嘘つき兎と照れ屋なBoy


「おい、」
「しっ!」
「…おい、」
「お願い、いい子だから静かにして」
(誰がいい子だ!ざけんな!)



つきあってらんねー、とユウがソファの影で自分を抑えていた彼女の手を振りほどき立ち上がったのは、このところきみが頑張って避け続けてる彼の姿がとっくに見えなくなった後のこと。充分いい子さー、ユウは。きみの気持ちがばれてから早5日。なんとその間、一度も彼と彼女は顔を合わせていないという。が、頑張ってんな。(無意味に)



「戻ってきて早々、いい加減にするさ、きみ。」



ちょっとばっか彼が気の毒になっていた俺は、ソファの背からリンクが去った方をこそこそ伺っている彼女に云う。彼女が任務から帰ってきたもう0時も間近なこんな時間は、人もまばらで意識しないとすぐに広い天井に声が反響する。



「だって何かもう、引っ込みつかなくって…」
「振り回してんの、わかってんだろう」


彼女はう、と喉をつまらせ見る見る打ちひしがれていく。だって、だってと言葉を繋ぎ、上目遣いのままほんの少し瞳を潤わす。やべえ、そんな顔でこっち見んなし。それ反則。



「わざわざ自分から振られにいくなんて…」



そんなの耐えらんない!ときみは顔を覆ってさめざめと泣き出してしまった。あちゃーって、うわ!ユウ、顔こわっ。悪かったって!!



「だ か ら。振られるってまだ決まった訳じゃないだろ、わっかんねーしそんなん」



泣かんでくれ、頼むから。ユウも怖いけど、ちょっち理性きかんくなってきた自分も怖いから!




「きみ〜、このままずるずる行くと、今以上に顔合わせ辛くなるさ。このまんま一緒の任務んなったってお互い気まずいし、それに、」





俺ら、いつ死んでもおかしくないんさ。






ぐっと、最後の言葉は飲み込んで、よしよしとふわふわなきみの頭を撫でる。小顔な子はやっぱ頭も小さいんだな。このまま掴んで持ち上げれそう。う、う、と泣きじゃくりながら顔を上げたきみ。あ、やべえって。ストライクきそうさ。て、実はサドっけあったんかな、俺。泣いてる顔の子にぐっとくるなんて。



「振られても、俺とユウで慰めてやっから、な」
「ふふ……、そ、だね、うん!」




にっこりしたきみは両手に拳を作ると、ぐい、と涙を拭きソファを飛び降りた。




「ちょっと、行ってくる。ちゃんと返事、聞いてくる」
「ああ、頑張るさ」




ありがとう、と手を振りながらさっき彼が去っていった廊下を駆けていくきみの後姿を見つめながら、何だか旅立つ娘を見送る父親のような心境になってしまい、少し切なくなってしまった。





なんと名づけよう、この気持ち
君一人で、先に行ってしまうなんて







「淋しいんだろ、おまえ」
「何云ってんさ。それはユウのほうでしょ、」
「…ち、」
「うまくいくかなあ」
「知るか」
「うまくいってほしくねえんだろ、」
「………」
(うおっ、図星!?何かユウ、泣きそう!)








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