ガチャンと派手な音を立てて転がり出てきたカプセルを掴む。覗く色は、赤だ。

「これなんだい?」

いつの間にか背後に立っていたピュンマが不思議そうに手元を覗き込んでくる。そもそもの目的は買い物だったので、彼は膨らんだエコバッグを提げている。妙に似合っていた。

「ガチャガチャ。お金入れてハンドル回したら出てくる」

先ほど出たカプセルは目的のものではなかったので、実演も兼ねて再度硬貨を投入する。
また赤だった。もう一度回す。またまた赤だ。

「オモチャの自動販売機ってこと?同じやつをそんなに買ってどうするんだい」

同じものを続けて出すので勘違いされたようだ。惜しいが違う。
ガチャン。また赤だ。何故。

「何種類か入ってて、どれが出るかわかんない仕様なの。私はコレがほしいんだけど、さっきから違うのばっかり出る」

コレ、と機械の前面に貼られたPOP広告を指差してやる。黄色のストラップ。これが欲しいっていうかこれ以外別にいらない。なのに出ない。

「4回もやって、欲しいのが出ないの?」
「………」

呆れられたわけでも馬鹿にされたわけでもない、真面目な言葉が胸に刺さる。
ごめん無駄遣いして。
ついつい「次こそ出るかも」とお金を投入してしまうのだ。人はこうしてギャンブルにのめり込んでいく。

「4回連続で同じものを引くって、確率的にはすごいよ。均等に全種類入ってるのを前提にしての話だけど」

あの、お願いだから真面目に分析しないでください。彼はきっと、私がおみくじで大凶を引いても「逆に運がいいよ」って真っ直ぐな目で言うのだろう。

「帰る」
「もういいの?」
「だって」

出ないんだもん。これ以上は財布がつらい。

ぷぅと頬を膨らませていたら、ピュンマがポケットから硬貨を取り出して、流れるような動作でハンドルを回した。
ガチャン。

「うん、じゃ、帰ろっか」

黄色が覗くカプセルを当たり前のように私に手渡して、彼は笑うのだった。ついでに頭をポンポン。

くそぅ。
なんか、いろいろ、かっこよすぎやしませんか。


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