アツクアツク

 スーパーサイヤ人にはなっていないはずなのに、まるでサイヤ人の本能そのもののような、獰猛な瞳。普段の穏やかで脳天気な空気は微塵も無く、ただ獲物を前にして今は我慢をしている獣のような、そんな悟空が目の前に居る。
 ベジータは一瞬の恐怖の後に、だが、歓喜が沸き起こるのを禁じ得ない。今まではいつも自分が追いかけていた。求めていた。だが、今は、自分が求められているのだ。認めたくは無いが、ベジータは己の胸が酷く高ぶるのを感じていた。

「カ、カカロット・・・」
「どかねぇ」
「っ!」

 声音は酷く熱っぽく、息も荒い。こんな欲に塗れた表情など普段見せないだけに、そのギャップは強くベジータを魅き付ける。

「どくわけ、ねぇだろベジータ」

 一瞬、悟空の髪が逆立ち金に光った。だがその輝きは根元から毛先へ走り抜けただけで、あの姿に変わりきりはしなかった。恐らく興奮状態はスーパーサイヤ人のときのそれ。垣間見えたその片鱗に、ベジータは何故か、興奮した。やはり求められているその強さが知れるからだろうか。
 ふと、自分はほとんど裸同然にも関わらず、悟空は未だ一糸乱れぬ格好な事に気付いた。殊更に羞恥心を煽られ、ベジータは濡れた瞳ながらキッと悟空を睨む。それがどれだけ男を興奮させるのかも知らず。

「ず、ズルいぞカカロット」
「何が」
「俺ばかり脱がせやがって、お前は・・・」
「脱がしてぇか?それともオラみたいに破きてぇ?」
「なっ・・」

 意地の悪い攻め気な台詞は、悟空が超化したときの兆候だ。それが黒髪のときに出るとは、ベジータもさすがに対応に遅れる。

「なんてな」

 二カッと笑むとそれは平常時の悟空で、ベジータは些か混乱する。だが口惜しい事にどの悟空もベジータに取っては、焦がれに焦がれた憎き男なのだから性質が悪い。
 本当に引き裂いてやろうかと手を伸ばしてグッと悟空の胸元を掴んだ瞬間、不意に内股に当たる熱に気付いた。自然と視線をそこに向ければ、道着を押し上げて強く己を主張する悟空の股間。そういえば服を裂かれる前から擦り付けられていたことを思い出す。心無しかその時よりも大分でかい。思えば自分だけ弄られて良いようにイかされてしまった。むくむくと膨れ上がる男のプライドが、大胆にもベジータの手を悟空の股間へと伸ばさせた。

「え、おわ」
「貴様もイかせてやる」

 反撃開始かと思われた矢先、服の上から熱い膨らみに触れたベジータの手を、悟空がヒョイッと外させた。

「あっぶねぇ」
「何しやがる!俺だって貴様など簡単に」
「オラはいんだよ、今はな」
「は?」

 悟空はグッと顔を寄せ、一瞬たじろいだベジータに低く囁いた。

「オラのは全部、おめぇん中に出す」
「っっ!」

 ゾクッと甘い痺れがベジータの腰に響いた。それを感付かれたくなくて、ベジータは乱暴に掴まれた手を払う。
 そうだった。これから自分はこの男に“抱かれる”のだ。そう気付けばベジータは、分かってはいたが、身体が強張るのを止められない。

「好きに、しろ」
「・・・」
「カカロット?」
「そういえばおめぇ、中にとか言っても、あんま驚かねぇな」
「は?」

 情事の空気にしたいのかしたくないのか、妙な問いを振ってくる悟空にベジータは思わず間の抜けた声を零す。

「ベジータ、男同士でどうやんのか知ってんのか」
「どうって」
「子作り。あ、セックス」
「なっ・・・ば、馬鹿にするな。それくらい、し、知っている」
「えぇ!オラ知らなかったぞ!」
「貴様はバカだからな。俺様はエリートだぞ」

 下級戦士を通り越してバカ呼ばわりされた事は一向に気にしない悟空だが、ベジータが男同士のセックスの仕方を知っていた事にはどうにも納得がいかないようだった。
 確かにベジータは悟空より知識欲があり、読書なんて行為をしている姿を目にした事も何度かある。だが、それでも自分と同じくらい、いやむしろ自分よりも、強くなることにしか興味のないような男が、何故に。
 グルグルと考え始めた悟空の脳細胞(と言っても皺の少ない彼の脳では思考時間は酷く短いのだが)は、とある可能性にいきつく。

「まさか、ベジータ」
「な、なんだ」

 尋常ではないほどに悟空の気が高ぶっていくのを感じて、ベジータは困惑に眉を寄せた。
 悟空の黒髪が少しずつ色を変え始めている。

「ベジータ・・・」
「カ、カカロット?」
「まさか、オラじゃねぇ男とシたことがあ」
「あるわけないだろうバカタレぇ!!」

 思わずマジギレするサイヤンプリンス。悟空は、見え隠れしていた金髪と緑の瞳がフシュンと一気に元に戻ってしまった。そして心無しかしなだれる蟹頭。

「ふざけやがって!エリートの俺様が!サイヤの王子たる俺様が!好き好んで男なんぞとヤるわけがないだろ!男を抱くなんて考えただけで胸糞悪いわ!俺様が抱かれるなんてのも言語道断だ!」
「え、でも、おめぇ、オラには好きにしろって」
「だから!誰が貴様以外に抱かれるものかと言ってるんだ!」
「・・・」

 一気に捲し立てたベジータは先ほどとは違う意味でゼェゼェと息を切らせている。悟空はと言えば、唖然とそんなベジータを見詰めるばかり。

「おい!聞いてるのかカカロット!」
「・・・オラなら、いんだ」
「え」
「おめぇ抱いて良いのは、これまでも、これからも、オラだけなんだな」
「っっ!」

 途端、ボンッとベジータの頭が爆発した。これまでに無いほど真っ赤になって口をあぐあぐさせている。好きと言えずに悩んだ男が、それよりも大胆な発言を高らかにしてしまったのだからそれも仕方ない。

「ベジータ」
「っ・・・」
「オラもだ」

 何がなのかはハッキリ言わずとも、何となくは分かったか、ベジータは赤いままに顔を背けた。
 悟空はそんなベジータの頬に手を当てて、己の方に向けさせる。そして唇を重ねた。

「ん・・・」

 酷く甘いキス。小さく水音を立てて下唇を食まれると、ベジータの腰に再びズクンと疼きが蘇る。

「ん、ぅ・・・」

 やがて口内に侵入してきた舌に柔らかい内壁を優しく嬲られながら、悟空の掌が腹を撫でるのを感じた。ヌルリと滑る感触は恐らく先ほどベジータが吐き出したもの。卑猥な音を響かせながらそれを指に多分に絡ませた悟空は、唇を離さないままで、その手をベジータの尻の狭間へと滑らせる。

「んっっ!」

 ビクッとベジータの腰が大きく揺れたのは、悟空の指が後孔に振れたからだ。小さな窪みに滑りを擦り付けるように撫で、やがて中指の先端がツプッと中へと入り込む。

「んっ・・!」

 固く閉じられた蕾を解すように、クニクニと指先を動かし、少しずつ奥へと進む。
 ようやく唇を離せば、ベジータはハァッと盛大に熱い吐息を零し、それから悟空の肩をギュッと掴んだ。強張る身体は小さく震え、瞼を強く閉じている。立ち上がりかけていたベジータの性器は、萎えてしまっていた。

「ベジータ、力抜けって」
「出来、るかっ、クソッタレ!」
「オラの指折れちまう」
「折れ、ちまえっ!」

 震えているのにどうにも口の減らない王子様に、悟空は何故か逆にソソられてしまい、強引に割り開いてしまいたい衝動に駆られるが、それは何とか(奇跡的に)抑え、丁寧に内壁を指の腹で撫でていく。

「ふっ・・んぅ・・!」

 悟空は、悟飯の言っていた事を思い出す。とにかく慎重に中を撫でていけ、と。何処かに小さなしこりがあって、それがスイッチなのだと。ようやく収まっている指一本も、第二関節止まりだが、届く範囲で丁寧に触れていきつつ指先に意識を集中していれば、不意にベジータが声も無くビクンと大きく腰を浮かした。

「っ・・!」
「ベジータ?」
「なっ・・やっ、だ・・」
「いてぇのか?」

 悟空は思わず指を引き抜きかけるが、節くれ立った関節が入り口に引っ掛かり、またベジータの腰が震える。悟空は分からずまた指を少し進めれば、ベジータの膝がギュッと悟空を挟んだ。

「やっ、め・・そこ、触るっ、な・・!」
「そこ?」

 つい無意識に指先が触れている肉壁をクイッと押し上げる。

「あぁぁっ・・!」

 先ほどイッた瞬間のような、甘い嬌声。見れば、萎えていたはずのベジータの性器は再び頭を擡げていて、先端からはダラダラと透明な雫が垂れ流れていた。

「気持ち良いんか?ここ」
「バッ・・違っ・・!あぁ!」

 指の当たっている部分を少し強く押し揉めば、ベジータは腰をくねらせて、逃げようとする動きを見せた。強めに押し上げたせいか、先ほどは気付かなかった小さな膨らみを指先に感じた悟空。

「これ?」
「ひっ・・!や、めっ・・!あぁ!」

 止められないのか、ベジータの口からは引っ切り無しに嬌声が零れる。悟空の肩を掴む手は強さを増し、道着が破れそうな程だ。常人ならば肩の骨が粉々になっていることだろう。
 一度中で快感らしき感覚を得てしまったベジータは、最早、抜き差しでさえ言葉に出来ぬくすぐったさを感じるか、訳も分からず身を捩るしかない。
 一気に柔らかくなった後孔に、悟空は二本目の指を入れてみる。

「ふっ、ぁ・・あっ、ぁ・・やぁ!」

 再び狭くなった中を、悟空はだが、少し乱暴に掻き回した。一瞬だけ苦痛に歪むベジータの顔に、悟空は喉を鳴らす。抜き差しから、小刻みに上下する動きに変えれば、グチュグチュと卑猥な水音が響いた。

「う、わ・・ベジータ、すげぇ、中」
「言う、なっ!」

 耳からも犯されているような感覚に、ベジータは堪らず悟空に更に縋り付いた。

「も、オラ我慢できねぇ」
「カ、カロット・・?」

 潤む瞳が悟空を見上げる。いつもの鋭い眼光がこれほどに蕩けてしまえば、違う意味で視線が凶器だ。
 悟空はズルッと一気に指を引き抜く。それに連動してベジータの腰が震えた。その仕草にまた悟空はたまらず喉を鳴らす。ベジータの手を離させるようにして上半身を起こせば、悟空は道着の上を全て頭から引き抜き、辺りに放り投げた。
 ようやく目にした悟空の裸に、ベジータも見慣れているはずなのに、胸が騒いでしまう。逸る手で悟空は腰の紐を解き、下履きを下着ごとずりさげれば、硬くそそり立った雄が現れ、ベジータは思わず視線を逸らした。


更に引っ張るよ!途中エロから甘味に寄り道したせいで長いね!(笑顔)

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