拍手?関係ねぇな。2
某日・南郷宅
とある土曜の昼下がり。あまりに天気が良かったか、後に伝説と呼ばれる男アカギ(13歳)を飼い慣らす(慣らせてないが)男、ピュアハート南郷は、窓辺にてウトウトとしていた。
そこにフラリと現れたのは、まさしくアカギ本人ではあるのだが、ヒョロリと背が長く、シャツは青い。
「南郷さん、南郷さん」
身体を揺すられて、南郷はむずかりながらも口を開く。
「んん・・アカギ、か?」
「起きなよ」
「もう少し、だけ・・・」
「拍手、また貰ったらしいよ」
「何ぃ!」
南郷、唐突にカッと目を見開き、勢い良く起き上がった。
「なな、なんてありがたい!お礼しないとなアカギ!」
「関係ねぇけどな。まぁ南郷さんが言うなら・・・」
見れば南郷はアカギを前に目を丸くしている。
「南郷さん?」
「おまっ・・アカギ、なのか?」
「当たり前じゃない」
そう、目の前に居たのはいつもの年齢にそぐわないオーラと達観した魚のような目をしたあの愛しいアカギという少年ではなく、随分と背も高く鼻筋も通った、だがやはり同じく達観した魚のような目を持つ青年。
まさかのアカギ(19歳)である。
恐ろしいことに本編より先に登場だ。
「ちょっ・・待っ・・おまっ・・」
「どうしたんだよ」
目が丸くなっていた南郷、金魚のようにパクパクさせていた口を、だがようやく意思通りに動かす。
「ち、違うし!誰!?アカギどこ!」
「いや違うし言われても。てかなんでカタコト?」
「うわ喋り方もアカギだ!死んだ魚のような目も!尖った鼻も!」
「死んだがまず余計だよね。あと鼻はアンタもある程度尖ってるよね。あとキャラ崩壊してるけど良いの南郷さん」
「なんだ、なんでいきなり成長してんだお前!」
「俺のツッコミを完全に無視だなんて、狂気の沙汰だね」
出だしから大分コントな拍手お礼だが、とりあえず南郷は、目の前の人物がアカギだという事は認識したようだ。
「何、魔法?魔法の砂?地獄の淵で触っちゃった?」
「うん、まぁとりあえず落ち着け南郷」
少し苛立つ(後の)伝説の男。
「だ、だがな、俺には何がなんだか」
「だから、お礼だよ」
「そうだ!拍手!ありがたい拍手が!」
いややっぱ嬉しいよなぁ、と南郷はいつもの軟らかい笑み。アカギも思わず心が丸くなる。
「だからさ、そのお礼のために俺がね」
「ん?」
「ほら、いつまで経っても俺(19)と南郷さんの再会長編が始まらないじゃない?」
「は?」
「だから管理人がね、苦肉の策だかで無謀にもここで俺を出してしまおうという」
「へ?」
「目に余るあまりに身勝手な管理人による起用ってことだね」
「え?」
南郷、いまいち付いていけていない。首を右へ左へと傾げるばかり。だがその仕草にハートを貫かれる(変態度合いが年齢に比例して増した)アカギ。
「か、かわい・・・」
「あ、アカギ?」
アカギはふぅと一息、狂気の世界に行きかけた自分を引き戻す。
「まぁとにかく、お礼するからさ」
「おぉ、そうだな!」
「13の俺には成し得ない、濃厚な愛欲の時をこれから繰り広げます」
「・・・えっと」
狂気の世界から戻る事は既に不可能だったらしいアカギ。
「じゃ、脱ごうか南郷さん」
「待って何そのアカギでは絶対有り得ない満面の笑み」
「実力行使するしかねぇか」
「ちょっ・・待っ・・!」
前回とは打って変わって積極的なアカギにタジタジな南郷。
「で、でもこういうのは、人様の目に晒すものじゃ」
「大丈夫。そんなの気にする事が出来ないくらい凄い状態にするから、アンタを」
「尚更だろ!」
「いいから」
アカギ、徐にシャツを脱いだ。Tシャツも脱いでしまえば二枚を適当に放り投げる。
13よりも明らかに男の身体。細過ぎる感は否めないが、それがまた13と同一人物なのだと尚更に思わせて、南郷は一気に心臓が早鐘を打ち始めるのに気付く。
長く伸びた手足や胸板にはしっかりと筋肉があり、ならばアレも立派に大人の男になってるだろうと容易に想像出来てしまえば、南郷は思わずアカギを止めてしまう。
「ま、待てアカギ!」
「何」
南郷の「待て」だからこそ素直に聞くアカギ。
「いや、その、む、無理だろ、さすがに」
「何が」
「か、確実に、裂けるだろ、俺」
「・・・」
「な?」
「自分を捨てちゃいなよ」
「捨てるの意味違う!」
「関係ねぇな」
「アカギぃぃぃ!」
南郷のズボンをずり下げようとする狼の手をしっかりと押さえる羊。
「か、管理人っっ!」
▼あ、はい。
「はいじゃない!何これ!」
▼え、拍手お礼ですが。
「いや何かもっと他にあるだろ!」
▼いややはりありがたぁい拍手にお応えしたいという熱い想い故にこれが一番適切かと。
「うわもっともらしい言い回し!」
▼まぁいずれは本編でもこうなりますし。
「話の先を本人に伝えるのやめて!」
▼我儘だなぁ。
「カチンと来た!てかそれなら尚更今はいいだろ!せめて13とにして!」
▼良い怯えっぷりですね。さすが南郷さん。サービス精神旺盛だなぁ。
「あぁ会話にならねぇ!てかマジ俺裂けるから!なんでわざわざ19寄越す!」
▼ですからね、アカギさんが説明してくれた通りでして。
「早く書けよ再会編!」
▼やだなぁ、誠心誠意執筆中ですよぅ。だから、ね?今は、ね?
「ね?じゃねぇぇ!」
「誰と話してんの南郷さん」
「・・・魔法の砂をお前に与えてしまったバカと」
「は?」
「と、とにかくアカギ、今は落ち着いてだな、あ、そうだ、飯、飯は!」
「・・・そんなに嫌かい?」
「え?」
アカギの手から力が抜ける。南郷は思わず眉を上げた。
「アンタが嫌なら、しないよ」
「アカギ・・・」
南郷の服から離れたその手は、ゆっくりと寝癖の残る髪に向かい、優しく撫でた。南郷の胸がギュッと締め付けられる。
「でもせめて、触れさせてくれ、南郷さん」
髪を撫でていた手は、今度は南郷の手を取り、静かに口元に引き寄せた。その手の甲に唇を当てると、微かな音を響かせて啄む。
南郷は眉尻を下げ、不自然な体勢だった身体を起こす。
「アカギ、その、嫌なわけじゃ、ない、ぞ」
「でもアンタ、怖いんだろ」
「そんなの、今更じゃないか」
「え?」
南郷は、握られていた手でアカギの手を握り返し、グイッと引き寄せた。青年の少し細い身体は、南郷の胸にトスッと落ちる。
「前だって、ビビッてた俺を、優しく抱いてくれたろ」
「南郷さん」
「根気良くさ」
「アンタ、なかなか足広げてくれなかったよな」
「あ、当たり前だろ」
「だよね」
俺もアンタも男なんだしな、と小さく呟いたアカギは、南郷の肩に額を乗せた。
その白い髪を、南郷は酷く優しく撫でる。
「でも俺はお前に抱かれた」
「あぁ」
「俺は、お前のもんだ」
「あぁ」
「格好良くなり過ぎてて驚いただけさ。また、優しくしてくれるんだろ?」
「・・・」
「アカギ」
「・・・好きだ」
俺もだよ、と返そうとした南郷の言葉は、だが音になることは無かった。
唇が、重なってしまったから。
「あ、ちょっと待って南郷さん」
「え」
「お礼はここまでね」
「アカギ?」
「こっから先は俺だけのもの」
暗転。
▼えぇ!またですかちょっと!アカギさん!
「何ずれたこと言ってんだ」
▼ひいっ!拳銃ねだられる!
END
いや、ねだらねぇよ・・・
あ、えと、は、拍手ありがとうございました!
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