*7*



言ってしまった…。ついに言ってしまった。

俺の一方的な告白。あの後、逃げるように帰って来てしまったので、彼女がどんな反応をしたかは分からずじまいだった。
だけど、気になって気になって仕方がない。

果たして彼女は、俺の言葉をどう受け取ったのだろうか。

言葉だけなら例え受け入れて貰えなかったとしても何とかなる。何とかなるのだが…言葉の前にした、俺の行動は…。

出会って長くもないボーイに告白される。それだけなら一般的に有り得る事かもしれない。
だが俺は、勢いに任せてしまったとはいえ、彼女の頬に―

「うわぁぁぁぁ…!!何てことをしたんだ昨日の俺は…!!」

まずいんじゃないか。明らかに悪い方向にしか行かない事をしたよな…俺…。

「俺は何て事をしてしまったんだ…取り返しのつかない事を…」

ふいに家のチャイムが鳴り我に還る。

一瞬Nちゃんの事が頭をよぎったが、彼女はこの場所を知るはずがないので…考えられるのはほぼ一人しかいない。

ドアを開けると、そこには背の低いガールの姿。
一般的なイカよりも年下のイカの、ピンクの瞳が俺を見た。

「フェル、おはよう!」

やっぱりエラレアか。その後ろには二人のボーイもいる。いつものメンバーだ。

「今日もバトル行くんでしょ?」

エラレアが笑顔で口を開く。

バトルか…。バトルでもしていれば少しは気が紛れるかもしれない。

「…悪い、今日は一人で行かせてくれ」

俺の言葉に、エラレアは目を丸くする。

「ええっ!?どうして?…フェル、あたし達とバトル行きたくないの…」

しょんぼりした様子のエラレアに、俺は「そうじゃないんだ」と続ける。

「俺さ、最近お前たちに頼り過ぎてたんじゃないかって思うんだ。だから、たまには一人で行って鍛え直してくる。…お前たちのサポート、もっと上手く出来るようになりたいからさ」

言いながらエラレアの頭にポンと手を置き、俺はブキをもって家を出る。


「さっすがフェルのアニキ!オレたちの事をそんなに思ってくれてるなんて!」

「やっぱ言う事が違うな…これからも着いていきます、アニキ」


背中越しに聞こえる声に、俺は心の中で「ごめんな…」と呟く。

そんな大層なものじゃなくて…。ただ、一目惚れしたガールに勢いで告白した事を忘れたかっただけなんだ…。





「ステージはネギトロか…。皆、よろしく!」


永らくチームでバトルをやっていたからか、バトルの開幕時に挨拶をする事は癖になっていた。


「よろしく、Fくん」


隣からナイスが返される。

「うん!よろしくNちゃん……って」

うわぁぁぁぁ!?何で…何でいるの!?

口に出して叫ばなかった自分を心の底から褒めたい。
そして態度に出さなかった(流石に一歩後ずさった)自分も褒めたい。

「ど…どうしてここに?」

可能な限り自然を装って聞いてみた。

「ちょうど部屋が開いていたから、合流したの」

「あっ…そっか……。…フレンドだもんね…」

しまった。フレンド合流の存在を完全に忘れてた。

「どうかしたの」

「…い、いや…よろしく…」

き、気まずい…!

目線を合わす事を避けつつ、俺はいつもより速く中央に向かった。

スタートダッシュがものすごく欲しい気分だった。






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