2、3日ほど捲るのを忘れていた日捲りカレンダーに気付き、手を伸ばして千切ったところ、目に入った文字にあっと気付く。
なんだか嬉しくなってしまい、たまたま通りかかったドイツ人を捕まえて報告したところ、それはおかしい、と指摘を受けた。

「不吉な日じゃないか」

カレンダーには13とFriの文字。13日の金曜日である。

「なんで喜ぶ」
「楽しいじゃん、ジェイソンの日なんて」

自分はちょっとしたものを見つけては嬉しくなるのだ。連なったさくらんぼとか、双子の生卵とか、ふと見たデジタル時計のぞろ目とか。例え444の数字が並んでいたって嬉しいし、だから13日の金曜日も楽しい。

「俺にはさっぱりわからんね」

しかし彼からすればさくらんぼも卵も確率の問題にすぎないし、4のぞろ目すらただの時間の通過点であった。

「うんまぁいいよ」

報告したかっただけなので別に一緒に喜んでくれなくてもいい。聞いてくれるだけで十分だ。
そんな些細なことに喜べることが嬉しいのだと、言いはしないがそんなことを思いながら、私はカレンダーを眺めてふふ、と笑うのだった。


back