドに乗った。

「?!わか…」
「お前は、何もわかってない。俺は男で、いつまでも優しくなんかしてやれない。それに…お前が弱っているときにつけ込んで手にいれても嬉しくない。俺は正々堂々お前を手に入れる」

そういうとやっと状況が理解出来た名前は顔を真っ赤にさせてじたばたと組み敷いている俺の下で暴れた。これ以上脅す必要はないと思った俺はあっさりベッドから降りた。俺はベットに背を向けるようにして座る。
名前は押し倒されたというのに未だにベッドから降りずベッドの上にクッションを抱えて体育座りで座っている。

「脅して悪かった」

一言俺が言うと、背後でビクリと名前が震えたのが気配でわかった。やり過ぎたかと思ったが後悔はしていない。…いや、これで幼馴染みから変わってしまうと考えると後悔する。悶々と悩んでいたら名前がベッドから降りて俺の横に座った。
そして気に入ったのであろう、黒と白のリバーシブルになっているシンプルなクッションを抱えたまま小さく話し始めた。

「…私、男運ないね」
「あぁ」
「…近くにいるいい男を意識しないようにしていた罰なのかな…」
「…どうだろうな」

名前も怖かったらしい。俺に想いを言うことで何かが変わってしまうことが。だから他の男を好きになるように努力した。けれど結局好きになれず別れてしまっていた。

「ダメ、だった。若を意識しないようにすればするほど意識してた。他じゃダメだった。若じゃないとダメだったんだよ」

それは俺も同じだ。名前が誰かと付き合う度に只の幼馴染みだと自分に言い聞かせて、好きだと誰かに悟られないように意識しないようにしてた。けれど目は無意識のうちに名前を追っていてどうしようもないくらい渇望していた。一時は名前以外を好きになって忘れようとさえ思ったが上手くいかなかった。
長く呼ばれていなかった下の名前呼ぶ名前が愛しくて、俺は衝動的に名前を抱き締めた。

「…ごめん、ごめんね、若」
「俺も…ごめん」

近くに居すぎた俺達。だからこそ恐れ遠回りをした。ずっと昔から俺達にはお互いしかいなかったというのに。
ごめんと何度もお互いに言い合い、ありがとうと言い合った。それ以上はいらない。それだけで俺達には十分だった。

「…やっと、だね」
「待たせ過ぎだ、ばか」

いつまで一緒にいられるかをこれから考える時は前よりも心が軽い。今で思っていたこれからと、これから考える未来は全く違うのだから。
どうか俺の未来にお前がいて、お前の未来に俺がいるように。柄にもなく名前とキスをしながらそう願った。


初氷帝がまさかの日吉。毎度のことながら意味のわからない短編で申し訳ありません。これはお友達のヨコシマヤさんからリク頂いたものなのですが…こんなものでいいのか…悩む。ヨコシマヤさんのサイトには素敵な日吉がいますので素敵な日吉がお好みの方はリンクからどうぞ!!そしてタイトルは確かに恋だった様からお借りしました










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