という夢を見た。夢見が悪い、最悪。ちなみに四歳の時に実際にあった話。クソだね。悟くんは急に従兄弟の生まれについて話される意味が分からなかっただろうが、あれは俺に対する教育の一環だ。何が一番怖いって、この教育法を考えた奴と俺の名前を考えた奴がほぼほぼメンツ的に一緒ってこと。他人に倫理観を求める前に自分に情操教育施した方がいいと思う。マジで。
「倫ぅ、顔色悪いね。まだ任務多い?」
顔を洗っていると悟くんが来た。任務帰りだろうか。後ろから疲れた顔の伊地知さんも歩いてくる。
「いや、ちょっと夢見悪かっただけ。悟くんが大分持ってってくれてるから最近はほんの少しだよ」
ちょくちょく実家から勝手におかわりされるけど。わんこそばじゃねぇんだぞ。
「あっそう? じゃあ悠仁の修業に付き合ってよ」
今日で虎杖が死んで二日経つ。今のうちに修業をつけて虎杖のレベルアップを図るつもりか。
「俺、教えるの下手だよ」
「だいじょーぶ! 教えるのは僕がやるから! 倫は悠仁にコツとかアドバイスする係やってくれればいいよ」
「……フーン。ならできるかも」
そっかぁ、虎杖は悟くんに修業をつけてもらえるのか。
頭を振って思考を追い出す。だっから俺ァめんどくさい女かよって。
朝食を食べて連れてこられた修業部屋には、DVDが山積みだった。ソファーに寝っ転がった虎杖が足音に振り返る。
「あれっ先生、五条も修業すんの?」
「いや、倫はアドバイザーだよ」
「頼りにしてます! お願いしゃす!!」
勢いよく頭を下げる虎杖に、何とも言えない気持ちが去来する。
「……俺ァあんま頼りになんねぇよ。あっ虎杖、今映った奴犯人!」
「言うなよ!?」
いや観たことあるやつだったからつい。にしても、だ。
「悟くん、なにこれ」
「呪骸抱きしめながら映画一日中ブッ通しで見る修業」
「ほぉん。俺も映画使って修業したことあンよ。観てる映画の一番いいとこでネタバレくらい続ける修業」
「クソじゃん」
あれは地味にストレスの溜まる修業だった。時間に対して大した量のストレスが得られないから半日で他の修業に切り替えられたけど。ここにあるDVDのラインナップを見るに、あの修業で用意されたものを五条家から引っ張ってきたのだろう。
「あっ虎杖、こいつ死ぬよ」
「ネタバレ!!!!」
「倫、修業の趣旨が変わっちゃう」
「ごめん悟くん、人の嫌がる顔が嬉しくて」
「それは分かるけど」
「先生!?」
恵くんがいたら「これだから五条家は」とか言われそう。
「じゃあ、悠仁、倫! 僕は今から任務だから、頑張ってね 伊地知〜、パフェ食いに行こ、パフェ!」
悟くんが去った後をじっと見つめていると、虎杖がつんつんと服の袖を引いてくる。
「隣! 一緒に見ようぜ!」
「………虎杖、」
「うん?」
「この映画、伏線回収されずに終わるって知ってた?」
「マジ?! 主人公すっげぇ意味深なこと言われてんのに!?」
「言われっぱなしで終わる」
「カァァァ! マジか!」
ぱちっと呪骸が目を覚ます。あ。
「ナイスパンチ!」
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