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「オレ、サイダー!」

「あたし、ミルクティーがいいなっ!」

言われた通りに、フェルビノがボタンを押して行きます。

「お前ら、慌てないでゆっくり飲めよ」

「わーい!」

「フェル、ありがとう!」

フェルビノがアイゴを見ます。

「アイゴは?」

「俺はおしるこで」

「しぶいな...」

ボタンを押しながら、フェルビノは自分の分を選びます。

余分に飲み物が落ちる音。フェルビノの手が止まります。
見ると、おしるこが2本。

どうやら当たりのようですね。

フェルビノがえ″っという表情をしました。取り出し口から2本の缶を出します。

「...アイゴ、2本いる?」

「2本はちょっと」

「だよな...」

溜め息をつきながら、フェルビノはおしるこの缶を開けました。
甘いものは好きな方の彼ですが、今は別の飲み物が飲みたかったようですね。

「惜しかったね、アイゴ!」

エラレアがミルクティーを飲みながら言います。
フェルビノが羨ましそうにエラレアを見ています。

あ、ミルクティーが飲みたかったもよう。

「にしても、あのボムはびっくりしたよなー!オレ気ぃ取られちゃった!」

「ねー!さすがフェルだよね!」

バトルの最後で投げられたスプラッシュボム。

あれは、元々どこかを狙って投げられたものではなかったのです。

日々バトルをしているイカ達にとって、ボムの音はとても警戒すべきもの。
それを逆手に取り、アイゴの一撃を逸らしたのです。

「また負けました。さすがアニキです」

おしるこをすすりながらアイゴが言いました。

その姿はなんというか...うーん、アンバランス。

「いや、あれは俺の負けだよ」

空になった缶をいじりながら、フェルビノが言いました。

うわ一気飲みですか。スゲェ。

「状況的にも、完璧に負けてた。...ただ一つ、言えるとしたら―アイゴ」

フェルビノは困ったように笑います。

「迷ったらポイセン使えよ」

あ、と小さく呟いたのは、アイゴだけではないようです。
確かにセンサーで位置を特定していたら、状況は有利になっていたようにも思えます。

「まあでも、アイゴは強いから問題ないよなー!」

ザントが言い、エラレアが頷きます。

「でもそれは」

「1対1でも、強さは強さだよ」

フェルビノがアイゴの言葉を遮ります。

アイゴは1対1になると、敵無しの強さを誇ります。ですが、狙う相手が2人以上になると、...正直誰でも倒せるかもしれない、そんな実力を持ったボーイなのです。

もちろんバトルは4対4です。1対1に持ち込める状況が毎回あるとは限りません。
アイゴもそれを分かっているのです。

「オレはカッコいいと思うけどなー、そういうの」

ザントが呟き、にかっと笑います。

「だってリッターじゃ、1対1勝てねーし!」

「チャージャーが出来たら困るだろ」

アイゴが突っ込みを入れます。エラレアも苦笑いをしています。

でも、空気は先程より明るくなりました。

頑張って下さいね、アイゴ。

「...いやでも、Nちゃんがあのまま腕を上げたら、対人でも...。ただ、撃ち合いの時間差が...」

おや?チームリーダーが何やら呟きながら、真剣に考えています。

「フェル?どうしたの?」

エラレアの呼びかけに、フェルビノは我に還った様子で、いつもの笑顔に戻ります。

「あっ...いや、何でもない」

そして...珍しく、少しだけ照れたように言いました。

「ただ、そのうちスプチャが活躍する時代が来るかな...なんて」





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