→本文:7
「オレ、サイダー!」
「あたし、ミルクティーがいいなっ!」
言われた通りに、フェルビノがボタンを押して行きます。
「お前ら、慌てないでゆっくり飲めよ」
「わーい!」
「フェル、ありがとう!」
フェルビノがアイゴを見ます。
「アイゴは?」
「俺はおしるこで」
「しぶいな...」
ボタンを押しながら、フェルビノは自分の分を選びます。
余分に飲み物が落ちる音。フェルビノの手が止まります。 見ると、おしるこが2本。
どうやら当たりのようですね。
フェルビノがえ″っという表情をしました。取り出し口から2本の缶を出します。
「...アイゴ、2本いる?」
「2本はちょっと」
「だよな...」
溜め息をつきながら、フェルビノはおしるこの缶を開けました。 甘いものは好きな方の彼ですが、今は別の飲み物が飲みたかったようですね。
「惜しかったね、アイゴ!」
エラレアがミルクティーを飲みながら言います。 フェルビノが羨ましそうにエラレアを見ています。
あ、ミルクティーが飲みたかったもよう。
「にしても、あのボムはびっくりしたよなー!オレ気ぃ取られちゃった!」
「ねー!さすがフェルだよね!」
バトルの最後で投げられたスプラッシュボム。
あれは、元々どこかを狙って投げられたものではなかったのです。
日々バトルをしているイカ達にとって、ボムの音はとても警戒すべきもの。 それを逆手に取り、アイゴの一撃を逸らしたのです。
「また負けました。さすがアニキです」
おしるこをすすりながらアイゴが言いました。
その姿はなんというか...うーん、アンバランス。
「いや、あれは俺の負けだよ」
空になった缶をいじりながら、フェルビノが言いました。
うわ一気飲みですか。スゲェ。
「状況的にも、完璧に負けてた。...ただ一つ、言えるとしたら―アイゴ」
フェルビノは困ったように笑います。
「迷ったらポイセン使えよ」
あ、と小さく呟いたのは、アイゴだけではないようです。 確かにセンサーで位置を特定していたら、状況は有利になっていたようにも思えます。
「まあでも、アイゴは強いから問題ないよなー!」
ザントが言い、エラレアが頷きます。
「でもそれは」
「1対1でも、強さは強さだよ」
フェルビノがアイゴの言葉を遮ります。
アイゴは1対1になると、敵無しの強さを誇ります。ですが、狙う相手が2人以上になると、...正直誰でも倒せるかもしれない、そんな実力を持ったボーイなのです。
もちろんバトルは4対4です。1対1に持ち込める状況が毎回あるとは限りません。 アイゴもそれを分かっているのです。
「オレはカッコいいと思うけどなー、そういうの」
ザントが呟き、にかっと笑います。
「だってリッターじゃ、1対1勝てねーし!」
「チャージャーが出来たら困るだろ」
アイゴが突っ込みを入れます。エラレアも苦笑いをしています。
でも、空気は先程より明るくなりました。
頑張って下さいね、アイゴ。
「...いやでも、Nちゃんがあのまま腕を上げたら、対人でも...。ただ、撃ち合いの時間差が...」
おや?チームリーダーが何やら呟きながら、真剣に考えています。
「フェル?どうしたの?」
エラレアの呼びかけに、フェルビノは我に還った様子で、いつもの笑顔に戻ります。
「あっ...いや、何でもない」
そして...珍しく、少しだけ照れたように言いました。
「ただ、そのうちスプチャが活躍する時代が来るかな...なんて」
prev * next
back
|