「ねぇピュンマ泳ぎ教えてよ」
「え」

ピュンマの手元にあった接着剤がにゅるっと余分に出た。最近彼は模型作りにハマっている。

「私泳げないんだもん。ピュンマ得意っしょ?」
「得意…といえばそうなのかも知れないけど……」

なんだか乗り気じゃなさそう、というよりは、悩んでいる風だった。
飛び出た接着剤が乾燥してゆく。

「なんか問題でもある?」

聞くと、ピュンマは白状したように答えた。

「…僕の泳ぎは潜水専門だよ」

軽く30分は息継ぎしなかった。むしろそろそろ“息継ぎ”という行為自体を忘れた頃かも知れなかった。

「そ、そっか。でもほら、水圧をうまく逃がすコツとかさ、フォームとか」
「まぁそういうのなら」

おっ!と気持ちが弾む。了解してもらえそうだ。

「それでいい。ねっ、だから海いこ海」
「あぁなんだ、海に行きたかったのか」
「えっ」

勝手に納得された。更にそれならみんなで海水浴しようと提案され、フランソワーズにお弁当をお願いしようと微笑まれた。

「え、あ、う」
「みんなと海なんて久しぶりだなぁ。早速誘ってくるよ」
「あの」
「ん?」
「…なんでもない。ありがとう楽しみ」

あなたと海でキャッキャうふふしたかっただけなんです二人っきりで!とはもう言えない雰囲気だった。


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