▼ プロローグ
荒れ果てた大地。
生きているものはほとんどいない。例え生きていたとしても、もうすぐ死に行くものばかり。
そんな場所で、確かに一人大地に立つものがいた。
燃えるような紅い髪。ぼろぼろのマント。袖のちぎれた服。胸元にペンダントが光る。
手も身体も傍らにある剣も髪の毛と同じ色に染め上がっている。
誰も声を発さない、時々うめき声が聞こえるだけの大地で彼はポツリと呟く。
「・・・つまらねぇ」
その声はどこまでも広がっていきやがて消えていった。
傍らの剣を手に取り空を見上げる。
今にも雨が降り始めそうな曇天に向けて、かれはもう一度呟く。
今度はさっきよりもやや強めに。
「つまらねぇ・・・!」
雨は静かに降り始め、やがて豪雨となり彼の姿を隠す。
こうして、物語は始まった。
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