拍手?関係ねぇな。5



某日・(もうそろそろ飽きてきたかもしれないけれど)南郷宅


 (そして毎度の如く)とある土曜の昼下がり。
 本編ではまだ引っ越してないので未だ例のボロアパートにて。
 さてここに、せっかくの休日にも関わらず何故か正座で向き合ったまま押し黙っている大の男二人。もちろん言うまでも無く、あの二人。19アカギと南郷だ(あ、言った)。
 この状態になってからもうどれだけ時間が過ぎただろう。
 正座のままで背中を丸めてその巨体を縮こまらせたまま俯いて冷や汗をジットリと浮かべている南郷。それを同じく正座でジーっとただ見詰めている悪漢アカギ。

「南郷さん」

 ビクッと大きな背中が揺れる。
 アカギは溜息を一つ、ようやく足を崩した。実は痺れているがそれは絶対に見せない圧倒的アイドル、アカギ。そうアイドルはトイレに行かないし足も痺れない。いやトイレとか散々行ってるだろ話の中で、とかは言わないお約束。
 まぁ冗談は置いておいて(無駄な数行!)、返事の無い南郷に、アカギは再び溜息をついた。

「そろそろさ、観念した方が良いんじゃない?」
「・・・」
「仕方ないでしょ」
「・・・」
「流れってのがあるのさ、世の中には」
「・・・」
「すぐ終わるって、こんなの」
「・・・」

 珍しく、アカギの方がよく喋っている。
 さてこのピカロ、先ほどから何を熱心に説得しているのかと言うと、えー、前回拍手お礼からの流れを汲んで頂けてる方にはお分かりかもしれないが・・・

「あ、アカギぃ・・・」
「無駄だぜ、南郷さん」
「だ、だがこれは、さすがに」
「自分を捨てちゃいないよ、もう一晩だけ」
「お前それ万事に有効だと思うなよ!」

 そう、二人に挟まれる状態で畳の上に置かれているのは・・・

『猫耳』

 三択三回で九択もあったのに関わらずのこのチョイス!
 それもこれもアカギが前回の終わりに「猫耳は次回」とか言っちゃったせいである。

「お、お前が、あ、あんな事、言わなければ」
「はいはい」

 さめざめとすすり泣く南郷に、もう何度目か分からない遣り取りに飽きてきさえしているアカギが軽く返す。どうやらアカギはスルースキルを身に付けたようだ。

「だってお前、これ、いいオッサンがこれ、おかしいだろ」
「おかしくないってアンタなら」
「それはそれで嫌だが、やっぱ絶対におかしいって」
「んじゃ俺も一緒に付けるから」
「何の解決にもなっていない!」

 むしろ悪化の一方だ。

「ったく、我侭だな。じゃぁ他のにする?」
「他って、まさか」
「メイド、セーラー、体操服」
「却下!」
「執事」
「そ、それなら何とか」
「もれなく坊ちゃんな俺との性奴隷プレイが付いてくるけど」
「より一層危険!」
「あとスーツ」
「え!それで良いなら是非!」
「もれなく俺とのイケない学園生活プレイが付いてくるけど」
「あーはいはい、先生と生徒ってやつなぁ。あったあった・・・とか言うと思ったか!」

 思わず見えもしない妄想の吹き出しを「ていっ」と投げる南郷。

「じゃぁどうすんのさ、拍手お礼」
「うっ」
「管理人の放置プレイからようやくの再開&長編完結で、諦めずに拍手くれてた人たちにお礼するんでしょ?」
「うぅ、有り難い。本当に有り難いよなぁ。読者は神様って本当なんだなアレ」
「いや泣いてる場合じゃないから。猫耳くらいサクッと付けなよ」
「くっ、何故こんな事に!」
「まぁ俺としては気に喰わないけど、アンタが愛されてる証拠だろうね」
「・・・」
「だがやはりまぁ俺としてはこれはこれでやぶさかではない」
「絶対楽しんでるよね今!」
「マサカ。ソンナ。アリエナイ」
「ぼ・う・よ・み!」
「実力行使しかねぇか」
「え」

 言うや否や、アカギが動き出した。
 猫耳を手に取ると南郷に襲い掛かるが如く頭へとそれを近付ける。が、通らず。抵抗の動きを見せた南郷。ガタイは良いのだから本気で抵抗されればいくらアカギと言えどそう簡単には付けられない。
 狭い安普請でギャーギャーと暴れれば、ミシミシ音をたてながら揺れるアパート。崩れるまであと数分か。そんなバカ殿の終わり方みたいな事にしてはならない。アカギは再び策を練る。

「分かった。猫耳は置いておこう」
「え」

 溜息を付きながら座り直したアカギに、南郷はパァッと花を背負わんばかりの半泣き笑顔。昨今の少女漫画も真っ青の乙女ぶりだ。

「猫耳はいいから」
「あ、あぁ」
「百歩譲って尻尾で」
「それ接続部分がバ○ヴだろー!」
「サラッと言うねぇ南郷さん」
「てかこの時代にあんのバイ○って!」
「あるある」
「軽っ!」
「ていうか時代考証とか、はっ、相変わらずズれた事言ってやがる」
「大事!それ大事!」
「渡って見せてくれよ、この綱」
「渡れるかー!」

 半泣きながらも細かにツッコみを入れてくる南郷は既にアカギより先に神域に達してさえいるのかもしれない。
 が、南郷は唐突に俯いて、再びモジモジと言葉を濁し始める。

「だ、大体、だな・・・」
「南郷さん?」
「お、お前以外の、・・を、その、い、入れる、なんて・・・お、俺は嫌だ」
「・・・」
「お前のだから、俺は、いつも・・・」

 くっ!やるなマンゴー!あのアカギを一瞬で黙らせおった!
 最早ナレーションまでキャラの崩壊が見られる。末恐ろしい破壊力であるデレ南郷。

「・・・そうだね」
「え?」
「分かったよ。悪かった南郷さん」
「あ、アカギィ」
「初心に返ろう」
「え?」
「じゃぁ俺のをアンタにぶち込・・・」
「違ぁぁう!いや違わないけど!でも違ぁぁう!」

 元気なオッサンを前にベルトを外しかけていたアカギは動きを止め、文句を言いながらまた座り直す。

「何だよ、俺のなら良いんでしょ?」
「そういうことじゃなくて!」
「え?まさかの二輪刺し?」
「アホかぁぁ!」
「鼻水まで出てるから南郷さん。落ち着いて」
「お前がな!」

 言いながらもしっかりとチリ紙に手を伸ばして涙と鼻水を拭う繊細な男、南郷。
 いや彼は決して繊細ではないのだが、読者様に晒せる状態では無い事は自覚があったようだ。
 不意にアカギが、パシンと自分の膝を叩き「よし」と、珍しくオッサン臭い仕草。

「分かった、今度こそ分かった」
「嘘付け絶対に分かってないだろ。てかなんで今回そんなにお礼ヤル気満々なんだよ。いつも死んだ魚のような目をしているお前が」
「今のは聞かなかった事にするから南郷さん」
「何気に気にしてるよなお前」
「あれだろ?今の理性ある状態というか、普段のままでこういった倒錯プレイに興じるのが抵抗あるわけだろ?」
「スルースキルまた上がった!」
「まぁ猫耳なんぞ、倒錯プレイなんて言うのもおこがましい低レベルなお遊びどね」
「お前の思う通常レベルの倒錯プレイが本当に恐ろしい」
「今からパロディに移行しよう」
「本当にもう色々と設定無視な単語きた!」
「最初から設定変えて始まれば、別にこんなまだるっこしく南郷さんの照れ屋度合いをアピールする無駄な部分はいらないわけで」
「お前今日よく喋るな」
「そろそろ拍手ネタも切れてるみたいだし、パロディでシリーズ化しようか」
「そして相変わらず管理人にトゲ刺していくな」


▼ちょ、待っ、アカギさん!?
「何」
▼何勝手に企画してくれちゃってんですか!
「誰のせいだと?」
▼えぇ!自分ッスか!
「そういうことだね」
▼えと・・・気分じゃないんで。(料亭にて月を見上げながら)
「死ねば助かるのに」
▼すいませんしたぁ!勝手に名言使ってすいませんしたぁ!
「つぅか書きたかったんでしょ?パロディ系」
▼うふふ、ふふ、えぇ、まぁ、うふふふふふふ。
「死ぬことが貴様の至福だ」
▼すいませんしたぁ!戦後という時代が作った化け物の扱いしないでください!
「じゃぁいいよね」
▼うっす!光栄ッス!
「死ねば助かるのに」
▼二度も!?
「大事な事だから」
▼まさかの!


「おい、アカギ?」
「ん?」
「誰と話してんだ」
「そんな事より南郷さん、準備だ」
「え?」
「ほら」
「待っ、おい、脱がすな!」
「急い・・・やっぱパロディ行く前に一回ヤっとこうか」
「へ」
「そりゃ脱がせばムラッとくるよね」
「勝手過ぎる!」

 それがアカギクオリティ。

「いいから」
「ちょ、おい、待っ・・わ、分かった!どうせ死ぬなら強く打って死ねぇぇぇ!」


 暗転。


▼というわけで・・・
「次からパロディシリーズ始まるよー」
▼カンペ棒読みやめてくださいアカギさん。
「読んでやるだけ有り難いと思え凡夫」
▼あぁ蔑まれるのたまらない!
「・・・」
▼アカギさんを黙らせるとは、自分も腕が上がりましたね。
「・・・」
▼ごめんなさい。何か喋ってください。
「猫耳からね」
▼畏まりました。有無を言わさぬ物言いにまた萌えました。
「・・・」
▼ごめんなさい。何か喋ってくだ・・・
「パロディだから。そこんとこよろしく」
▼そうですね。通常設定を飛び越えないと南郷さん付けませんからね。
「それもあるけど、いつものあの人は俺だけのもんだから」
▼(砂吐)・・・さすがッス。

END


お礼になってるのかこれは・・・
じゃ、じゃぁ次からはパロディシリーズ始まるよ☆
あ、えと、は、拍手ありがとうございました!

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