スプチャちゃんと内心



右後方からプライム。後ろにスシコラ。
届かない。

左にホットブラスター。届く。
構える、撃つ。

―外した。

相変わらず。倒すのが速い。

「...フェルくん」

彼がいた。





「おつかれさま、ナコちゃん」

彼が笑う。この時間は好き。

だけど。

「もう一戦」

「えっ?」

「もう一戦、やりたいわ」

気に入らない。失敗ばかりで。

「...いいよ。やろうか」

彼は断らない。アタシはずるい。

困り顔で笑う度に、そう思うの。





構えて、撃って。移動。また撃って、移動。

良いチャージャーは、動かない。

だけど、動いて合わせるのも、良いチャージャー。
そう言ってくれた。

彼がいた。前に出過ぎかしら。

黒い瞳。
綺麗。毎回思う。


「―任せた」


胸が高鳴る。


「嬉しい」


つい。こぼれる。

彼が止まった。アタシを見てる。

どうしたの。別に。たまにあるやり取り。
スペシャルを使うべきだったかしら。

課題は多い。





「どうだった?」

彼が聞く。口を開く。

「満足したわ」

「よかった」

彼が笑う。今度は本当。

困らせたくない。

けど。中々上手くいかない。チャージャーと同じね。

だから、彼が笑って安心する。

「...あ、あのさ。この後...」

表情が変わる。不安。前まで思ってた。
最近分かってきた。彼を見る。

黒い瞳が揺れる。赤い頬。

好きだから、こうなるの。

言い淀む。何でもない。聞けなかった。

撫でられる。頬がくすぐったい。

どうしたの。見られると、恥ずかしい。

そう言われた。
だからアタシも。そうって返す。

しばらくして。

もう少し、このままでいたい。

彼が笑う。
アタシも。だから、そうって返すの。



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