私の友達にはマオというちょっと変わった奴がいる。 割と長い付き合いではあるんだけど今年になってさらにおかしくなったらしい。 なにやら突拍子もないことを言い出すようになった。 それは学年が上がってすぐの頃だったと思う。 「聞いて聞いて!私ね、彼氏ができたの!」 「嘘つけ」 一刀両断した。 ええ、ひどい!って喚いていたけど信じられる要素が何一つなかった。 なにしろマオといえばスポーツ推薦で入学するくらい部活一筋、恋する暇があれば睡眠と食事にあてるわー!なんて豪語するのはいつものことだし、もちろんそんなんだから彼氏いない歴なんて、まぁ、お察しください。 そんな奴がいきなり彼氏ができた〜なんて言って信じるほうがおかしいじゃない。 「あのねえマオ、エイプリルフールは先週だけど?」 「違うの、ほんとにできたの!いるの!しかも外国人でね、」 「え?何?二次元の話?」 「何でそうなるの!!?」 「あー今年は綺麗に桜咲いたねえ」 「聞いてよおおお!!!!」 涙目になりながら肩を掴まれた。 そう言われても信じように信じられない私は一言。 「そんなに言うなら証拠見せてなって」 そんな会話をした数週間後。 マオは携帯を片手ににやにやと近付いてきた。 ああ、面倒なことが起きるぞ、と身構える私の前に画面をつきつけたマオ。 「んふふ〜、どう?証拠!!」 「画面近すぎて見えない」 「あ、ごめん」 証拠見せれるのが嬉しくってつい、と頭を掻きながら携帯を差し出された。 冷めた目をマオから画面に移すとそこには参考書と向き合う黒人の男性。 誠実そうというか、賢そうというか。 どこで知り合ったのかも謎だけどどうしてマオと付き合っているのかも謎。 あ、そうか。 「雑誌の切り抜き?」 「ええ!?そうくるの!!??」 私が閃いた考えはどうやら外れみたいだ。 しかし彼氏には見えない。 携帯を返すとマオは少しむくれた。 「むぅ…せっかく証拠持ってきたのに…」 「証拠っていうくらいならちゃんと2人で写りなさいよ…」 呆れて返すとマオは目を見開いた。 ああ、その考えは思いつかなかったのね… その後も何かにつけては「本当なんだよ、かっこいいんだよ、」と付きまとってくるマオにそろそろうんざりしてきた。 「だーかーらぁ〜」 「ああはいはい、ほんとね、かっこいいね」 「ぐっ…!全然信じてないじゃないですか…!」 結局放課後になっても私に彼氏の存在を認めさせることのできなかったマオは盛大に溜め息をつく。 ちょっと、溜め息ついたいのはこっちなんだけど。 抗議しようとした私の声は、ふと顔をあげたマオによって遮られた。 「ああー!ピュンマ!!?」 何事だ、と視線の先を追うと、道端に停めた車に寄り掛かる1人の男性がいた。 男性はマオの声にこちらを向くと、手にしていた携帯をポケットにしまう。 マオが彼氏だと主張していた、あの黒人男性だった。 ぱたぱたと駆け寄るマオの後ろを信じられない気持ちで着いていく。 「何でピュンマがこんなとこにいるの?」 「この辺りに用事があったから、ついでだし送ってあげようかなって」 ピュンマと呼ばれた男性は、今連絡しようとしてたんだけど、と付け加えるとちらりと私を見た。 なるほどイケメンだ。 ますますマオと付き合ってる意味が分からないけどとりあえず頭を下げておくと向こうも返してくれた。 「友達がいるなら来ないほうが良かったな…」 「あ、いえ、どうせ用事があるのでお気遣いなく。むしろちょうど相手するのに疲れてたんでどうぞ連れて帰ってください」 ピュンマさんが申し訳なさそうな顔をするもんだから慌ててマオを押し付ける。 予想はしていたけどすぐさま高い声が響いた。 「相手するのに疲れる!!?」 「ああ、その気持ちわかります。ご迷惑かけてすみません」 「いえいえ、こちらこそ」 ひどいひどい!と叫んでるマオを無視してピュンマさんとにこやかに会話を進める。 思った通りのいい人だな、と思っていると完全に怒ったらしいマオがピュンマさんの腕を掴んだ。 「もー、2人ともひどい!ピュンマ、早く帰ろう!」 どうやらここにいると更に攻撃されることへの回避だったようだ。 それじゃあ、とピュンマさんと軽い会釈を交わすと2人とも車に乗り込んだ。 本当にあんな彼氏がいるなんて… と呆然とする私を置いて走り出す車を眺めていると鞄に入れた携帯が鳴りだした。 ディスプレイを確認すると彼氏からだった。 ピュンマさんみたいな物腰柔らかな人にしておけば良かったのかな、なんて思いながら通話ボタンを押した。 (5秒で飛んできて) (はあ!!?) ◆にゃも様のサイト応答せよ。様にて、映画公開記念フリリク企画に応募させて頂きました。 大好きな008夢「等価交換」の続編をお願いしました。前作はにゃも様のサイトにて観覧できます!最後に友人の彼氏さんが登場するのが、また可愛いのです。素敵な夢をありがとうございました。 back |