▼ 消えたい者と消えてしまう者
この間ルートヴィッヒさんが、「フェリシアーノの気持ちがわからない」と頭を抱えていた。
私からすれば、それは「なぜわからないのですか」というレベルの話である。
欧米の皆さんは自分のしたいことや思っていることをなんだかんだ言いつつ素直に出していると思う。フェリシアーノ君はもちろん、ルートヴィッヒさんだって。
特に私の師は自分の欲望にとても素直だ。少し素直すぎる気もするが。
しかしそんな彼の周りはいつも明るく、苦笑であれなんであれ笑顔が溢れている。
ーでは私はどうだろうか。寡黙は華とあまり表情も動かさず、笑うといっても営業用に作った笑顔しかさほど使わない私は、どう見られているのだろうか。
思考を始めた地点からは少し離れたところにある思想ではある。考えても仕方のないことだということもわかっている。
だが、そんな風に頭ではわかっているつもりになれど、思考は止まらなくて。
「・・・く・・・菊、きーくー?」
「はっ、はい、なんでしょうか?申し訳ありません、ぼんやりしていて・・・」
「ううん、俺は平気だよ!それより菊大丈夫?なんだか今日顔色よくないよー?」
「はぁ・・・そうですか?」
「うん・・・なんか辛そう・・・無理してない?」
しています
「していませんよ?普段と変わらないと思いますが・・・」
「そう?なんかあったら言ってね?俺・・・は頼りないかも知れないけど、ルートもいるし!」
ありがとうございます
「誠にすいません、恐れ入ります。しかし本当に大丈夫ですので・・・」
「そっかー!菊が大丈夫っていうなら大丈夫だよね!ヴェー変なこといっちゃったかな」
ごめんなさいフェリシアーノ君。
「あ、そうだ!この間パスタが美味しいお店見つけてさ!晩御飯これからだよね?行かない?」
「いいですね・・・ルートヴィッヒさんも誘って行ってみましょうか。」
「うん!あ、ルートルート!!」
「ん?なんだフェリシアーノ・・・に本田もか。」
「晩御飯食べに行こーよ!菊も一緒だよ!!」
「本当か?珍しいな・・・待っていろ、すぐに支度をする。」
「ヴェー今日は仕事もうしなくていいのー?」
「ああ、そんなに大きなものはもう残っていないしな、後は家でできる。」
「うわわわ家でも仕事するの?!」
「簡単な署名だけの書類だ。それより皆で親睦を深める方がいいだろう」
ごめんなさいルートヴィッヒさん。
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「今日はこの辺りで失礼しますね。」
夜も深まり、場も収まりつつあるところで席をたつ。
「んー?帰るのかぁ?」
若干とろんとした目をしているルートヴィッヒさんに代金渡しておきますね、と少し多めにお金を渡す。
「お二人も、あまり羽目をはずしてはいけませんよ?」
はーいと手をあげるフェリシアーノ君と、わかっている、と言うルートヴィッヒさんを残し私は家路へとついた。
続く
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